【秋に観たくなる映画『転々』三木聡監督の名作】

季節に合わせて、無性に観たくなる映画がある。
映画好きの方ならそんな作品が、一つや二つはあるのではないだろうか。
ちなみに筆者は、夏は『図鑑に乗っていない虫』、冬は『ぼくのエリ 200歳の少女が、それだったりする。

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そして、ちょうど今の時期、秋に無性に観たくなる映画があるので、勝手ながらここで紹介しようと思う。
その作品は『転々』
監督は、TVドラマ『時効警察』シリーズで有名な三木聡
2007年に公開された作品で、借金を抱えた青年が借金取りの男と、借金の肩代わりに東京中を散歩するという一風変わったあらすじだ。ここでは、『転々』の魅力を3つに分けて語りたいと思う。

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【三木聡監督の癖になる奇妙な演出が最高】

三木聡監督といえば、シュールな演出と登場人物同士の奇妙な掛け合いが、やはり魅力的。今年12年ぶりに復活した時効警察』をはじめ、上野樹里主演の『亀は意外と早く泳ぐ』(2005年)、伊勢谷友介、松尾スズキ、出演の『図鑑に載ってない虫』(2007年)など、どの作品もシュールで謎な世界観、おかしな登場人物達で成り立っている事が共通項として挙げられる。
本作は、オダギリジョーと三浦友和という男2人が東京中を散歩するのだが、そもそも散歩をすることになった経緯が奇妙だし、2人が散歩中に出会う人々も皆一癖ありだし(街中にいそうでいなさそうな絶妙な感じが良い)、そのシチュエーションも顔がにやけてしまうような事ばかりだ。

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三木聡監督の作風はハマる・ハマらないがきっかり分かれるタイプなので、人は選ぶだろう。ちなみに筆者は、漫画で言えば、『セクシーコマンドー外伝!!すごいよマサルさん』、『ピューと吹く!ジャガー』のうすた京介先生の作品が好きな人は三木聡作品も好きだと思っていたりする。
三木聡作品が好きな人なら本作は絶対チェックするべきだろうし(既に観てる人、多数だろうけど)、今回の『時効警察はじめました』などで、三木聡作品に触れて興味を持ってる人は是非とも観てほしい。

【豪華キャスト目白押し、あのドラマのキャラもゲスト出演!】

主演がオダギリジョー×三浦友和という豪華な組み合わせに、脇を固める俳優陣も岩松了、ふせえり、松重豊という、いつもの面子に加え、小泉今日子、ブレイク前の吉高由里子も出演していて、とても豪華。

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そして、三木作品と言えば、豪華キャストを変なチョイ役で使うところも魅力の一つなのだが、その演出は今作でもいかんなく発揮されている。
特に注目なのは、石原良純。彼が出てくるシーンは、その唐突さもさることながら、絶妙にハマっていて、インパクトは充分。岸部一徳の使い方(というか、いじり方)もハマっていてクスリとさせられる。

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そして、時効警察ファンにとっては何とも嬉しいサプライズゲストも出演しているので、もしこれを読んでいて、まだ本作を観ていない時効警察ファンがいたら、今すぐにでもチェックするべきだ!

【明るさの裏に隠された切なさが胸を静かにしめつける】

三木聡作品は基本、全部好きな筆者だが、今作を特にお薦めするのは、他の三木聡作品に比べ、切なさ度合いが高いから。
今作は、基本は明るい雰囲気のロードムービーだが、実は二人の男は悲しみを背負っている。物語が進むにつれて徐々にそれが分かってくるわけだが、本作の良いところはそれをあくまで淡々と語るところ。
だからこそ、胸をしめつけられ、それが木枯らしの吹く秋の季節と絶妙にマッチして、観る者の心により残る作品になっている。
散歩に隠された意味も、2人が散歩することになった背景も、観終わってから改めて考えると何とも切ない。

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『転々』、今回筆者も見返して観たが、改めて名作だと再認識した。
未見の方は、秋の夜長の一本に是非チェックしてみてはいかがだろう。

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