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パチンコ台とヒットの確率

それは幼稚園〜小学校3年くらいまで続いた。

「パチンコ屋に行くぞ〜」

父は月に2度、日曜日に私を連れてパチンコ屋に向かった。

祖母のうちを周り、車を洗車して、
その帰りにいつも馴染みのパチンコ屋に向かう。

昔のパチンコ屋は、未成年でも店内に入れたのだ。

騒音がひどく、たばこの臭いが蔓延している空間。
それでも私にとっては面白い空間だった。

父は目星を付けた台へと座る。
私はその横で買ってもらった漫画を読みながら
1時間ほどパチンコに付き合うのだ。

そんなある日、私は父に問いかけたのだ。

「どうやって台を選ぶの?」と。

すると父は、パチンコ代の上の数字を指差した。

「この数字が多ければ多いほど当たる確率が高いんだ
この台はまだ当たっていないから、きっと今日は大当たりが出るな!」

と意気込んで座った。

のちにそれはデータカウンターと呼ばれるものだと知る。

今のデータカウンターは
・当日の大当たり回数
・当日の大当たり間グラフ(回転数)
・当日の総回転数と大当たり確率
・履歴機能
・前日の大当たり回数
・前日の総回転数
を表しているらしい。

ただ、当時は当日の総回転数と、前日の大当たり回数
くらいしか表示がなかったような気もする。

つまり、かなり回転はしているが、当たりが出ていないなら
その台は、当たりまであと少しなのではないかということだ。








私は、漫画を描くときに、いつもその言葉を思い出していた。

「次はきっと当たるはずだ・・・」

そのためには、とにかく数を描いて回転数を上げなければいけない
描けば描くほど、作品数が多ければ多いほど、まだヒットが出ていなければ
パチンコであれば当たる確率は高くなるはずだ。

最初のヒット作が出るまで、諦めそうになっては
パチンコ台のデータカウンターのことを思い出した。

父はパチンコに弱かった。
当たったのを見たことがなかった。

しかし、父が帰ろうとしてその席を退いた途端に、
別の人が座り当たったことがあった。

なんだ、これは・・・
こんなことがあり得るのか・・・
と子供ながらに世の理不尽というものを味わったものだ。

だからこそ、自分の人生では
当たるまで、その席を退いたりはしないと思ったのだ。

当たりにもさまざまな種類がある。
大当たり、中当たり、小当たり。。。

もはやなんでもいいから当たってくれ。
とにかく勝ち癖をつけなければ、次に進めない。

とにかく描いて、席に座り続けた。

そして今がある。

もちろん大当たりには届いていない。
もしかしたら中当たりにも届いていないかもしれない。

人生にはデータカウンターがない。
大当たりまで後どのくらいなのか・・・

とりあえずまだ席に座り、ハンドルを回し続けようと思う。


毎月父親には、パチンコ代としてのお小遣いを渡しに行く。

父からは、いまだに「当たった!」という報告は聞かない・・・。

では、また!

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