見出し画像

東京国際映画祭2021『べネシアフレニア』感想

イタリアのヴェネツィアを訪れた5人の男女。メンバーの1人、クラウディアにとっては独身最後の旅行ということもあって、はしゃぐ5人だったが、ボートの中でピエロに仮装した男に絡まれる。その後、目的地に着いた5人は楽しいひと時を過ごすのだが、気付いたらメンバーの1人がいなくなっており、そこから彼等を恐怖が襲う。

東京国際映画祭の6本目は『べネシアフレニア』。『気狂いピエロの決闘』(2012)、『スガラムルディの魔女』(2014)等の作品で知られるスペインの鬼才、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の最新作ということで、こちらも今回の映画祭で楽しみにしていた作品。ポスターの雰囲気がダークなゴシック調(本編の雰囲気とは少し違う)

画像1

監督曰くジャッロ映画にオマージュを捧げたという本作(ジャッロ映画とは、1970年代にイタリアで流行したスリラー映画の作品群。『サスペリア』(1977)、『知りすぎた少女』(1963)等が挙げられる)

スペインらしい色使いのオープニングがインパクト大。1人1人狙われていくが、ホラー映画の定型らしく、主人公達がお馬鹿な若者なのでそこまでの悲壮感はない。

べネシアフレニア② (1)

売店の仮面に扮して観光客を殺したり、衆人環視の中で白昼堂々と殺人を犯したりと、おふざけとシリアスが入り混じったバランス感覚がイグレシア監督らしい。「そんな事できる訳ないだろ」とツッコミを入れつつも、もしかしたら…と可能性が頭をかすめる。展開も王道をズレて予想の斜め上をいくので飽きさせない。

この作品の特徴が「オーバーツーリズム」という社会問題を題材にしてる点。オーバーツーリズムとは、観光客の大幅な増加によって観光地が過度に混雑し、地域住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼす状態のことを指す言葉。(日本だと京都でこの問題が深刻化している)

この問題をそこまで意識したことがなかったので、映画を観てその深刻さに驚かされた(下記の記事を読んでも混雑さが伺えるし、劇中のような抗議活動も本当に行われている)

映画はこうした社会問題を発端とした悲劇を描いており、ただのホラー映画としてだけでないメッセージ性も感じ取れる。こうした題材の取り入れ方も「今の映画」という感じだ。

Amazonスタジオが製作に入っていたので(配給はソニーピクチャーズ)、恐らく何かしらの形で一般公開はされると思うが…興味あった人は是非チェックして見て欲しい。


この記事が参加している募集

映画感想文

読んでいただきありがとうございます。 参考になりましたら、「良いね」して頂けると励みになります。