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「考える脳」と「感じる脳」ー 自己認知から成長思考へ

今回は、スタンフォード大学のキャロル・ドウェック教授(心理学)の動画を参考に、成長思考に関して学びたいと思います。

成長思考はとても難しい概念です。その難しさを克服するカギは、単なる「成長」と「成長思考」の違いを認識することです。特に、お金や権力、快楽、名声といった外的な欲求を満たすための成長は、成長思考とは異なります。例えば、子供をほめ育てるときのほめ方を間違えると、テストの結果や学校の成績といった短期的な結果しか得られないことがあります。特に、外的な欲求は依存症と密接な関係にあることが多く、成長はかえって精神的な不安定さや極度のストレスを引き起こす原因にもなりえるのです。子供の反抗期はその兆候かもしれません。

成長思考とは、外的な欲求に惑わされることなく、自ら行動を選択し、自らの成長を楽しむ能力のことです。それは、経験や知識不足によって想定外の事態を「感じる脳」が認識した時に、意地を張ったり、現状維持を選択したりするのではなく、自らの成長へ舵取りをする能力です。

動画を見る際には、日本語の字幕を参考にしてください。


自己認知とは、想定外の時に感じるモヤモヤ感

前回は「感じる脳」の予測能力についてお話ししました。人間の脳の予測能力は非常に高く、良い経験を積めば積むほど「感じる脳」は成長し、その能力は強化されます。逆に、経験や知識が不足していると、予測は失敗します。

想定外な出来事に遭遇し予測に失敗すると、大変なことになります。代謝バランスの調和が乱れると、命にかかわる事態になることもあります。この時、強い緊張やパニックを感じる人もいるでしょう。幼児のいやいや期、思春期の反抗期、大人であれば怒鳴ったり、号泣したりといった反応は、想定外な出来事に対する過剰反応かもしれません。

一方で、予測が外れるということは、新しいことを学ぶ機会でもあります。特に日本のように秩序が保たれ平和な国に住んでいれば、命に関わるような事態は滅多に起こりません。逆に、そうした機会をどれだけ成長の糧にできるかが、人生の幸福感に大きく影響します。

予測の失敗は、ある種、特別に心地よくないモヤモヤ感として感じられると思います。例えば、言い訳をしたくなる瞬間、怒りたくなる瞬間、恥ずかしさを感じる瞬間、反論したくなる瞬間、そういった反応をしたくなる瞬間に感じる不快な感覚は、「感じる脳」の予測失敗のシグナルなのです。

自己認知とは、経験や知識が不足していることを教えてくれる「感じる脳」からのシグナルを敏感に感じられる能力のことです。それはつまり、自分の限界を認識できる能力であり、成長が必要なタイミングを知ることができる能力です。このシグナルは、感情が芽生える前に発生し、自分の経験や知識不足と、自分の感情を切り分けることができるタイミングなのです。

結果ではなく、過程を楽しむ

結果を褒めることの弊害は、結果を得るためのやる気が外的報酬と結びついてしまうことです。お金や権力、快楽、名声といった外的報酬は、非常に強力な喜びとして脳に記憶され、短期的には効果的です。物事が常に上手く運んでいるときはうまく機能しますが、人生には失敗や挫折がつきものです。このようなとき、大きな落胆とともにやる気を失ったり、より強力な外的報酬を渇望したりするなど、依存症と似た症状が現れる危険性があります。さらには、自分を守るために状況をごまかしたり、嘘をついたりといった行動につながる危険性もあります。

過程を褒めるとは、結果を得るために続けられる努力や集中力、進歩、忍耐力、向上心といった、本人の行動力を褒めることです。行動を褒めることで、行動そのものに喜びを感じ、さらなる成長が期待できます。その結果、やる気に頼る行動ではなく、自分自身の規律を高めることで行動を起こすことができるようになるのです。たとえ結果が悪くても気にすることはありません。行動の積み重ねによって成長しているのであって、「勝利」や「合格」といったレッテルそのものは、成長とは直接関係ありません。

成長思考とは、自ら成長に舵取りをする能力

これは私の娘が6ヶ月の時の写真です。立ち上がって歩こうと頑張っています。

立ち上がって歩こうとする娘

この状況を見て、「早く立ち上がりなさい。」と叱責したり、「歩けないダメな人間だな。」と非難する人はいないと思います。まだ立てないし歩けないので確かに失敗ではありますが、そのような結果にこだわることは、成長という視点では意味がないばかりか、有害なのです。本人も「自分はダメな人間だ」とは思っていないはずです。むしろ、写真を撮られながら励まされ、努力している自分を誇りに思い、楽しんでいるのではないでしょうか。

人生とは、いかなる瞬間も成長の途中なのです。大人になると、「十分に成長した」と感じる人もいるかもしれませんが、そのような感覚は、様々な情報が氾濫することによる弊害の一つなのです。結果に惑わされることなく、自ら行動を選択し、自らの成長を楽しむことが成長思考なのです。


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