20年のキセキ

【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】最終話

気がつけば交通事故から15年が過ぎていた…

普通に生活したり
普通に動く分には
手術の傷口の痛みや違和感などはない
それだけならリハビリは必要ないと思えるくらい回復している
ただ、無意識のうちに
腹部を覗き込んで「ト」に見える傷口に
身体全体が吸い込まれるように
僕は身体のバランスを崩していた 

自分の身体のバランスは気づきにくい

自分ではこのバランスが正しいと思っているからこそ盲点で
人は

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【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】28

31歳

投げ方を変えた翌シーズン
昨シーズンの勢いのまま順調にスタートを切ったが、なぜか徐々にパフォーマンスが下がっていく
その焦りから練習のし過ぎもたたり
肩を痛めてしまう
それでもプレーをし続けたせいで
肘にも異常をきたす
騙し騙しプレーが続く

「あの時の自分をもう一度…」

昨年の良かったときに戻ろうと
時間があれば試行錯誤した
その間にチームはリーグ優勝を何度も獲得していた
僕は焦る気

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【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】27

月日は流れ
30歳4月

スポーツトレーナーの資格を取得

それまでなかなかやりたいことが見つからなかったが、ようやく自分がしたい仕事を見つけた
それとほぼ同時期に新しい野球チームに所属することとなる
東京の1部リーグで活躍するチームへ入団したが、そのチームは僕より上手い選手がたくさんいる

「負けてたまるかっ!」

どんなに差があっても気持ちだけは負けない
練習も全力でアピールする 

そんなあ

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【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】25

4月初旬

僕は草野球チームに復帰した
昨年加入して
今季が2シーズン目

「好きな野球ができる」

それだけで心は弾み
笑顔が絶えることはない

自分で言うのもなんだが
昨季はそこそこ活躍した
一年目にして主力として成績を残した
でも今季は違う…
ここでも気を遣ってもらい
負担の少ないポジション(ファースト)を守らせてもらう

〜試合終盤〜

『カキーーンッ』

一死二塁から自分の後方にフライが

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【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】24

3月初旬

僕は事故以前に勤めていたアルバイト先に復帰することができた

2月16日の退院した日は帰宅直後
力尽きたかのように横たわったが
徐々に慣れていき
日常生活を送る上では問題なかった
でもいざ働くとなると些か不安はあった

復帰前に店長と面談した
勤務時間や日数など
徐々に慣らしていくように調整したり
いろいろ配慮してくれた

嬉しかった反面、申し訳なさが強かった…
一日も早く普通に働きた

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【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】23

2月16日

いよいよ退院の日を迎えた
昨日のうちにある程度荷物をまとめたが
忘れ物がないように入念にチェックした

もう二度とここには来ない

そう強く想い
準備を済ませて朝食を待った

・・・

朝食後
医師との面談し終わってから
ようやく病院を後にする

「長かった…」

病院の外に出て振り返った瞬間
入院中見ることのなかった病院の外観に目を奪われて
思わず口から出た言葉は
澄んだ青空に吸い

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【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】22

2月14日

この日の朝の検診で退院日が
2月16日に決まった
順調に回復をしているためそう決断したらしい
予想よりも早いそうだ

待ちに待った退院だが
どこかピンッとこなかった
まるで他人事のような…

午後の面会時間
来てくれた家族に
退院日が決まったことを伝えると
みんなホッとした顔をした

「なんて顔してんのさ!」

他人事のような感覚のまま
家族に向かって投げかけては
そりゃ心配してたん

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【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】21

2月10日〜2月12日

腹部に残った1本の管を見ながら
ため息混じりの呼吸を繰り返す
医師からは

『数値が良くなって、この管を抜いたら退院は目の前です』

と、告げられてはいたが
気持ちは晴れてこない…

退屈な入院生活の中で
唯一の楽しみは昼食後の面会時に買ってきてもらうジャンクフード
だがそれも食べ飽きて
いよいよやることがなくなってきた…

2月13日

朝の検診

『うん、これなら大丈

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【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】20

いよいよ管を抜く
身体には3本の管が刺さっている

右胸部側面に1本
右腹部側面に1本
左胸部側面に1本

『今回は右腹部側面の管以外の2本を抜きます』

と、医師に伝えられすぐ準備が始める
ベットの回りが慌ただしくなる…
僕はただ待つだけの不思議な光景が広がっている…
ベット周辺の準備が完了し
医師がハサミを手に僕に歩み寄る

「何するんだろう?」

と、思った矢先に医師が

『これから管と腹部

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【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】19

2月9日

朝の検診の時間
担当医から
『少し数値が落ち着いてきました。今日一日様子見て午後の検診のときに数値が安定したら管を抜きましょう』

この同じような毎日が終わるかもしれない

そう思った瞬間、僕は嬉しくて嬉しくて
つい「やったー!」と叫んでしまった…
医師も看護師も見ていたのに…
顔を赤らめたのは言うまでもない…
恥ずかしい…

・・・

朝食を済ませて
いつもならダラダラしてる時間が来

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