縞馬は青い

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最近の記事

6月13日|『ストーリー・オブ・マイライフ』と彼女

昨日、TOHOシネマズ新宿に『ストーリー・オブ・マイライフ』を観に行った。3月にぎりぎりマスコミ試写で観ていたので、これが2回目。でもめっちゃくちゃドキドキワクワクしていた。映画館に行くのにこんな胸が高鳴ってるのなんて、1個目の『アベンジャーズ』を観た高校生ぶりくらいじゃないかな。シネコンで映画を観るのが3か月ぶりくらいだったこと、『ストーリー・オブ・マイライフ』が最高の映画であると既に知っていること、それを彼女と一緒に観れること。そうしたいろんな理由から、「映画を観る」行為

    • 流れ着いて、また流れ──濱口竜介『寝ても覚めても』

      人と人が正面衝突して、そのことによってより深く関係が再構築されていく。濱口竜介監督は、平凡からの崩壊、そして崩壊からの再生を描いてきた映画監督だ。 まだ4作品しか見れてないけれど濱口作品は、なんとなく息苦しい毎日が衝突を機にハレバレとする(しかしまた違う苦しさも残る)、そういう一連の流れを必ず描いてきている。『永遠に君を愛す』では“浮気がバレる”ということによってより強固な愛が示され、『天国はまだ遠い』では、“姉の死”や“男の嘘の演技”が妹の感情を発散させる。『ハッピーアワ

      • 背中に感じたぬくもりと冷たさと/中川駿『カランコエの花』

        おもしろい。よくできてる。39分という上映時間からは想像できないほどに、鑑賞後は余韻で胸がいっぱいになる。 ある一つのクラスで唐突に行われた「LGBTについての授業」。その授業を契機に、「俺らのクラスだけこの授業してるってことは、もしかしてこの中にいるんじゃね?」とからかい男子の詮索が始まり、クラスにも波紋が広がっていく。 高校の、ある夏の日の、月曜〜金曜日までの5日間を切りとり生徒たちの様子を半ば群像劇のような形で描き出した作品。「クラス内のLGBT探し」と

        • 平成最後の夏、あるいは青春時代のおわりに/枝優花×羊文学『放課後ソーダ日和』第1〜6話

          映画『少女邂逅』のアナザーストーリーとしてYouTubeで公開されているドラマ『放課後ソーダ日和』が予想以上にグサグサと心に刺さりまくっている。映画が学生時代のリアルな闇の部分を描いていた作品であったから、光に焦点を当てたこのドラマのキラキラした青春模様にドキドキしてしまう。結局同じことを伝えようとしている2作品ではあるのだけれど、この光と闇の二面性が物語を豊かにしている。枝優花監督はやっぱりおもしろいぞ。 一話一話がほんとうに素晴らしくて書きたいことが多い作品だ。でももう

        6月13日|『ストーリー・オブ・マイライフ』と彼女

          そうして暑い夏がはじまって/枝優花『少女邂逅』

          ときどきある。席を立って映画館から出ても、心だけをその場所に置いてけぼりにしてきてしまうことが。外のむわっとしたぬる〜い風だけを肌に感じながら、遠い世界から吹いてくる息吹に持ち上げられ、ふわふわっと宙に浮いてしまうような。映画の息吹を感じる瞬間。久しくその不思議な感覚を得られる作品に出合ってなかったのかもしれない。こうやって息をして「生きている」作品に出合うことが、ときどきある。 監督のもつ実体験を、岩井俊二成分を多分に含ませながら映写し、しかし全く新しいオリジナル作品へと

          そうして暑い夏がはじまって/枝優花『少女邂逅』

          いつだって夏休みの宿題は終わらない/相米慎二『お引越し』

          #夏に見たい映画 なぁお父さん、もうあかんの? 主人公のレンコは父親と一緒にバイクにまたがり背中にぎゅっとしがみつきながらそう尋ねる。しかし父親からの返事はない。背中の温かみを感じつつも父親の顔色を伺うことはできない。もうあの頃に戻ることはできないの? あの幸せだった過去はどこへいってしまうの? 子供から大人へと突きつけられ誰も答えることができない、この儚い人生へ向けた問い。レンコはこの問いの答えを求めて走りだす。これはある少女と私たちがぶつかった、あの頃の「夏休

          いつだって夏休みの宿題は終わらない/相米慎二『お引越し』

          毒キノコはなぜ、かくも美しいのか/ポール・トーマス・アンダーソン『ファントム・スレッド』

          彼に恋する事で人生は謎ではなくなるのよ 終盤でアルマが語る言葉。人生は謎ではなくなる。そう、この映画では恋愛や結婚といった人間関係の「からくり」が掲示される。その内実は実に高貴で美しく、また滑稽で可笑しく、震えるほどに怖い。ただ、鑑賞中(特に後半)ニヤニヤが止まらなかったのは、彼女と同じように人生の謎から少し解放されたからであり、その「からくり」に今まで経験したことがない感情を投影させられたからである。先日『ヤンヤン 夏の思い出』という映画を観て書いたレビューに「人は多

          毒キノコはなぜ、かくも美しいのか/ポール・トーマス・アンダーソン『ファントム・スレッド』

          ラムネのビー玉に宇宙を重ねた夜/是枝裕和『万引き家族』

          なんとも釈然としない映画だ。いや、そんなことは観る前からわかってたことだけど、なんというか、打ちのめされた!って感じ。泣いていいのか怒っていいのか、はたまた笑っていいのかわからないこの感じ。どれもが正しい感情なんだろうけど。うん。カンヌをとったから、といってこの映画の評価を押し上げようとはしたくないけど、やっぱりカンヌを取るにはとるだけの理由があるのだ。是枝裕和は一歩、あゆみを進めたんだ。そして私たちもまた、その世界を知り、歩きだすことができる。是枝監督に連れられて。

          ラムネのビー玉に宇宙を重ねた夜/是枝裕和『万引き家族』

          ストロベリーミルクシェイクを飲み干して/リン・ラムジー『ビューティフル・デイ』

          映像と音楽が響きまくる特異な映画。リン・ラムジーの演出はあれこれと想像したくなる余白に満ち、ジョニー・グリーンウッドの劇伴はセリフよりも雄弁に状況を物語る。この狂気と愛が混じりあった映画、それが『ビューティフル・デイ』。 ジョー(ホアキン・フェニックス)とはどういう男だったのか?これは映画を観るだけでは断片的なことしか分からない。子どもの頃に父親からの虐待を受けていて、なにやら軍隊(FBI?)の活動に参画して子どもを助ける活動をし、現在は失踪した少女たちの救出を業務としてい

          ストロベリーミルクシェイクを飲み干して/リン・ラムジー『ビューティフル・デイ』

          無邪気な幻想に誘われて/ション・ベイカー『フロリダ・プロジェクト』

          あなたは子どものころ 「冒険」に出かけたことはあるだろうか? わたしはある。小学生のころ、放課後や休日には自転車を走らせ近くの川や公園で遊び、目的もないまま駄菓子屋や文具屋に入ったり、自販機の周りにお金が落ちていないか探したり、道の向こう側へ石を投げてみたり(危険です)。これはひとりではなく近所の幼なじみとやっていたのだけど、田んぼと山に囲まれた「何もない」風景を彩り豊かな「特別な情景」に変えることがあの頃のぼくたちにとってはすごく重要なことで、それを実現することにこそ幸せな

          無邪気な幻想に誘われて/ション・ベイカー『フロリダ・プロジェクト』

          ダニエル・ヒベイロ『彼の見つめる先に』- スイートな“恋の始まり”と束縛からの解放

          2010年代になってアカデミー賞ほか世界の映画祭で大きなテーマとして掲げられてきた「多様性」についての一連の考察は、本作において一つの重大な回答を示したのではないだろうか。そう思えるほどに優れた映画であると感じたし、なによりも、すんごくおもしろかった。 本作の魅力は、ハートフルでスイートな語り口から発せられる“恋のはじまり”の描写とそこに内包された強い思い(すなわち監督からの提案)にある。物語がはじまって画面いっぱいに広がるのは、うっとりしてしまうような甘美な空間であっ

          ダニエル・ヒベイロ『彼の見つめる先に』- スイートな“恋の始まり”と束縛からの解放