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アメイジング・スパイダーマンは何故打ち切られたのか?

2022年1月7日に公開された『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』。全世界で大ヒットを記録し話題になっている本作。既に観たという人も多いのでないだろうか。

筆者はまだ観ていない、というより観れていない。
というのも今回はこれまでの実写版スパイダーマンシリーズのヴィラン達が登場するという話を知って、これまでのスパイダーマンシリーズを観返している最中なのだ。

その中で2012年から公開された『アメイジング・スパイダーマン』シリーズを観返したのだけど、改めて2作目で終わったことを残念に思うシリーズだった。

観た人の多くが思うであろう「え!これで終ってしまうの?」という中途半端な幕切れ。伏線も投げっぱなしである。本来なら2作目以降も製作される予定だったのに、打ち切られてしまった不遇のシリーズでもある。

『アメイジング・スパイダーマン』2012年製作/136分/G/アメリカ
『アメイジング・スパイダーマン2』2014年製作/143分/G/アメリカ

なぜ『アメイジング・スパイダーマン』シリーズは打ち切られたのか?この疑問、気にはなるけど、詳しく知らない人も多いのではないのだろうか?配給のソニーも打ち切りの原因を明かした訳ではないが、ネット上で語られてる有力と思われる原因を調べてみた。

また、もし『アメイジング・スパイダーマン』が打ち切られていなかったら、どんな物語が展開していたのか?そちらもまとめてみたので、興味ある方は読んで欲しい。

【原因①:興行収入が芳しくなかった】

原因の一つと言われているのが、シリーズの興行収入が期待通りではなかったこと。スパイダーマンといえば、皆ご存知の超巨大コンテンツだ。では『アメイジング・スパイダーマン』はコケてしまったのか?

『アメイジング・スパイダーマン』とサム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズ、アメスパ後のMCUに参入してからの『スパイダーマン ホームカミング』と『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』の2作品とを含めたスパイダーマンシリーズ7作品の北米での興行収入をランク付けした表を見てほしい。

【スパイダーマンの北米興行収入】
1位:スパイダーマン・・・4億370万ドル
2位:スパイダーマン ファー・フロム・ホーム・・・3億9053万ドル
3位:スパイダーマン2・・・3億7350万ドル
4位:スパイダーマン3・・・3億3653万ドル
5位:スパイダーマン ホームカミング・・・3億3420万ドル
6位:アメイジン・グスパイダーマン・・・2億6203万ドル
7位:アメイジング・スパイダーマン2・・・約2億2000万ドル

このランキングを見る限り「スパイダーマン」を題材にしたシリーズの中でも、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズが一番興行が低いことが分かる。

次に日本での興行収入も載せておきたい。アメコミヒーロー映画の中でもスパイダーマンの日本の人気は特に高い。

【スパイダーマンの日本興行収入】
1位:スパイダーマン・・・75億円
2位:スパイダーマン3・・・71.2億円
3位:スパイダーマン2・・・67億円
4位:アメイジング・スパイダーマン・・・31.6億円
5位:アメイジング・スパイダーマン2・・・31.4億円

6位:スパイダーマン ファー・フロム・ホーム・・・30.6億円
7位:スパイダーマン ホームカミング・・・28.0億円

日本のランキングでは『アメイジング・スパイダーマン』シリーズは、MCU参入後のスパイダーマンシリーズよりは興行が良い。

ただし日本は近年、洋画のヒット作が出ていなかったり、マーベル映画の世界的な盛り上がりに比べ、日本ではそこまで人気がないという理由が挙げられるため単純な比較はできない。

むしろ注目すべきはサム・ライミ版からの興行の減り具合だろう。
サム・ライミのスパイダーマン3部作に比べ、興行収入が半減しているのは衝撃的だ。では、世界的な興行はどうだろう。

【スパイダーマンの全世界興行収入】
1位:スパイダーマン ファー・フロム・ホーム・・・11億3192万ドル
2位:スパイダーマン3・・・8億9087万ドル
3位:スパイダーマン ホームカミング・・・8億8016万ドル
4位:スパイダーマン・・・8億2170万ドル
5位:スパイダーマン2・・・7億8376万ドル
6位:アメイジング・スパイダーマン・・・7億5221万ドル
7位:アメイジング・スパイダーマン2・・・7億898万ドル

数字を観る限りでは興行収入自体は悪くはないが、北米に続き世界でも『アメイジング・スパイダーマン』シリーズが一番興行が低い。こうした興収の低さが打ち切りの要因の一つになったのかもしれない。

【原因②:サム・ライミ版ほどではなかった作品の評価】

次に原因として考えられるのが、作品の評価。
『アメイジング・スパイダーマン』はサム・ライミ版『スパイダーマン』に比べて世間の評価が芳しくない。

ここでは比較として世界最大級の映画レビューサイト「ロッテン・トマト」のレビューを挙げておきたい。見方としては画像のトマトマークが批評家レビュー、ポップコーンマークが一般人レビューだ。

『スパイダーマン』批評家レビュー90% 一般人レビュー67%
『スパイダーマン2』批評家レビュー93% 一般人レビュー82%

サム・ライミ版スパイダーマンは1作目の一般人レビューこそ振るわないものの、批評家からはどちらも高評価だし、2作目では一般人レビューも高いことが分かるだろう。

では、次に『アメイジング・スパイダーマン』シリーズはどうだろうか?

『アメイジング・スパイダーマン』批評家レビュー72% 一般人レビュー77%
『アメイジング・スパイダーマン2』批評家レビュー52% 一般人レビュー64%

シリーズどちらもパッとしないのが分かるだろう。
特に2作目の批評家レビューに関してはトマトが腐っている。なぜここまで低評価になったのか?その原因に関して、1つはサム・ライミ版と異なるシリアスな作風が原因と考えられる。

『アメイジング・スパイダーマン』が製作された年代は、ちょうどDC作品のクリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』シリーズが大ヒットした頃でアメコミ作品もシリアスな作風のものを製作される風潮があった。『アメイジング~』もその影響を少なからず受けてるのだろう。他の『スパイダーマン』の実写映画シリーズと比べても雰囲気は重めだ。

今回見直して、明るくお喋りなスパイダーとシリアスな作風は噛み合わせが悪いと改めて思った。マーク・ウェブ監督の演出自体にも個人的に引っかかるところがあった。

興行での失敗と作品の低評価、打ち切りの背景にはこの2つの要因があったと思われる。そして、次に紹介する理由が打ち切りを決定させたのではないだろうか。

【原因③:ソニーとマーベルの提携が決まった】

3つめの原因はソニーとマーベルの提携である。個人的には①と②の原因があって、この原因が決定打になったのではないかと推測している。

『スパイダーマン』は版権が複雑なことでも知られているが、映画化権利を所有していたのがソニー・ピクチャーズで、漫画の版権を所有していたのがマーベルだった。

マーベルは、マーベル・シネマティック・ユニバースを推し進めていたが、ソニーも本来はスパイダーマンに登場するキャラクターを使ったエクステンデッド・ユニバースの構想があったため、MCU参入はあり得ないと思われていた。

だが、上記に挙げた原因で『アメイジング~』シリーズに暗雲が立ち込めたということ。加えて『アイアンマン』やアベンジャーズシリーズなどが大ヒットしたことを受け、それならば、とMCUに参入することを決めたのではないだろうか。

【その他の理由】

上記に挙げた理由に比べるとあくまで推測程度になるが挙げられている理由もまとめたので確認して欲しい。

【アンドリュー・ガーフィールドによるドタキャン騒動】

『アメイジング・スパイダーマン』で主演をつとめたアンドリュー・ガーフィールドも続編には乗り気だったよう。しかし、そんな彼のドタキャン騒動がシリーズ打ち切りの原因の一つではないのかと推測されている。

舞台は2014年、ソニーが主催の式典ディナーにアンドリュー・ガーフィールドも出席する予定だったとのこと。本来ならこの式典で『アメイジング・スパイダーマン3』が発表される計画だったらしい。

何があったのか…

しかし、ガーフィールドは直前にこれをキャンセル。理由については不明だが、この事がキッカケで関係者に悪い印象を与えたと言われている。さすがにこれだけのことでシリーズの打ち切りを決定したとは思わないけど、こうした事件も打ち切りを後押しした理由の一つかもしれない。

【アンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンの破局】

アンドリュー・ガーフィールドとヒロインのグウェンを演じたエマ・ストーンは本シリーズでの共演がきっかけで一時期、恋人関係になっている。その後、二人は破局しているが、それがキッカケでシリーズが打ち切りになったのではないかとの推測もあった。

だが、アメイジング・スパイダーマン3の中止が決定されたのは、2015年2月だが、2人が交際していたのは2015年10月頃ということで、打ち切りの発表後に破局していたことになる。ということで、この推測に関しては恐らく直接的な関係はないだろう。

【もし打ち切られていなければ、どんな展開が待っていたか?】

もし『アメイジング~』が打ち切られなかったら、どんな続編が作られていたのか?『アメイジング・スパイダーマン2』のラストを見ても、今後様々なヴィランを登場させる予定だったことは明らかだろう。

噂では、ヴィランを主役にしたスピンオフ作品や『スパイダーマン ホームカミング』に登場するヴァルチャーも登場すると予定もあったよう。こうした構想はその後の『ヴェノム』シリーズなどに引き継がれているようだ。

『ヴェノム』2018年製作/112分/PG12/アメリカ
『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』2021年製作/98分/G/アメリカ

【サム・ライミ版『スパイダーマン』にも続編の構想があった!】

ちなみにとして撮られたサム・ライミ版スパイダーマンにも続編の構想があったことが明らかになっている。特に興味深かったのは、『プラダを着た悪魔』(2006年)で一躍有名となったアン・ハサウェイが登場する予定があったとの構想だ。

何でも『スパイダーマン4』には、『スパイダーマン ホームカミング』にも登場したバルチャーの相棒となる、“バルトレス”として登場する予定だったとのこと。脚本まで執筆されていたものの、サム・ライミ監督がプロジェクトを離脱したことで幻と消えてしまった。

その後、アン・ハサウェイはマーベルのライバルでもあるDC映画の『ダークナイト ライジング』(2012)に“キャットウーマン”として登場することになるというのも皮肉な話である。

【まとめ】

ということでいかがだっただろうか。『アメイジング~』シリーズが途中で打ち切りになってしまったのは残念だが、その結果、MCU加入したスパイダーマンシリーズが製作されていると思うと何ともいえない気分になる。

『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』にも過去シリーズのヴィラン達が登場すると言われているが、これまでのシリーズがどのように関わってくるのかとても楽しみだ。

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