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自分の勘を信じてスリの巣窟といわれる地下鉄に乗る

僕はその街の治安をあまり気にしないところがある。いつか痛い目に遭うのかもしれないが、危険を避けるという旅人の勘もある程度はあると思っている。そんなのりで、僕はメキシコシティのホテルを予約した。着いたのは夜だった。翌朝、ここはどんなエリア? とネットをつないだ。近くにガリバルディ広場がある。検索してみた。
そこで目にしたいくつかのブログは、危険度赤信号の警告だらけだった。
「メキシコ人が危険だ。行きたくないという場所」、「治安がかなり悪いゲレロ地区とテピート地区の間にある広場です」、「行くときは必ずガイドをつけて」、「地下鉄ガリバルディ駅の近くになると、メキシコ人も身構えます」
僕が選んだホテルの最寄り駅は地下鉄ガリバルディ駅だった。
そんなメキシコシティの日々をお伝えします。

旅の期間:11月29日~12月3日

※価格等はすべて取材時のものです。

1泊2000~3000円というのが相場? あくまでも僕の基準です

(旅のデータ)
メキシシティのホテルはベッドひとつというレベルなら1泊600円前後からある。ひと部屋となると、最も安いもので1000円台といったところだが、そこそこのホテルとういことになると、2000円から3000円が相場だろうか。もっともこれは僕の基準。Wi-Fiがつながり、毎日掃除をしてくれて⋯⋯まあ、僕はホテルというものにあまり期待しないし、こだわらないタイプ。その基準と思ってほしい。泊まったホテルは、朝食付きで1泊2300円だった。どんな朝食? 前号で確認してください。

朝、住民が道を掃除していたら、その街は安全

(sight 1)

ホテルはアゴダでとった。1泊2300円で朝食付き。チェーンホテルのようだった。ロケーションを考えずに決めてしまった。そして泊まった日の朝、最寄り駅のガリバルディ駅は、「メキシコ人も身構えます」というブログを目にしてしまう。本当にそんなに治安が悪いエリア? 朝食の後、そろそろとホテルを出てみた。ここがガリバルディ駅の入口付近。雑駁な雰囲気はあるが⋯⋯。

(sight 2)

もう少し歩いてみた。ガリバルディ駅周辺の歩道には、こんな路上店が何軒もあった。たしかにビジネスマン風の人はいないが。道行く人の服装が乱れているわけではない。朝食を買って仕事場に向かう人が多い。なんだか普通だった。少しずつ、歩く歩幅が広くなっていくのがわかる。大丈夫そうな気がした。

(sight 3)

このおじさんを見たとき、ここは昼間なら安全⋯⋯そう思った。おじさんは店の前の歩道を掃除していたのだ。僕にはその街の治安を測る基準がある。街の人たちが、朝、道を掃除していたら、その街は安心できる⋯⋯。僕の勘にすぎない。しかし勘に頼って旅はするものだ。すべての街の情報が手に入るわけではない。その感覚を信じてみようか。

街の治安は生き物のよう。地下鉄乗り場への階段をおりていく

(sight 4)

街は生きている。治安はそう、生き物のように変わっていく。しかし一度書かれた過去のブログはそこで時間が止まってしまう。そういうことだと、勝手に拡大解釈していた。左派政権が成立してから3年。政府が掲げるのは汚職の根絶と治安の改善。その成果は出ているのかもしれない。しかし経済界は現政権に不満だらけだ。旅行者はそのなかを歩いていくことになる。地下鉄に乗ってみることにした。

(sight 5)

地上からの階段をおりようとすると、ホームレスが3人、日向ぼっこ。危ない雰囲気はない。さらに進むと券売機の前に出た。その先に改札。ちょっと頼りなそうな女性の警官がふたり並んで立っていた。表情は和やかで、のんびりしている。いかにも暇な仕事といった風情。以前に比べると、警官の数も減った気がする。

地下鉄はひと乗り約26円。激安の移動手段だ

(sight 6)

地下鉄はひと乗り5ペソ、約26円。激安の乗り物だ。コロナ禍前、日本には世界の人々がやってきた。インバウンドは流行語になった。日本にやってきた人々はこういった。「日本は食べ物が安い。居酒屋も手頃。でも、どうして電車運賃がこんに高いの?」。ひと乗り約26円の地下鉄に乗っているメキシコシティの人も、きっと日本でそう思ったはず。

(sight 7)

乗車距離に関係ない一律料金なので、改札機に切符を入れるとホームに入ることができる。切符は出てこない。しかしガリバルディー駅の改札機は半分以上が壊れていた。切符がなかなか入らない⋯⋯と思っていると、警備員が切符を入れるトレーを差し出してくれた。そこに置けばいいといことらしい。そしてメキシコ人らしいとぼけた笑顔。

スリの巣窟といわれる地下鉄に乗ってみたが……

(sight 8)

地下鉄に乗り込んだ。この日は空港へ向かった。PCR検査のオフィスで、接種時間や結果の受けとりなどを相談したかったのだ。日本に入国するときは、出国前72時間以内のPCR検査が必要だった。地下鉄をどこで乗り換える? 見あげるとドアに上部に路線図。駅名がイラスト化されていた。何回か乗ってわかったが、これはわかりやすい。日本の地下鉄の番号化より。

(sight 9)

これがスリの巣窟といわれるメキシコシティの地下鉄です。ポケットにはなにも入れず、バッグは体の前に⋯⋯ブログではそんなことが連綿と。でも、車内はこのゆるさ。ラッシュ時ではないからかもしれませんが。メキシコ人がまったく気を遣っていない様子。なんだか戸惑ってばかり⋯⋯。

ハデハデ下着は女性が好き? それとも男性の好み?

(sight 10)

「メキシコ人が身構える」というガリバルディ駅に戻ると、周辺はこのにぎわい。道路や歩道に商店が並び、メキシカンなメロディーがガンガン流れています。なかなかの活気。つい誘われて僕も路上市場歩き。この頃は治安のことなど⋯⋯いや、気にさせない空気に包まれてしまったというのが正解。その様子はYouTubeで公開される動画で確認を。

(sight 11)

昔から思うのだが、メキシコ人ってどうしてハデハデでセクシー下着が好きなんだろう⋯⋯と。これって女性の好み? それとも男からのプレゼント用? アメリカのエルパソからメキシコに向かう道の両側にも、まるで土産物屋のように女性の下着ショップが並んでいる。その前を歩く足どりはいつもぎこちなくなる。

(sight  12)

市場街を進んでいくと、食べ物屋台の密度が高くなってくる。5月5日通りまで出れば、きちんとしたレストランも多くなるが、ガリバルディ駅からそこまでは本当に庶民の街。豊かではないが、治安は悪くない。マニラを思い出す。子供たちに囲まれ、知らないうちに僕は腕時計を盗られていた。しかしそれを見ていた街の人がとり返してくれた。そんな街に思えてきた。

マリアッチに合わせて子供たちが踊る

(sight 13)

にぎわう市場から少し離れ、ガリバルディ広場に向かう。ガイドをつけないと危ないといわれる広場だが、そんな空気は漂ってこない。深夜になると、治安は一気に悪くなるのだろうか。ヤシの木の並木に沿って土産物屋やカフェが連なっている。ちょっとした観光地に向かうような気分になる。

(sight 14)

ガリバルディ広場に入り、最初に目に飛び込んできたのがこれ。マリアッチの音楽に合わせて子供たちが踊っていました。その光景はYouTubeで公開される動画で楽しんでください。マリアッチというのは、ギター、トランペット、バイオリンなどで構成される楽団。ガリバルディ広場では、演奏代を払うと、リクエストに応じてくれる。大がかりな「流し」っていったところだ。

(sight 15)

夕方になると、ガリバルディ広場には、マリアッチのメンバーが、ぽつり、ぽつりと集まってくる。皆、チャロと呼ばれる服装で、楽器をもっているからすぐわかる。でもすごく暇そう。夕方はまだ演奏を依頼する客も少ない。ただひたすら、声がかかるのを待つ。老人もかなりいる。後継者は不足している気がする。


【次号予告】3月4日は休載させていただきます。カンボジアにでかけるため。3月11日公開はメキシコシティを出発し、バンクーバー経由で日本に向かいます。

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ミャンマーの軍事クーデターから1年

「下川裕治のアジアチャンネル」でクーデター以来、週1回伝え続けた「ミャンマー速報」をnoteマガジンで1冊にまとめました。

「クーデターから1年。ミャンマー人たちの軍との闘い全記録」
https://note.com/shimokawa_note/m/m9dcecdc89604
売り上げの1部は日本のミャンマー人支援団体に寄付されます。

新しい構造をめざしています。