超短編「チュッパチャプス苺味」

「そういえばさ、」姉さんが声を潜めて僕に囁いた。「あんたのクラスにさ、サッカー部で有名な子いるじゃん?紹介してよ」口に含んだロリポップの甘い香りをさせながら、残酷な内緒話を刺してくる。僕たち、血が繋がってないんだよ?いつになったら僕の方を見てくれるの。

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校内で弟を見た。私とは違って優秀な弟は、生徒会に入っている。血が繋がってないもんなあ、と鼻筋の通った横顔を眺める。昨日、サッカー部の男子の話を振ってみたけど、弟の表情は変わらなかった。恋はまだ浅瀬だ、引き返すならまだ間に合う。「なんで姉弟なのかなあ」


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