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【ギリシャの奇妙な波】映画『アッテンバーグ』感想

父と2人で暮らす23歳のマリーナ。
男性経験のないマリーナは親友のベラとキスの練習をしたりセックスの相談をしている。そんなある日、マリーナはレストランで偶然知り合った男性に実践を試みようとする。一方、マリーナの父は不治の病に侵されていて…

『アッテンバーグ』は2010年製作のギリシャ映画だ。
ある女性の日常を描いた作品で『ロブスター』、『女王陛下のお気に入り』等の作品で知られるヨルゴス・ランティモスが製作、出演をしている。

しかも本作で主演をつとめたアリアン・ラベドとランティモスはこの作品で出会って結婚している。そういう意味では記念碑的な作品であるともいえ。

ギリシャ映画というと一筋縄でいかないというか奇妙な作品が多いという印象だが、本作も2000年代後半から始まったギリシャの奇妙な波(Greek Weird Wave)と呼ばれるムーブメントを代表する作品の1本となっている。

ギリシャ映画一覧。どれも一筋縄ではいかないという感じ…

監督は『ストロングマン』のコンビの1人、アティナ・ラヒル・ツァンガリ。あの映画も船の上で男たちが謎の点数を付けあうという奇妙な物語だったが本作も奇妙な印象を抱かせる作品だった。

2010年製作/96分/ギリシャ

ポスターや画像だと女性2人が主人公の作品かと思うが、映画はマリーナ(ポスター右の女性)の日常を描いた作品である。

父親と2人で暮らすマリーナの住む世界はとても小さい。
朝起きて父を病院に送り親友のベラと過ごし一日を終える。会話から恐らく地元から出たことがないようにも思える。

23歳のマリーナはこれまでに男性経験がないのがコンプレックス。
親友のベラとディープキスの練習をしたりセックスの相談をしたりする。

全編、淡々としていてシュール。
ギリシャ映画って白が多いというか風景が殺風景に見えるのだが本作も例に洩れず。そこに対比のように映される肉体描写が生々しい。

マリーナと親友のベラとの2人だけの遊びも印象的。
特に冒頭のディープキスの場面のインパクトは強烈。主演のアリアン・ラベドは本作が長編デビュー作なのだが、体を張った素晴らしい演技をしておりヴェネチア国際映画祭では最優秀女優賞を受賞している。

作風自体は奇妙だがテーマ自体は真摯で王道。
テーマは「性と死」。死にゆく父と性に目覚めていく娘。
父親の病床とマリーナの行為中のベットが交互に映されるカットが印象的だ。性はそのまま生という解釈とも捉えることができる。

父と娘の関係も、父の死によってマリーナは親離れをすることになる。映画はマリーナの「独り立ち」を描いているとも言える。

面白いかと言われると何とも言えないが何か心に引っ掛かりを残す。ギリシャ映画って本当一筋縄じゃないかない作品が多い。

※JAIHOで鑑賞


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