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【君にささげるたった一つのおとぎ話】『落下の王国』

この度、日本テレビの「映画天国」で、まさかの12月8日の(月曜日の深夜)1:59~3:59にて放送が決まった!!!

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なぜ私がここまで歓喜しているのかというと、実はこの作品、DVDは廃盤。配信もない(2020年12月6日時点)という状態なのだ。なのでテレビで見れるという機会は超貴重な機会なのだ!!

(販売してることには販売してるのだが、とんでもないプレミア価格がついている…)

ちなみに今現在、『落下の王国』を観るとしたら、レンタル店をくまなく探すか、TSUTAYAディスカスでレンタルするという手があるぞ。

【落下の王国とはどんな作品か?!】

では『落下の王国』とはどんな作品なのか?
まずは何も言わずこれらのビジュアルを観て欲しい。

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凄くないですか?まるで絵画のような凄まじいビジュアルの数々…これ、イメージビジュアルでも、この為に撮影したものでもなく、実際に劇中で流れるシーンなんです。しかもCGほぼ無使用。
そう、『落下の王国』とは圧倒的な映像美に彩られた作品なんです。

では、どんな物語なのかというとあらすじは↓

撮影中の事故で脚を負傷し、入院することになったロイ。スタントマンである彼は恋人を主演俳優に奪われて人生に絶望していた。ある日、ロイは病院内で無垢な少女アレクサンドリアと知り合いになる。ロイは、自殺用の薬を取ってきてもらうために、アレクサンドリアに壮大な物語を語り始める。それは、暴君に立ち向かう5人の勇者たちの物語だった……。

『千夜一夜物語』に通じる「物語内物語」の構図の本作を一言で表すなら、『壮大な映像美のおとぎ話』といったところだろう。
本作を手掛けたのはターセム・シン監督。これまでに長編デビュー作の『セル』(2001年)をはじめ、『インモータルズ 神々の戦い』(2011年)、『白雪姫と鏡の女王』(2012年)などがある。

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ターセム・シン監督の作品の特徴は、異様なまでのビジュアルの美麗さ。
映像美が素晴らしい映画というのは数多くあるが、ターセム・シン監督の美しさは、自然に撮られた美しさでも、さりげない美しさでもなく、計算され作り込まれた圧巻のビジュアル!!まるで美術書の見開きのようなビジュアルは、どこを切り取っても絵画のような美しさがある。
本作は登場人物達の衣装の絢爛さも魅力の一つなのだが、衣装を担当しているのは、『ドラキュラ』(1992年)でアカデミー賞衣装デザイン賞受賞している石岡瑛子。2012年にお亡くなりになっているが、それまではターセム監督の作品でも常連であった。個人的には本作の登場人物達の衣装はファイナルファンタジーの天野喜孝さんのビジュアルを連想してしまう。

FFEXF_天野喜孝

本作の主演は、シングルマン』(2009年)、『ホビット 竜に奪われた王国』(2013年)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)などのリーペイス。また、提供者にスパイク・ジョーンズ、デヴィッド・フィンチャーなど、ビジュアルに定評のある名監督が名を連ねてるのも注目すべき点だろう。

【構想約20年!撮影場所24か国以上!製作エピソードが凄まじい…】

この作品、その製作エピソードも凄まじい。まず作品の構想期間は26年という膨大な月日が費やされている。なおかつ撮影場所は24か国を超えるという壮大なスケールである。しかし、これほどのスケールにもかかわらず、資金集めは困難を極め大手会社の支援もないまま製作が続けられたというのだから驚きである。

本作は、ターセム監督の完全オリジナル脚本というわけではなく、ブルガリアの映画『Yo Ho Ho』(1981年)に着想を得て企画されている。『Yo Ho Ho』がどんな作品が知らなかったので調べてみたところ、病院で仲良くなった10歳の少年と対麻痺の俳優の話であり、俳優が少年に海賊物語を話すところや、俳優が人生に絶望しており、自身の自殺のために少年に薬の瓶を盗ませるよう画策している点も本作と同じである。
試しに『Yo Ho Ho』の劇中の場面と、『落下の王国』の場面を並べて観たが似ている…(上が『Yo Ho Ho』、下が『落下の王国』)『Yo Ho Ho』も観てみたい…

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本作では実に15か所以上の世界遺産を含むなど、圧倒的なスケールの撮影がされている訳だが、資金繰りに困っていたのに、どうやって撮影していたのか?
実はターセム監督が、CMやミュージックビデオの撮影で世界中の様々な場所を訪れた際、仕事が終わった後、『落下の王国』のスタッフやキャストを呼び寄せてそのまま現地で撮影を行っていたらしい。
ターセム監督にとって本作はライフワークのような位置付けの作品だったらしく、そのような類のみない方法で、4年以上かけて少しずつ本作を撮影していったとのことだ。

【既に観た人も読んでほしい!4つの製作裏エピソードが面白い】

本作は製作の舞台裏エピソードもかなり面白いので、是非ぜひ読んでみてほしい。既に観た人もこれを読むと、また本作に対して別の視点で観たくなることだろう。(内容に深く触れているので、未見の方は注意してください)

【①本作の製作は失恋から始まった!】

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本作を構想から製作に実行させたのは、ターセム監督の失恋。ターセム監督が生涯を共にするつもりだった恋人が自分の元を離れていったことだった。この出来事に酷く落ち込んだターセム監督を見かねて、弟が本作の製作を提案したことがキッカケであるとのこと。劇中のルイもスタントの事故によって、恋人を奪われているが、監督の実体験とリンクさせている点が興味深い。

【②世界中を探して選ばれたのは名もなき少女】

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ターセム監督はアレクサンドリア役を探す為に、CM撮影などの仕事で世界各国を訪れる度に、現地の小学校で理想の少女がいないか探させていたとのこと。何年もかかってようやく見つけたのが、ルーマニアの少女だった。アレクサンドリア役を演じたカティンカ・アンタルーは、演技経験もなく、洗練された「子役」のような雰囲気でもない。しかし屈託のない表情と子供らしい存在感に惹かれたターセム監督によって見いだされたのだ。

③病院内での2人のやり取りはアドリブ!

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現実世界の病室内でのロイとアレクサンドリアのやり取りは、基本ラインだけが決められ、後はアドリブであった!更に、ターセム監督は少女が役になりきれるように、病院はセットではなく実在のモノを使い、アレクサンドリアの出演シーンはすべて順撮り。さらにロイを演じたリー・ペイスのことを本当に足を怪我して歩けなくなった人なんだと聞かせていた。しかも彼女だけではなく、現場にいるスタッフ全員がこのフィクションを共有することによって、完全に役に入りきれるようにしていた。

【④スタッフの給料は全て均一!】
世界各国で撮影したということで、製作費も莫大に掛かったであろう本作。しかし、本作に関わったスタッフのギャラはみんな均等だったらしい。当時、既にアカデミー賞受賞していた石岡瑛子もそうだったというのだから驚きだ。本作は映画愛に満ちた作品であるが、その裏にはこうしたスタッフたちの情熱があるのも胸熱だ。

ちなみに現在、東京都現代美術館で石岡瑛子さんの世界初となる大規模回顧展が2020年11月14日(土)~2021年2月14日(日)の間で開催されている。下に公式サイトのリンクを貼ってあるので、興味ある方は是非チェックして欲しい。筆者もいくつもりだが、展示の内容を写真で見るだけでも凄味が良く分かる。

【最後に:記事を書いてたら劇場で観たくなった…】

という訳でいかがだっただろうか?『落下の王国』、観てない人も既に観た人も、今回のTV放送は貴重な機会といえるので、是非ともチェックしてほしい。

そして、筆者だが、今回、この記事を書いていたら改めて本作を観たくなった。それもTVではなく劇場で。
というのも筆者も実は本作を劇場で観たことはなく、これまでにDVDで観たことしかない。基本、映画は劇場で観てこそだと思うが、本作の圧倒的なビジュアルは劇場の巨大スクリーンでこそ、映えるというもの。個人的には劇場で、それもIMAXで再上映して欲しい。

ちなみにリクエストの多い映画を映画館で上映するサービス「ドリパス」では、まだまだランキング外…

ちなみに今回の記事は下のCINEMORE様の記事をかなり参考にさせて頂きました!より詳しく書いてあるので興味ある方は是非!


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