見出し画像

BtoB広報PRがやるべきコトは?

私はPR代理店を経て、とあるスタートアップに転職したPRパーソンです。
転職して約1年。予想より通用したこともあれば、経験不足を痛感したこともありました。今回のnoteはこの1年で考え、学んだBtoBのPRについて、現時点で言語化できることをまとめ、次の1年の糧にしようとするものです。BtoBのスタートアップのPR担当の方にも何らかの参考になれればと思います。
なぜBtoB企業に転職したか。
PR代理店時代は営業やプランニングで大手企業からスタートアップまで数十の案件を担当しました。そこで「どうやったらメディアに取り上げてもらえるか」のPRを経験してきました。しかし、メディアに取り上げられただけで態度変容が起きる時代ではなくなってきました。TVに取り上げられた!Yahoo!ニュースに載った!という瞬間風速的なPRアクションではない、広義のPRを実務の中で学び、実践したいと考え、BtoBのスタートアップに転職しました。
BtoB企業を転職先に選んだ理由は、BtoCと比べてメディア掲載しずらいからです。広義のPRを身につけないとバリューが発揮できない状況に自分を追い込むことが狙いです。
(大手企業のPR担当の方にはあまり参考にならないかもしれません。またPRの基本的なノウハウ(プレスリリースの書き方、メディアとのリレーションづくり)については本原稿では触れていません。)

BtoCとは異なるBtoB企業のPR

BtoBのPRはどんなアクションを行えば良いのでしょうか?
一般的にPRの成功事例として紹介されるマスメディア掲載やSNSのバズ、社会的な意見広告、ファンコミュニティの手法は、BtoCの話です。BtoCではそうした施策が消費者の購買の理由になることもあるでしょう。ただし、BtoBのPRではそうはいきません。
BtoCのPRとBtoBのPRは区別して考えた方が分かりやすいと思います。

BtoBとBtoCのPRの相違点

BtoB企業ではメディア掲載やSNS運用が大きなインパクトを出す可能性は低いです。その理由は顧客となりうる対象者が限定的ということと、購買プロセスが異なることに起因していると考えます。

▼PRの環境比較

図1

※ただし、BtoBのマーケティングツールについては、SNSで議論されることが多かったり、フォロワーの購買行動は起きているようです。どんなモノにも例外があることはご理解ください。

BtoBでは経済合理性(があるように見えること)が優先されるので、TVやSNSで見たから即問い合せ、購入というケースは非常に稀です。

ターゲットや購買プロセスの違いについては、ウェブ制作会社ベイジさんの資料をご覧ください。
▼マーケティングに影響するBtoCとBtoBの違い

画像2

BtoB PRはこうした情報を頭に入れた上で、戦略を立てなければいけません。

BtoB PRって何をすればいいの?!

そこで、BtoBのPR手法を調べるのですが、個人的にはなかなか良い事例は見つかりませんでした。

①ユニークな社内制度やオフィスをメディアに取り上げてもらう。
②人物をメディアに取り上げてもらう。(トップインタビュー、社員の営業論、マーケティング論、ユニークな経歴)
③社内報。社内報で社員のモチベーション向上、コミュニケーションの醸成。
④採用広報としてのnoteやWantedlyのコンテンツ発信

①②はBtoBサービスのメディアへの取り上げられ方についてですが、これは前提としてBtoBのプロダクトはBtoCのように簡単にはマスメディアに取り上げられないので、プロダクト以外を取り上げてもらえという主旨なのです。これはメディア掲載自体が目的化し、本来のPRの目的が見失われてしまっていると思います。
また、③④はインナーブランディングや採用広報として、どちらかというと人事部や総務部に内包される取り組みの事例です。

PRでもっと意識したい、どの「ステークホルダー」に情報発信するか。

スタートアップで経営陣や営業部と近い距離にいて感じたことは、PRパーソンこそ、もっと自社サービスが広がるために、何ができるか?を意識したい、ということでした。営業部やマーケティング部と共通認識でアクションをすべき、ということです。PRの役割は「認知獲得」までと制限せずに、もっと挑戦できることはないか?と考えました。

やはり、プロダクトの販売増への貢献がもっとPRに課せられてもよいのではにか、と思います。社内で評価されていない、PRは評価しづらい、と言われてしまう問題の原因はココにあるのではないでしょうか?
そして、結局PRの基本である「ステークホルダーとの良好な関係づくり」に辿り着きました。ステークホルダーは当然メディアだけではなく、顧客、行政機関、取引先らが含まれます。それらとの関係性づくりを通じて、プロダクトの広がりをサポートすることを目指しました。具体的には以下です。​

①顧客
SaaS企業であればThe Modelに近い組織体を採用しているはずで、マーケティング、営業、CSが顧客、または顧客に成り得る人々と常にコンタクトを取っています。そこで、営業フローごとに必要なコンテンツを共同で制作し、それをネタにプレスリリースするなどしてメディアに取り上げてもらいます。また、ウェビナーや事例インタビューなどは顧客のインサイトを理解する上で非常に学びが多いので、PRパーソンは積極的に参画した方が良いと考えます。
私はメディア掲載はクリッピングを行っていないので正確な数は把握していませんが、1年間で約200媒体(うちTV1回、全国紙7回、転載のカウントなし)にプロダクトや導入成功事例が掲載されたので、ある程度の結果に繋がっていると思います。
(ただし、掲載記事がキッカケで問合せが入った顧客は10件程度しかいないことが確認できています。やはり様々な接点を設ける必要があります)

②行政機関
規制や法律で自社サービスの利用者が制限されている場合などは、省庁や国会議員などのルールメーカーに働きかけることで問題が解決する場合があります。公共の利益になることであれば、規制や法律の改訂を請願する、業界のルール作りを共同で行う、自社プロダクトを導入する顧客やPoCに助成金を設定してもらうなど、プロダクトが顧客に受け入れられやすい環境をつくることも可能です。
私はある省庁に、既存の補助事業の中に弊社サービスに関する項目の追加を嘆願しようと、経済効果や海外事例などを踏まえてアプローチしています。補助金が適応されれば、ユーザーのサービス導入のハードルは下がります。ただし、キーマンとなる国会議員とのリレーションがないとなかなか話が進まないようで、来年はこの点を模索していきたいと考えています。

③取引先
販売代理店やプロダクトのAPI連携先など、協業するパートナーとのリレーションづくりは直接的にはBusiness Developmentや営業企画が担うケースが多いかもしれません。
私の場合は、競合他社に業界のルール作りを打診しようと画策しています。これは弊社サービスと同類のサービスが乱立し、ユーザーが使い分けで不便を感じていることに起因しています。業界のルール作りの中心に弊社が収まれば、ソートリーダーのポジションが確約できるものと考えています。
こうした取り組みについては、弥生の電子インボイスの規格選定が非常に参考になるので、参考にしてみてください。

④社員や採用者
ステークホルダーには当然自社社員や未来の社員も含まれますが、この点に関しては特筆したアクションは行いませんでした。メディア掲載がその一助になっている可能性はありますが、企業規模やリソースを考慮すると、現状は必要でないと判断したためです。いずれはオープン社内報を始めることもあるかもしれませんが、社員からのニーズが顕在化してからでも遅くないと考えました。

最後に

今回慣れない筆を取った理由の1つは、自分が参考にしたいBtoB企業のPR事例が極端に少なかったことです。BtoCのPRと混同されて話されているのを見聞きするたびに、腑に落ちない感情を抱いていました。ただ、ココにまとめた内容は2020年に体験したことを元に書いていますので、次の1年で異なる経験をした場合は考え方が180°変わっている可能性もあります。BtoBのPRについてもっと先の展開に進んでいる方、もっと的確な持論をお持ちの方は、ぜひ優しいご指摘をいただけたらと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?