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【アニャ好きは必見】映画『ニュー・ミュータント』感想

謎の化物に襲撃され家族を殺されたダニーは、目が覚めるとベットの上で拘束されていた。彼女の前に現れた女性はセシリアと名乗り、ここはミュータントを隔離する施設でダニーの能力がコントロールできるまで治療をさせていると告げる。

自分と同じような境遇の若者達と知り合っていくダニーだったが、施設内で彼らが謎の幻覚を見る現象が発生しており、ダニー自身もこの施設に疑問を持ち始めるのだった…

X-MENシリーズの最新作『ニューミュータント』。X-MENになる前の若者たちを主役した本作は、これまのシリーズに出演したキャラクターは登場せずシリーズ初の青春ホラー作品となっている。

この『ニューミュータント』、本国では2020年の8月28日に公開されたが、日本では劇場公開されず、2021年3月31日に配信とソフト発売となっていた。今回、廉価版が発売されたので購入してみた。

劇場未公開という事からも分かるように、本作に対する評判は芳しくない。それを踏まえた上で鑑賞したが、自分も残念ながらハマれなかった。

今回の感想では自分がハマらなかった部分、ここが駄目だったと思う点を中心に述べている。この映画が好きな人は不快に感じるかもしれないため、読まないことをお勧めする。

世界最大級のレレビューサイト「Rotten Tomatoes」より。
左が批評家レビュー、右が一般層

※今回の記事は内容に触れているため、未見の方はご注意ください。また、映画が好きな人は不快に思われるかもしれませんのでご注意下さい。

2020年製作/94分/アメリカ

【ダイヤの原石のような作品。着想、アイデアは素晴らしい】

X-MENシリーズ初のホラー作品として製作された本作。製作側は「ホラーの帝王」スティーブン・キングと、80年代を代表する監督ジョン・ヒューズの作風を合わせたような作品をイメージしていたらしい。

『IT』と『ブレックファスト・クラブ』を掛け合わせ作品、これだけ聞くと凄く面白そうな作品に感じることだろう。実際、前情報が流れてきてた時点では映画界隈も盛り上がっていたことを覚えている。

『カッコーの巣の上で』、『エルム街の悪夢』も参考にしたとのこと。
ここら辺の作品を掛け合わせたとなれば期待も高くなる。

という事で鑑賞した訳だが、映画が始まってすぐに違和感が。照明はやけに明るく、セットも小綺麗で悪い意味でドラマっぽい。本作の特徴でもあるホラー演出も正直物足りない。人物描写も浅く感じられた。

監督をつとめたのが『きっと、星のせいじゃない』(2015)のジョシュ・ブーンということから、ティーンエイジャーをメインに製作されたのだろう。だが、本作からは悪い意味で子供向け作品のような印象を受けた。

例えば、舞台となっている施設も最初から怪しいので、実はミュータントを生物兵器として利用する企業でしたとネタ晴らしされても何の驚きもない(そもそも施設運営者が、1人しかいないという点で現実的じゃない)

能力を披露する場面でも全然ワクワクしない。

登場人物もほぼ6人という少人数、しかも施設内でしが話が展開しない。だからこそ、お互いの関係性をより掘り下げて描けたはずだ。風景が変わり映えしないからこそ、能力の見せ方にも工夫が欲しかった。舞台セットなどもそうなのだが、本作は全体的に作り込みが浅いのだ。

前述した通り、アイデア自体は凄く魅力的だし、キャストも悪くない。主役をネイティブアメリカンに据えたりLGBT描写を取り入れるなど「時代性」も反映させてるだけに、描き方次第ではシリーズ屈指の傑作になっていた可能性があると思う。それだけに非常に勿体ない作品という印象だけが残った。

ポスターのデザインは秀逸。

【アニャ・テイラー=ジョイを堪能するには充分な作品】

ただ、本作でお薦めしたい点もある。それがイリアナを演じたアニャ・テイラー=ジョイの魅力が最大限に推し出されていること。

他のキャラと違いアニャは映る度、服装や髪型が変わっている。
キャラ付けも明らかに他のキャラより濃い。

とにかく本作でのアニャの扱いは別格。他のキャラクターの能力の見せ場が少ないのに対し、アニャ演じるイリアナはテレポーテーションに剣を出す、おまけに普段手にしてるパペットはミニドラゴンになるなど見せ場も沢山。

キャラクターのバックボーンに関して、イリアナだけ明らかにトラウマ描写が協調されていたり、格好や髪型がコロコロ変わっていたりと他のキャラクターと比べても扱いの差は一目瞭然。

ツンデレ具合とかアスカと似てると思ったり

アニャ・テイラー=ジョイといえば、今やハリウッドを代表する若手女優の1人だ。本作の製作時点でも既に人気があったため、こうした待遇になったのだろう。アニャ好きの筆者としては、こうした姿が見れただけで満足だったが、正直、映画的なバランスは良いとは感じられなかった。

【作品の不評は公開延期と20世紀FOXの買収が原因?】

内容への評判の低さだけでなく、映画としての興行収入も赤字で名実ともに「失敗作」となってしまった本作。ではなぜ失敗してしまったのだろうか?
その原因の一つとして公開までのゴタゴタがあったことが挙げられる。

実は『ニューミュータント』は公開までに5回も延期している。『X-MEN』シリーズとの整合性をとるためであったり、コロナウイルスによる映画館の閉鎖、ディズニーによる20世紀FOXの買収など様々な理由が重なっている。

こうした延期に左右されたことに加え、スタジオ側からも作風に関して何度か横やりがあったことから、ジョシュ・ブーン監督の製作に対するモチベーションが下がったという報道もされていた。本来は行う予定だった追加撮影も行わなかったという話もあるため、そのことが本作の作り込みの浅さに繋がったのかもしれない。

【続編の予定は?今後のX-MENシリーズは?】

本来『ニューミュータント』は3部作として予定されていたらしい。だが、ディズニーの買収によって20世紀フォックスが製作していた映画X-MENシリーズの打ち切りが決まっている(MCUでは現在、MCU版『X-MEN』の製作が進んでいるという。)
また、作品評価&興行収入が芳しくないことから続編が製作される可能性は限りなく低いと言えるだろう。

ただ、『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』では、20世紀フォックス版のX-MENキャラクターが登場するとも言われており、マルチバースによって「何でもあり」が可能となった今、もしかしたら今後、『ニューミュータント』のキャラクターが何らかの形で登場する…なんてこともあるかもしれない。

下記はアニャが出演している映画の記事。どちらの作品もお薦めです!


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