【AIが生活に根付いた今だからこそ】映画『ザ・クリエイター 創造者』感想
かつて創作物の中で「人間」は憧れだった。
映画やアニメ、漫画、小説の中では動物やロボット、あらゆるものが人間に憧れていた。
だがそれも今や昔。この映画は「人間とAIは対等だ」と突きつける。
映画『ザ・クリエイター 創造者』は『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』、『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズが監督・脚本を手掛けた近未来SFアクションだ。
主演は『TENET テネット』のジョン・デビッド・ワシントン。共演に『GODZILLA ゴジラ』にも出演した渡辺謙、『エターナルズ』のジェンマ・チャンらが名を連ねる。
Chat GPTや画像生成AIなどAIが生活に根付いた今だからこそ身近に感じるテーマだった。
もしかしたら劇中の世界は絵空事ではなく現実と地続きかもしれない。
何年後、何十年後、AIと人間が対等になる未来も遠くないのかもしれない。
ただ、ここでのAIの描かれ方は人間そのもの。
迫害されるAIの姿は差別・迫害の歴史を思い出させる。映画を通じて浮き彫りになるのは「AIと人間の対立」というよりは「人の愚かさ」だと感じた。
劇中で描かれる未来描写もリアル志向ではなくレトロフューチャー。
何でも本作で描かれる未来はAppleではなくソニーのウォークマンが普及している未来ということで、どこかアナログ。
ギャレス監督はSTAR WARSが大好きとのことで、劇中に登場する数多くのガジェットやデザイン、物語の思想からもSF懐古主義への愛が感じられる。
そういう意味でスター・ウォーズはもちろん、ブレードランナーなどの往年のSF映画好きに特に観て欲しいとも思う。
近未来のガジェット、AI、機械だらけの世界だが、そこで描かれるのは登場人物たちの熱い思いや信念。
ギャレス監督は極限状態に置かれた状況でキャラクターの思いや絆を描くのが上手い。自分はこういうエモい演出こそギャレス・エドワーズ監督を好きな理由だったりする。
観終わってみるとギャレス監督は「AIによる神話の誕生」を描きたかったのかもしれない。
主人公をジョシュア待ち受ける運命も天国に辿り着くまでの試練のようでどこか神話の一節のよう。ラストはまさに新時代の幕開けだ。
ジョシュアを演じたジョン・デビッド・ワシントン、『テネット』といい良い存在感を放っていた。後、渡辺謙の存在感はさすが。安定感がある。
後、本作は音楽が良い。ハリウッド大作でお馴染みのハンス・ジマーも良かったのだが、個人的には音楽のセレクトがツボに入った。
「月の光」、『Fly Me To The Moon』とか大好きな曲だし(月繋がりなのが洒落てたりする)、最初の潜入する場面の音楽めちゃ良いなと思ったらレディオヘッドの曲(『Everything In Its Right Place』)か。
と、監督の確かなSF愛が感じられたし様々なガジェットも楽しめたんだけど作品のテンポかな、ハマる一歩手前で感情がおさまってしまった。
この感覚『GODZILLA ゴジラ』の時と似てるんだけど、ギャレス・エドワーズ監督の作風、自分とは若干合わない部分があるのかもしれない。
ただ、本作が作り込まれた作品であること間違いない。
見るたびに新しい発見がありそう。気になる人は是非チェックして欲しい。
※『The River』様の記事。内容の深い理解に助かるので、興味ある人は是非。
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