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【負け犬達がヒーローに変わる時】『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』【ネタバレ感想】

減刑と引き換えに生存不可能のミッションに挑む悪人たちの姿を描いたアクション映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』

『スーパー!』(2011)や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで知られるジェームズ・ガンが監督をつとめており、日本では8月13日から公開されている。実はこの作品、筆者は字幕で2回、吹替で1回と計3回鑑賞している。

それぐらいハマってしまったのだ。
ということで、今回は本作の感想を挙げていきたい。

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ちなみに、今回の記事は完全なネタバレ感想となっているため、本作をまだ鑑賞されてない方は観てから読んでいただく方がお薦めしたい

(本作のネタバレ無しの紹介記事を下記に挙げてるので、本作に興味のある方はこちらを読んでいただけると嬉しい)

ワーナーが好き勝手やっていいよと許可をしただけあって、ジェームズ・ガン監督の作風が全開となった本作。まず、冒頭の展開からして唖然とさせられる。

ジェームズ・ガンというと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で一躍有名になったため、勘違いされやすいが、本来は悪趣味とゴア描写とPOPさが入り混じった作風が特徴的な監督。

今作は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と同じヒーロー映画という体裁をとりながらも、えげつないブラックジョークやゴア描写が挟まれている。

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印象的なのが、ブラッドスポートとピースメーカーが、どちらがユニークな殺し方をできるか競うという場面。人をオモチャのように殺すこと自体、不謹慎極まりないが、その後のオチもかなりブラック。

この作品、主要キャラ含め命の扱いが非常に軽いのが素晴らしい。本当に人がゴミのように死んでいく。加えてゴア描写もしっかり描かれるため、筆者のようにハマる人には最高の作品だろうが、人を選ぶ作品であることは間違いない。

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では、本作はただ不謹慎でグロいだけの作品かというとそうではない。これ以降は、筆者が本作を好きな理由を3つ書いていきたい。

1つ目は、ワーナー&DCでしか作れないヒーロー映画であるということ

DCと対をなすヒーロー映画といえば、MARVEL作品が挙げられるだろう。だが、マーベルヒーローは人をオモチャのようには殺さないし、基本は死なないという暗黙の了解がある。本作とはあらゆる意味で真逆で正統派なヒーロー達だ。

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対して、本作は、主人公たちがヴィランということで、躊躇なく人を殺すし&いつ死ぬかも分からない。個人的な好みであるが、こうしたブラックさと緊張感があるヒーローの方が筆者は好きなのだ。

また、こうしたえげつない描写はディズニー&MARVEL作品では絶対にできない。ディズニー&MARVELでは絶対にできないことを、ワーナー&DCがでしてるという点も面白い。本作はDC作品の強みだけではなく、今後のDCの方向性も改めて提示したようにすら思える。

2つ目は、素晴らしい脚本

本作はヒーロー映画を軸に、戦争映画、怪獣映画などあらゆる要素が破綻なく組み合わされている。それだけでも凄いが、そこに政治風刺や社会的メッセージも入れ込んでる点が、ただのおバカ映画に収まってない理由である。

物語後半で、今回の事態のそもそもの原因はアメリカ合衆国だと判明する。この展開自体が強烈な自国批判であるが、こうした政治風刺が、様々な場面に差し込まれている。最も印象的だったのが、スーサイドスクワッドのメンバーが横一列に並んで歩いてる場面。

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この場面、映画の冒頭と後半に同じ構図の場面があり対比となっている。同じスーサイドスクワッドでも、冒頭のメンバーは文字通り自殺部隊=使い捨て要員、後半のメンバーこそ本隊ということが分かる場面なのだが、注目すべきはその背景。冒頭の方で背景になっているのは、画面いっぱいに映し出されるアメリカ合衆国の国旗だ。

まるでアメリカを背負っているかのような彼等が冒頭10分もしないうちにあっさり全滅する…こうした構図もアメリカを痛烈に茶化しているようで面白い。こうした毒を挟ませながら、きちんとエンターテイメントとして綺麗に仕上げてくるあたりに、ガン監督の才能が感じられるのである。

3つ目は、負け犬がヒーローに変わる瞬間が描かれていること

ジェームズ・ガン監督作品に共通しているのが、ハチャメチャな物語の中に挟み込まれる熱い展開。本作では物語終盤、任務終了を告げられたスーサイドスクワッドのメンバーがアマンダに反旗を翻す場面、この場面にこそガン監督の真骨頂がある。

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本作の主人公達はヴィラン。人を遠慮なく殺すし、私利私欲のために動く人間だ。だが彼等の中にも譲れない意地がある。だからこそ、自分が死ぬかもしれないと知ってても戦場に向かうのだ。

思えば『スーパー!』から『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズまで、ジェームズ・ガンは社会のはみ出し者がヒーローに変わる瞬間の映画を撮り続けてきた。

して本作も負け犬達がヒーローに変わる映画だ。この瞬間にこそジェームズ・ガン作品の本質があると思うし、最高のカタルシスがある。

スーサイドスクワッド9 (1)

そして、ヒーローに変わるのは「社会の底辺にいる嫌われ者集団」。そんな彼等が世界を救うという構図自体が皮肉が効いているし、最高に痛快なのだ。

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