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休み時間、サッカーボールを持って校庭に走っていくのは男子ばかりだった

先週、OPTSammysの合同企画で、フットサル会なるものを実施した。

サッカー経験は問わず、女性をはじめとしたジェンダーマイノリティであれば誰でも参加OK。それぞれ、お仕事や個人的な友人関係の方に声をかけ、最終的には総勢14名での開催となった。

photo by Kanae Fukumura

参加者は、人生初サッカーの人、元プロサッカー選手、産後久しぶりにボールを蹴る人、高校までサッカーをしていた人…バックグラウンドは様々で。それでも、それぞれがめちゃくちゃ良い笑顔で走り回っている中でふと思った。

もし、小学生の頃の休み時間のサッカーが女子主体で行われていたら。きっと、こんな感じだったんだろうなって。

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突然だけれども、「個人フットサル(略して個サル)」に疑問を呈したい。

個人フットサルとは:「個サル」とは、個人で参加するフットサルのことで、個人参加型フットサルの略称です。もともとフットサル場の業界用語で、いつしか一般でも呼ばれるようになりました。個人参加型ですので、自分自身の参加費(目安として2時間で1000~1500円程度)を支払えば誰でも参加できるスタイルで、最近では多くのフットサル施設で、平日の昼間や土日の早朝などいろんな時間帯で行われており、ボールを蹴りたいと思ったら、いつでも簡単に参加できるのが魅力のひとつです。
https://labola.jp/column/36

個人的な話ではあるが、昨年1年間はどこのクラブチームにも属しておらず、だれかと試合がしたいなと思うときは個人フットサルに参加することが度々あった。試合をする機会をいただいていたという意味では、個人フットサルの存在に救われたなと思う一方で、なかなかにジェンダーバイアスの強い業界であり、フットボールを舐め腐っているなとモヤモヤを感じまくった経験も多かった。

個人フットサルは、業者によってもルールは様々ではあるが、基本的には「女性にGKは任せない」「女性には身体接触は禁止」等のルールが掲げられている。身体差が如実に出るスポーツである以上、安全のためにルールを掲げる必要があるのはしかたないことなのかもしれないけれど、ルールの枠を超えて女性を舐め腐り過ぎているなと感じるシーンに出くわすこともあった。

例えば、女性がドリブルをしているときは明らかに距離をおいて見守る。目をつぶってでも止められそうなシュートをゴールさせる。男子だったら誰も何も言わないようなプレーを女性がすると、拍手が起きたり「すげー!」と叫ぶ人が現れる、など。

「女性はサッカーができない」というバイアスによって引き起こされるピッチ上での振る舞いに、ものすごい違和感を感じたものである。冒頭で「ルールの枠を超えて女性を舐め腐り過ぎているシーン」と書いてはいるものの、多分、当の本人たちは"正当な配慮”のつもりなのがまた難しい。

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「もっと上手くなりたいのに、練習する場所も仲間も見つからなくて」
「男性と一緒にやるのは怖いけど、だからといって手を抜かれるのも上手くなれる気がしない」

冒頭のフットサル会、元はといえば、あるフットサルの場で出会った女性参加者たちが口を揃えて上記のような想いを教えてくれたことから始まった。

SHUKYUというフットボールカルチャーマガジンがある。SHUKYUさんは、月に1回のペースで内部関係者が集まってフットサルを開催しているのだけれども、わたしはこのフットサルの場がめちゃくちゃ好きだ。

まず、みんな良い意味で子どもで、ガチ。ときに吹っ飛ばされることもあれば、派手にこけることもあるけれど、それもまたフットボールだよねという感じ。

そして、そこに上手い下手や性別が何かは関係ないところがまたいい。当たり前のように男性参加者が女性参加者のボールを容赦無くかさらっていったり、球際を競り合って女性参加者が吹っ飛ばされることもあるのだけれど、それをだれも気にしない(もちろん、悪質なプレーはちゃんと謝るしファール扱いになるよ)。吹っ飛ばされた女性参加者がすぐに立ち上がってボールを奪い返しに行く姿や、シュートを止められて悔しそうな顔をしている姿を見た時に、この経験ができる場所ってめちゃくちゃ貴重なのでは、と。

そんな日本でもかなり限られているであろう良質なフットサルの場に参加している女性参加者ですら、上記のような悩みを話す。大人になってからサッカーをしたいと思っても、気軽にできる場所がない。もっと上手くなりたいのに、なれない。男性とプレーすると、怖い思いをするか手を抜かれて微妙な気持ちになるかのどちらかであることが多い…

確かに、個人フットサルの多くは男性参加者が中心である想定で作られているものが多い。「女性はGK禁止」「女性は身体接触禁止」というルールが掲げられているくらいである。もしこれが、女性が9割近く男性1割の参加割合であれば、こんなルールは存在したのかな。

であれば、OPTで女性をはじめとするジェンダーマイノリティの人たちが本気でボールが蹴れる場所をつくってみたい。サッカー経験を問わず、誰もが「やりたい!」という想いのままにボールを蹴れる場所、休み時間のあのサッカーを体験できる場所を作ってみたい。

そんな想いで、今回のフットサルの企画がスタートした。

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以前、個人のインスタグラムで、こんな問いかけをしたことがある。

「スポーツ現場で男女不平等を感じたことがある人、どんなことがあったか教えて欲しいです」と下山田がインスタのストーリーで質問箱を設置している画像

回答いただいたものへの下山田の回答は、下山田インスタのストーリーハイライト「gender gap」にまとまっているのでぜひご覧いただきたいのだけれど、ひとつだけ自分も学びになった回答を紹介させてほしい。

長距離走男子は1500m、女子は1000mという回答に対して、「体育の授業とか運動会とかもそうだけど、男女で種目分けるのは本当に謎ですよね。長距離走に関しては、男子かわいそうだなと思っていた。500m長く走らされる意味とは。」と回答している画像。」

質問箱への回答の中に「長距離走 男子は1500m、女子は1000m」という回答があった。それに対して、下山田は見ての通り「男子は500m多く走らされていてかわいそう」と答えているのだけれど。

この投稿をみた、まほてぃ(OPTの広報周りを一緒に動いてくれている)が「わたしはあの回答をみたとき、女子でも1500m走れるんですが!?と思いました」と教えてくれた。

たしかに、そうだよね。

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OPTとSammysのフットサル会で初めてサッカーをした参加者のひとりが、試合中にシュートを外したとき叫んでいた「悔しい!」の一言。そして、終わった後に「悔しかったから、練習したい!」と伝えてきたこと。

インスタの質問箱に、企業内でフットサルのお誘いがある時に、基本的に男性しか誘われなかったというエピソードを回答いただいたのだけれど、このような経験の積み重ねによって、女性が「自分には関係のない話だ」と思う、もしくは「会場に行ったとしても混ざってプレーはできないんだろう」と思うこともあるのだろう。

そうやって、女性に機会がなかっただけで、能力としてできないわけではないことが、世の中にはたくさんあるのだと思う。何度も失敗して、そのさきに成功体験があって。そうやって成長していく経験のないままに「女性はサッカーができない」とされてしまう現状に「それは間違っている」とわたしは伝えたい。

思えば、小学生の頃、休み時間にサッカーボールを持って校庭に走っていくのは男子ばかりだったよね。上手いも下手も関係なく、みんなでボールを追いかけて、たくさん失敗して、ちょっぴり成功して、それが嬉しくてサッカーが大好きになって。あの感情を味わうことができる機会を、なぜ女子は奪われてきたんだろう。

大人になった今、男子に囲まれ過ごしたあの休み時間のような時間を、自分たちの手でつくりなおしている。そんな気持ちになったことだった。


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このnoteを読んでくれたみなさんへ、アンケートへのご回答とシェアのお願いを最後に。

OPTでは、U30世代のための政治と社会の教科書メディアを運営する『NO YOUTH NO JAPAN』さんと一緒にサッカー界に存在するジェンダー不平等を可視化するプロジェクトをスタートすることになりました。

このnoteに書いてあるような機会格差のみならず、賃金格差や環境格差など、サッカー界には様々な男女不平等が存在していますが、その現状は当たり前なのではなく「変えていけるもの」であるということをこのプロジェクト通して示していくことが目的です。

プロジェクトの第一歩として、実態調査のアンケートを実施しています。現役・元女子サッカー選手のみなさん、部活動経験者、指導者の方など、女子サッカーに関わるみなさんに是非ご回答もしくはシェアにご協力いただけますと泣いて喜びます!


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