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東京国際映画祭2021『ザ・ドーター』感想

犯罪を犯した未成年たちの更生施設で妊娠した少女。子供に恵まれなかった施設の教師とその妻は山奥の自宅に少女を匿うことにする。それは少女の出産まで面倒を見る代わりに、生まれてくる子供を貰い受けるという約束をしたからだった。順調に見えた共同生活だったが、少女を探す刑事や子供の夫でもある若者の登場によって徐々に計画に綻びが出始め…というあらすじのサスペンス。

ザドーターポスター画像 (1)

東京国際映画祭の2本目はこの『ザ・ドーター』に決めた。こちらはあらすじから興味を惹かれていたのだけど、決め手になったのは今回のプログラミング・ディレクターの市山さんが本作を「衝撃の映画」と紹介していたから(ちなみに下のYouTube動画が今回の国際映画祭のコンペティション15作品の紹介動画になります。興味ある人はチェックしてみては)

作品全体の感想としてはじっくり丁寧に撮られたサスペンスといった印象を受けた。話の展開は読めるし、テンポもゆったりめだけど、一定の緊張感が持続しているから退屈に感じることはない。物語終盤、一気に物語が進み凄まじい展開が待っているのだけど、それまでのゆったりしたテンポ自体、この緩急を活かすための演出なんではないだろうか。

※これより先は内容に深く触れるため、ネタバレご注意ください

主人公の少女と教師の妻、子供を巡る2人の女性の戦いでもある本作。少女が髪を切られる場面は、両者の関係性が明確になってきた場面ともいえる。他にも刑事が教師の家を訪れた際に、山風に交じって微かに少女の助けを呼ぶ声が聞こえる場面など、一つ一つの演出が丁寧なのが良い。

ザドーター③ (1) (1)

まだ子供である少女はともかく、子供を欲しがった夫婦(特にあそこまで子供に執着した妻)にはどんな背景があったのか、そこら辺の描写も観てみたかった。

ザドーター② (1)

子供を手放すことに何とも思っていなかった少女が、徐々に自分の子供への愛へ目覚めていき、子供のために自らの身を投げ出す覚悟を決める場面。突風が吹き荒れる中、強い眼差しで見据える少女の姿が凛々しい。これから待ち受けるであろう茨の道でもきっと強く生きていくのだろう。そう感じさせるラストだった。

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