【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】12

一般病棟に移ったと同時に
食事のリハビリも始まった


流動食


このときに流動食の存在を初めて知る
〈食べる〉というよりは〈流し込む〉
味は何とも言えないが
決して美味しいとは言えない…

看護師の話ではここから少しずつ固形した食事になっていくとのこと
少しでも早く普通に食事がしたいと思った…


その日の夜


ナースコールを押す


『どうしました?』


「お腹が痛くて…準備、お願いします…」


事故以来水分しか摂取しておらず
初めての食事に胃腸が動き出した


『はい、いつでも良いですよ』


まともに動けない僕の身体
世話をしてもらわないと何もできない…
わかってはいたことだが
まるで子供のように世話をしてもらうことになった…


「恥ずかしい…屈辱だ…」


ありがとうという感謝の気持ちより羞恥心の方が強いため
顔を赤らめては何度も何度もつぶやいた


行為中はすぐ隣りにいて
終わり次第すぐケアに入る…
すべてのケアが終わって一人になったとき…


「なんでこんな目にあわなくちゃいけないんだ」


「もうイヤだ…」


零れた涙をすくい取る術を知らないまま


そのまま朝を迎える…




つづく


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#第12話

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