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6個156円のタコスで「辛ッ、辛いーッ」。メキシコシティでもつづく部屋食の日々

メキシコシティに着いた。何年ぶりだろうか。10年以上の年月がたってしまったかもしれない。その間、アメリカから国境越えで何回かメキシコには入国しているのだが。4泊の予定だった。理由はPCR検査と飛行機。日本帰国に備え、メキシコシティでPCR検査を受けなければならなかった。日本まで帰る安い便もなかなかなかった。世界一周旅にメキシコを加えたのは、新型コロナウイルスが理由だった。メキシコはワクチンの接種証明とPCR検査の陰性証明という、これまで訪ねた国では重要だった証明をとる必要がなかった。入国制限はぼぼなにもない。こういう国を間に入れると、日程づくりが楽になる。

しかし新型コロナウイルスは甘くない。オミクロン株の感染が急拡大していたのだ。メキシコシティ滞在中に、僕もその混乱に巻き込まれていく。そのあたりは次回以降に。メキシコシティ1回目は、ウイルスなどどこ吹く風といった日々を。それはそれで不安になってしまうのだが。

旅の期間:11月29日~12月3日

※価格等はすべて取材時のものです。

ホテルまでウーバータクシーで144ペソ、約749円

(旅のデータ)

メキシコシティの空港を出たのは夜の10時近かった。どうやってホテルへ? メキシコシティの治安の悪化はときどき耳にしていた。夜の地下鉄は乗らないほうがいいとも。しかしコロナ禍前は毎月のように海外に出ていた。その街の治安は肌感覚でわかることが多い。だが空港に着いたばかりでは⋯⋯。ネットでウーバータクシーを呼んでみた。144ペソ、約749円。最初はこれが安全策か。すぐに返事がきた。やはり空港はウーバータクシーの反応が早い。いたってスムーズにホテルへ。メキシコシティもウーバータクシーの時代か。

広めの部屋だが、朝食は予想通り。1泊2300円ですから

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ホテルは事前にネットでとっていた。安めのビジネスホテル風の宿だった。朝食がついて1泊2300円。部屋はいたってシンプルだが、けっこう広い。かなり安いかもしれない。しかしその理由がやがてわかってくる。そのあたりは次回で。メキシシティは気候がいいから、冷房も暖房もいらない。フランクフルトから長いフライトだった。ストンと寝てしまった。

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宿代に含まれるホテルの朝食は、アメリカのモーテルっぽかった。茶色い紙袋に入ったサンドイッチとジュース、ヨーグルトがフロントに置かれていた。それと自販機でコーヒー。味? この写真から想像できると思います。ホテル代は2300円ですから期待はしてなかったのですが。翌朝から、サンドイッチは変わらず、ジュースやヨーグルトが変わるというローテーションも、予想通りでした。

ただのオフィスビルにシャッターを押して、歴史地区ですなぁ

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宿はメキシコシティの歴史地区にあった。このエリアにこだわりがあったわけではない。空港でPCR検査を受けるつもりでいた。空港に行きやすい場所を選んだ。せっかくなので有名な広場、ソカロあたりまで行ってみよか⋯⋯と宿を出る。と、この風景。歴史地区は街歩きにはいい。治安を考えなければ。

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歴史地区散歩の気分で進むと、こういう建物がなにげなく現れる。1911と1982⋯⋯。なぜ年号がふたつ? スマホで検索してみたが⋯⋯。わかったことは、現役のオフィスビルということ。街を歩き、石づくりの重厚な建物についシャッターを押したが、この周辺では珍しくもないということのよう。歴史地区ですなぁ。

支倉常長の運の悪い人生はここからはじまった?

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一応の目的地はあった。サンフランシスコ教会。伊達政宗の使者、支倉常長らがここで洗礼を受けたといわれる。江戸時代初期の話だ。当時の江戸幕府は、宗教の扱いで揺れていた。支倉らはヨーロッパまで足をのばして帰国するが、そのときには禁教会が発せられていた。当時の禁教令は主にキリスト教を禁じたものだった。「それはないでしょ」と支倉は呟いたか、どうか。

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教会のなかに入ってみた。ぐっと迫ってくるものがある。椅子に座り、祭壇を見あげる。昔からメキシコのこういう世界が好きだった。陽気なメキシカンというイメージが強いが、街なかの教会が歴史を背負い、しんと静まり返っている。人々はよくここの集まり、手を組んで目を閉じる。いつもいい時間が流れている。

ソーシャルディスタンスのキャンペーンにホッ

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歴史地区のなかではいちばんの繁華街? 5月5日通りは、歴史地区の銀座と理解するといいかも。5月5日は、メキシコ侵攻を狙ったフランス軍をメキシコが撃退した記念日だ。ブランドショップが連なる街並みは僕には無縁? いえ、ここで買い物をしました。家族へのクリスマスプレゼントにムートンを買った。値段は内緒です。家族が読んでいるかもしれないので。つまり安いっていうか⋯⋯?

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ソカロに向かって歩いていくと、ソーシャルディスタンスを守ろうキャンペーン。メキシコシティを歩いていると、いま、世界は新型コロナウイルスに苦しんでいることを忘れそうになる。この男性を見て、なんだかホッとしました。一応、メキシコシティでも気にはしている⋯⋯と。それほど街はコロナ禍とは無縁です。

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歴史地区の2番目の目的地はソカロ。ベタです。僕も何回か訪れていますが、メキシコシティにきたら、一応⋯⋯。札幌の時計台のようなもんでしょうか。時計台は日本での三大がっかり名所のひとつに数えられていますが、ソカロの建物はなかなかすごい。ただ無駄に広いのが難。今回はなぜか、翌日、再びここにやってくることに。理由はsight 1 4で。

ベーコン、揚げた肉、ハムという肉トリオが迫る

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宿に戻る途中で昼食。レストランは混みあっていて、ウイルスがちょっと心配。そこでこの路上店を選んだ。TARTASはメキシコではサンドイッチをさすことが多い。その前のSUPERの文字が気になったが、60ぺソ、約312円という値段につい頼んでしまった。そして出てきたものは⋯⋯次の写真で。

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デ、デカサンドでした。奥の容器がコーヒーカップ大。比べてみてください。挟まれていたのは、ベーコン、卵焼き、トマト、アボガド、揚げた肉、パイナップル、ハム、チーズ。ベーコン、揚げた肉、ハムという肉トリオが迫ってきます。隣の中年女性はこれをペロリ。たしかにそういう腹をしてましたが。僕は小食というわけではないが、さすがに苦しかった。

「辛ッ、辛いーッ」。その声が虚しく響く部屋食の日々

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夕食はメキシコにきたらまず⋯⋯といった感じで近くの路上店でタコスをテイクアウト。左手の女性が英語を使ってくれて助かった。宿の周辺には、レストランというより飲み屋が多かった。テーブルの上には、空になったビールのピッチャーが並び、店内はフルボリュームでにぎやかだったが……密。自重しました。やはりウイルスが⋯⋯。

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ホテルの部屋でテイクアウトしたタコス。6個で30ペソ。ビールは近くのスーパーで16ペソ。約239円の夕食です。タコスにはライムと小袋に入ったサルサソースがついていた。ライムを絞り、ソースをつけ⋯⋯。このサルサソースが激辛。「辛ッ、辛いーッ」。誰もいない部屋に響く僕の声。新型コロナウイルスの感染がなかったら、店に入っていたはず。部屋食がつづく日々。これがコロナ禍の旅。

左派政権を支持する人たちのデモ

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翌日、空港へ。PCR検査の確認にでかけた。その帰り道、歴史地区はすごい人。遠くには旗も見える。そこをめがけていくと、5月5日通りに出てしまった。そこで見たのはこのデモ。ロペス・オブラドール大統領支持派が全国から集まってきていた。この日は、3年前、大統領の就任式が行われた日。でも、どうして黒い旗?

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メキシコでの左派政権誕生は2018年の大統領選に遡る。新興野党政権を率いるロペス・オブラドール氏が圧倒的な支持で当選する。彼が訴えたのは、汚職の撲滅の治安の改善。その政策に国民が反応した。支える団体には、社会主義系も。黒旗はそんなグループだった。主張はわかるが⋯⋯密です。デモの様子はYouTubeで。

【次号予告】僕が滞在したのは治安が最悪といわれたエリア近く。はたしてメキシコシティの治安は? 次回に。(2月25公開予定)

ミャンマーの軍事クーデターから1年

「下川裕治のアジアチャンネル」でクーデター以来、週1回伝え続けた「ミャンマー速報」をnoteマガジンで1冊にまとめました。

「クーデターから1年。ミャンマー人たちの軍との闘い全記録」
https://note.com/shimokawa_note/m/m9dcecdc89604
売り上げの1部は日本のミャンマー人支援団体に寄付されます。




新しい構造をめざしています。