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人生に疲れた時にこそ観て欲しい『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』

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概要:うつ病を患い、2年間失職中のベルトラン。家族や周囲の人から冷遇されていた彼は、地元のスイミングプールで、男子シンクロナイズドスイミングのメンバー募集の情報を目にする。何かに惹かれてチームに入ったベルトランだったが、そこは家庭内不和を抱えたり、会社が経営難だったり、ベルトランと同じく何かしらの問題を抱える男性達の集まりであった。練習を重ねる内に、お互いの悩みを吐露し、打ち解けていくメンバー達。
そんなある日、「世界選手権」の情報を目にした彼等はそれに応募するのだが…
監督:ジル・ルルーシュ 製作年:2018年 製作国:フランス

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人生に疲れたおじさん達がシンクロナイズドスイミングで世界に挑む…
シンクロナイズドスイミングをする男性の映画だと矢口史靖監督の『ウォーターボーイズ』(2001年)があるが、さしずめ本作は『ウォーターおっさんズ』といったところだろうか。
実はこの物語は、ノルウェーに実在するシンクロナイズドスイミングのチームが題材となっていて、本国フランスでは400万人を動員した大ヒット作品でもある。
ここでは本作の感想とポイントをまとめたので、興味ある方は読んでみて欲しい。

【おじさん達が巻き起こす物語に笑いつつも感動させられる】

フランス映画と聞くと、あの独特のテンポやアンニュイな雰囲気を思い浮かべる人もいるかもしれないが、この作品はエンターテインメントに振り切っていると、最初に述べておきたい。
例えるなら『最強のふたり』や『エール!』、『セラヴィ』などの方向性の作風と言えば、ニュアンスは伝わるだろうか。
脚本のおふざけ具合はなかなかのもので、中盤の鬼教官が登場する辺りから俄然コメディ色が強くなってくる。人によっては眉をひそめそうなブッラクジョークもあるが、どちらかというと馬鹿馬鹿しいギャグが多いという印象だった。チーム用の水着を手に入れる下りの馬鹿馬鹿しさは最早コントのようで、観ててひたすら楽しい
ただ、ふざけながらも、人生、上手くいかないおじさん達が、誇りを取り戻すという物語の軸はしっかりしているので、笑いながらも、最後は胸をじんわりと熱くさせるような感動が待っている。

【人生に疲れた人にこそ見て欲しい…フランスも日本も悩みは変わらない】

本作の登場人物達は、うつ病で失職していたり、家庭内不和を抱えていたり、事業に上手くいっていなかったりと皆、何かしら問題を抱えている。
そして、その悩みは決してフランス独自のものではなく、日本でも通じるものだ。だからこそ筆者は、この作品は人生に疲れてしまった人に観て欲しいと思う。
劇中の台詞を引用するなら「苦しいのはお前だけじゃない」。周囲から冷たい眼差しをむけられながらも、めげずに前を向いて生きている彼らの姿は、何かしら心に刺さるものがあるのではなかろうか。

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【フランスを代表する名優揃い!セザール賞では最多10部門ノミネートの快挙!】

フランスを代表する名優が勢ぞろいしてるのも本作の魅力の一つとして挙げられる。
主演のマチュー・アマリックは、『潜水服は蝶の夢を見る』(2007年)でセザール賞男優賞を獲得、『ミュンヘン』(2005年)、『007慰めの報酬』(2008年)などアメリカ映画にも多数出演し、フランスだけでなく世界的にも知られている。
『ザ・ビーチ』(2000年)でディカプリオと共演し自身も監督として高く評価されるギヨーム・カネや、『ありふれた事件』(92年)でカンヌ国際映画祭批評家賞を受賞したブノワ・ボールヴールドなど、フランスだけでなく世界的にも有名な俳優が名を連ねている。
本作も2019年セザール賞で10部門ノミネート、助演男優賞受賞という快挙を成し遂げている。

本作は、存分に笑えるエンターテインメントだが、その中には人生にうまくいかない人々の哀愁が込められおり、だからこそ、ただ楽しいだけではなく心に何かを残す素晴らしい作品だ。
『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』は7月12日より新宿ピカデリー、渋谷ヒューマントラストほかにて公開中。
何かしらの興味を持っている人は観て損はないと思う。

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