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RYUHEI THE MAN Interview vol.2

Soul Matters 1周年イベントの際に行われたRYUHEI THE MANさんのインタビュー。今回はその第二弾を転載します(前編はこちら)。普段の会話に近い形でインタビューさせて頂いたため、前回に比べてリラックスした雰囲気でしたが、内容はより踏み込んだものとなっています。RYUHEIさんの好きなボーカル観、フェイバリット曲「I Searched Around」の秘話、ジャンルのまたぎ方、DJとアスリートの話まで、こちらもまた必読の内容です。ぜひご覧下さい!

※2020年9月13日追記:Ryuhei The Manさんの5年ぶりとなるオフィシャルMIX CD『NEXT MESSAGE FROM JAPAN』が9月9日発売となりました。RyuheiさんのDJ観を窺い知れるこのインタビューが、ミックスを聴くための一助になったら幸いです。

(インタビュー・編集:島 晃一、編集・校正:中村悠太、写真:大和田優)

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―前回のインタビューでプレイにおいて「トライする」ことを心がけていると、RYUHEIさんは言ってましたが。ミックスとカットインを駆使してトライするっていう。

RYUHEI THE MAN(以下、R):それは大事ですね。場所と状況によりますが、トライする=攻めるっていうのは忘れないようにしたいです。たぶんこれは、昔、スポーツをやっていて常に攻めきれなかったという想いが強いことからきていて。いいイメージはできているのだけれど、試合になったらイメージ通りにいかず全然攻めきれなかったこととか。トラウマじゃないけど、なんかその想いが人生においてひっかかっていて。

本当に生意気なのですが、DJに関しては、僕なんかは本当に稀ですが、頑張れば自分のイメージしたようなプレイができたり攻め切れたりできるというか。もちろん完全ではないのですが。僕はそういう意味でDJはアスリートだと思っていて。だから楽しいというかトライしたくなります。

スポーツをやっていてもそうなんですが、イメージをすごく大事にしていて。イメージが実現できる人がプロだと思うので。

―僕はイメージがあってもまだ全然出来ないですね。

R:でも、正直やっぱり落ち込む事の方が圧倒的に多くて。イベントが終わってから、その悔しさを忘れないうちに、家でDJする(悪かった部分を修正する)のはしょっちゅうです。恥ずかしい話だけど、ミスしたところ、イメージ通りにいかなかったところを家に帰って叩き込むというか。

―失敗して練習したつなぎを、次の現場でかけることは?

R:もちろんあります。やっぱり自分の気に入ってるつなぎというのが絶対あって。でも、そこは……非常に難しいですよね。出来る事なら毎回違うセットでまったく別の曲をかけて、しかも素晴らしい曲だけでお客様を熱狂させるDJができればそれが最高だとは思うのですが。

気持ちとしてはそれくらい皆さんに新鮮なもの、新鮮なミックスを聞いてもらいたい、新鮮なプレーを送りたいというのもあるんだけども、それは自分には不可能だとも思う。逆に「それを待ってた!」という「自分クラシックなつなぎ」を作るには、何回かそのセットを続ける事によって「キタキタ!クルクル!」的な喜びを感じてもらう、というのはありますね。

でも、自分の好きなつなぎだったりっていうのは、なかなか簡単には見つけ出せないよね。それはもう、日々の頭の中でイメージしたりそのイメージを家で再現したり。それでも違うな、無理だなって時もあるし。逆に、現場で次どうしようか迷ったときに「えーいいっちゃえ」ってやってみたのが偶然にもいい時もある。

―ありますね(笑)

R:「これ、キタ!」みたいなことがね(笑)DJはそういうのも面白いですよね。とっさの瞬発力が試されるというか。我々のジャンルでは、長くて3~4分の間で次の曲を見つけかけるわけじゃないですか。結構迫られた時間の中で、やっぱり曲をつなげなかったらアウトで。そういうプレイ・スタイルだったりよほどのことが無いかぎり、無音を作ってしまったらダメな仕事なので。その中で何かミラクルが起きるのが楽しみですね。

幸いにも世の中にはたくさん素晴らしい曲があるので、そういう曲を我々はかけさせていただいているのですが、その曲の味を損なわずにミラクルを起こす事が出来たらなと。なかなか起きないけど。

でも、なんとも言えない高揚はあります。DJしてる時が一番体調いいですね。有意義な無の時間というか。無重力みたいな感じなのかわからないけど。普通に生活していては味わえない時間なんだよね、あの時間って。あれは僕の感じだと、スポーツで試合に出てる感じに近い。何とも言えない感覚、非現実的な変な感じ(笑)。

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―僕は映画が好きだということもあって、映画と結びつけてDJを捉えているんです。「カットイン」とか映画と共通の用語もありますし。RYUHEIさんはスポーツなんですね。野球をやっていたんですか?

R:はい、野球とアルペンスキーをしていました。野球は比較的イメージ通りいけたんだけど、でもスキーはまったくだめでした。イメージ通りに滑りたいっていう想いから続けてたんだけど、なかなか出来なくて。それがいつのまにか、DJにも気持ちとしてはつながってるところはありますね。

―お話を聞いていて、スキーって言われた時にすごく腑に落ちるものがあります。DJのときもトライするとか。しかし、アルペンスキーって、スピードも速いし、それで大怪我する選手とかもいますし過酷ですよね。

R:そうなんだよね。何もしなくても滑って行っちゃう、落下して行っちゃう恐怖というのが。で、自分の気持ちがビビってしまえば速度を抑えちゃうし、そこをビビらなければやっぱりタイムは出る訳だし、その恐怖心との戦いというのもなんとも言えないものが。プレイヤーとしてはやらなくても、スキーは今でもすごい好きで。ワールドカップは毎回楽しみにしてます。レコードと同じくらいネットをチェックしてて。スポーツで一番好きなのはアルペンスキーです。

―DJとすごく似てるところがありますよね。一度滑り始めたら…って所も。

R:前に一度『GROOVE』誌のインタビューでも言ったんですけど、よくスキーの時言われてたのが、「次の次の旗門を見なさい」と。そうすれば次の旗門をどう通ればいいのかわかるからって。で、DJも一緒だと思うんですよ。次の次の曲を見てれば、次の曲は自ずと決まるんで。

まぁ自分でそういう風に納得させてるだけかもしれないけど、とにかくやっぱり攻めたいということはあります。次に、早くてスリリングな曲をかけるのは攻めてるなって感じはしつつ、メロウな曲でも選曲としては攻めてるときもあるし。ドラマチックな展開を目指すことだったり、そういう攻めみたいなことだったりはプレイの軸にあるかもしれないですね。

あと、これは僕の経験談のなかでもマニアックな話なんだけど、ジャンルをまたぐ曲って自分の中ではすごく大事で。

例えばCoke Escovedoの「I Wouldn’t Change A Thing」は、ファンキーでしかもラテンっぽいし、ソウルっぽくもある。あと、そう言う曲で大事なのが、ちゃんとバシッと終わってくれること。そうすると違和感なく次の展開に行ける。自分の中でクロスオーバーできるここぞという曲を持ってると、途切れないですね。そういう曲はすごく大事にしています。

―そういう曲は1曲かけきりますか?

R:そういう曲から同じジャンルで行きたい場合は途中でカットインとかもしますが、ジャンルや雰囲気を変えたい場合はかけきります。緩急の話も一緒で。すごく早い曲でバシッと終わる曲から、メロウなゆったりした曲に行くというのも違和感なく行けたりするので、そういった曲も大事だなって思っています。フィルコレクターと同時に、「バシッと終わる」エンディングコレクターだっていうのも付け加えてくれたら嬉しいです(笑)。

Cokeもそうだし、Freedom Expressの「Get Down」とか、ファンクでもありソウルでもある。あと、Messengers Incorporatedの「Twenty Four Hours A Day」は僕の中の必殺アイテムですね。あれは次を落とすときにも、次のジャンルを変えたい時にも使いますね。フェードアウトするところに行くって言う勇気もあるんだけど、僕はなんとなくそこで流れが途切れてしまうような気がしてしまって。だからバシって。でも気持ちをフェードアウトさせないようにしつつ、フェードアウトももちろんします。

―なおかつ尺的にもちょうどいいような。

R:う~ん、2分40秒から3分前半くらい、2分半だとちょっとやっぱ短いという感じが僕はしちゃいます。7インチはそういう尺のやつが多いので。そういう尺も大事ですよね、クロスオーバーさせる時には。

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―僕はRYUHEIさんのプレイを聞く時にすごく映画を見てる感覚になります。

R:とても嬉しいです。そういうことだもんね、ストーリーって。それもなのかって思われるかもしれないけど、最も大事にしてることの1つではあって。もちろんストーリーがないときも多いかもしれないけど、あくまで自分ではそういうのを大事にしたいなっていう気持ちはあります。

―それこそJohnny Pateのサントラ曲「Brothers On The Run」とかのチェイスムービー感というか。ブラックムービー自体がそういうの多いですけど。

R:好きだね~。本当に好きなプロデューサーはJohnny Pate。「Shaft In Africa」も「Brothers ~」も。あの緊張感というかスリリングな感じがすごい好きです。あと暖かいって言う意味ではSide EffectやPleasureとかを手がけたWayne HendersonのAt Home Productionや Mizell兄弟のSky High Production。もちろんJames Brown Productionは言うまでもなくだけど。

あとね、CadetのRichard Evansとか。あの辺の優雅なストリングス使いというか。この人の音ってわかる。そういう人って素晴らしいと思います。ストリングスとかホーンとか本当に好きですね。そんなこと言ったら全音好きなんだけど。

でも、逆にホーンのない曲の方がかっこいい曲って多くて、意外と。ドラムも前は激しく打ってるにこした事ないと思ってたんだけど、最近はちょっと存在感はありつつ、あんまり打ってないのも好きだったりして。

―ホーンやドラム以外の、ボーカルとかコーラスとかにこだわりありますか?

R:やっぱりドラマチックなの、とかになるかな……。こだわりはありますね~。でも言葉にできない。

―すごく恐れ多いですけど、RYUHEIさんのボーカルみたいなのがやっぱりあって(笑)。

R:それって表現はとても微妙だけど、「黒くもなく白くもなく」ってとこじゃないかな?

―ある意味でラテン的なというか。RYUHEIさんらしさ、みたいなものがかなりあると思っていて。このボーカルが来ると、あ、RYUHEIさんっぽいっていうか。

R:そんなことないと思うけど……。恐れ多いけどなんかわかるなぁ。こんな話をしたの初めてだね。すごくわかる。そうなんだよ。

たとえばEllipsis「People」、Pure Funk「Nothing Left Is Real」、Chain Reaction「Search For Tomorrow」、Sage「I’m Alive」とかそうじゃないかな。あと質問とは逸れますがGil Scott-Heronの声は問答無用に好きですね。あの声こそ正にThe Manです。

あとMighty Ryedersも好きですね。あの感じ、あれこそレアグルーヴなんですよ、僕にとっては。ソウルでもファンクでもディスコでもなく、ソウルでもファンクでもディスコでもあるあの感じこそがレアグルーヴなんだよね。声も演奏も。それから、Voices of East Harlemの「Wanted, Dead Or Alive』にも何とも言えない強烈なレアグルーヴを感じますね。Leroy Hutsonが絡んでるんだけど。あの感じもソウルでもファンクでもなく、演奏もボーカルもこれ何なんだろうっていうのがレアグルーヴという。うねっているんだよね。気持ち良くて気持ち悪いうねりがある。まさになんとも言えないレアなグルーヴ。

―Voicesってあんまりゴスペルを感じないですよね。ゴスペルなんだけど。レアグルーヴとしか言いようがない。

R:あんまり感じないよね。

―さっき挙げられたMighty Ryeders もコーラスとかに教会的な要素をあまり感じなくて。いなたさというか。気持ち悪くて気持ちいいっていう絶妙さだと思うんですけど。僕は、逆にゴスペル感のあるソウルフルな曲が好きですね。教会上がりで声を張り上げて、コーラスが激しいものが。だからDouble Exposureの「Ten Percent」とか好きで。

R:意外とゴスペルの話にはよくなりますね、我々の周りでも。ゴスペルファンクなんていうジャンルもあるし。

あとはボーカルでいうと、「ウェルウェル系」も好きですね。僕の好きなモダンソウル多いんですよね、ボーカルで「ウェルウェル」言ってるのが。あとね、スキャットまではいかないけど、Earth, Wind & Fireのパラパッパパッパパじゃないけど、ああいうのもすごく高ぶる。いい感じの男女ボーカルの掛け合いもたまんないね。Master Force「Don’t Fight The Feeling」なんてそうじゃないかな。掛け合い掛け合いはそんなにしてないけど。

Shimaくんは好きなボーカル曲を「Ten Percent」だ、って言ったけど、LPと7インチシングルとどっちが好きですか?

―7インチですね。

R:LPは長いもんね、歌い出しまでが。でも途中でいいブレイクダウンもあって。難しいんだよね、あれはやっぱりボーカルがいいからさ。早く来てほしいんだよね。

でもなんだろうね、毎日のように発見があってスゴいなって思う。きょうも一曲、LPにいい曲を見つけて。

―それはいつも持ってるLPで逃してた曲があったということですか。

R:それもあります。まぁレコード店という仕事がら、店で聴いていてもよく発見はある。という意味でやっぱりLPもしっかり聴いてほしいっていうのはあるんだけど、経済的にも全部ってのは厳しいと思うし。でも、曲って7インチだけで出てるわけではなくLPも12インチもあるから、できればフォーマットにこだわらずがんばって重いLPも12インチも7インチも持ってほしいな、って。レコードはサイズや重さで聴くものではない。なんて生意気ですよね。ただ本心はそうです。

―RYUHEIさんがかけたのを聴いて、Kinsman Dazzの「I Searched Around」に感染してしまって。あれは、まさしくRYUHEIさんクラシックというか。確か12インチでかけてましたよね。

R:あれ全部あるんだよね。7インチも12インチもLPも。あれはね、7インチと12インチとでちょっとずつミックス違う気がするんですよ。僕がベストだと思うのは12インチ、一番音がまとまってるというかボトムがしっかりしてる。だから12インチでかけてます。気のせいかもしれないけど。7とLPはちょっと似てるんだよね。7インチでいきたい時は7インチでかけるけど。あの曲だけはLPも7インチも全部持っています。なかなかそういうことはしないのですが、あまりにも好きすぎて持っています。

―あの曲、嫌いな人っていないんじゃないかなぁ、と思いますね。みんなが使いたくなる。だから、僕はすごく禁欲してます。つい頼ってしまうというか。

R:あの曲は最高だね、マジで最高です。頭にフィルもあるし、フィルの後の入りもいいんだよね~。よく聴くと後半はうっすらラテン調な演奏にもなってるんですよ。

―あれはフィルを飛ばして、ぶっ込んでもいい曲ですし。

R:そうですね。すごい曲ですね。メジャークオリティであのストリート感というか。フロアで本当に映える。音もすごくいい。ミッドとハイの間にちゃんと空気が入ってる。例えるならシャリとシャリの間に空気がしっかり「フワッ」と入っているお寿司やオニギリのような。そういう音が好きなんですよ。筋肉質な「ギュッ」と詰まった'60sの音を欲するときもあるのですが、'70sのああいう疲れないのに存在感とパンチがある音も好きです。

だれにも言ってないことを告白すると、(2016年発売予定のMIXCD)『A Message From The Man 5』では僕が一番好きな使い方をあれでしてて。ここぞっていうつなぎがあるんですよ、カットインなのですが。僕も禁欲、じゃないけど、その繋ぎばっかりいつもいくとあれなんで、タメておくというかわざとやらなかったりするんですよ。でもこれからまたガンガンやろうかなと。

―また貴重なお話をありがとうございました。楽しみにしています!

追記:Ryuhei The Manさんの5年ぶりとなるオフィシャルMIX CD『NEXT MESSAGE FROM JAPAN』は9月9日発売。ぜひお聴きください!


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