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ただ歩くだけという特別な日

散歩が好きだ。
歩く早さでただ世界を見ているのが心地いい。
旅行に行ってもあまり観光らしいことはしない。
ただ歩いている。
知らないところを歩くのが好きだし、かつて住んでいた町や、久しぶりに行く場所をただ歩くのも、いつも行く所を歩くのも好き。
結局、歩くのが好きなのだ。

カメラとその日に読む本だけ持ってひとりで散歩に出かけるのが、ここ数年のゴールデンウィークの恒例行事になった。
日帰りで1日、ただ歩くだけ。
家からそんなに遠くないところをただ歩く。
そんなものを旅と呼ぶのかは知らないが、わたしにとっての小旅行だ。
ゴールデンウィークに去年一昨年とたまたまそんなことしていた。
偶然、2年続いた。
3年目の今年は意図的だ。
勝手に始まった年に1回、春の散歩の習慣。

朝、まず駅へ向かう。
さて、どこへ行こう。

どっちの方向の電車に乗ろうか。
時計を見て、その時間の分数が
奇数ならくだりの電車に、
偶数ならのぼりの電車に乗ると決めた。

奇数だった。
くだりの電車に乗った。
とりあえず降りたことない駅まで行ってみる。
何分も電車に揺られる。

あまり知らない駅の名前がアナウンスされたので、とっさに降りた。

ねぎしという駅。
はじめて降りた。

なんでもない風景がつづく。
とても好きな感じだ。

駅から線路向こうに工場地帯が見えたのでそこを目指して歩く。
途中「横浜プールセンター」というのがあった。
もちろん営業はしていない。
季節はずれのプールは何とも言えない風情がある。

横にはテニスの練習をしている人たちがいた。

工場がある方へ歩いてみる。
線路をくぐって反対側に行く。

何かの工場のような場所に出たが道は完全に行き止まり。

鉄道と高速道路は上を通っているが、川に阻まれて先へ進めず。
来た道を引き返した。

あてもなくただ歩く。

何もない先にヨットハーバーのようなところがあった。

とても平和だ。

釣り興じる家族がいる。

その横は工場だ。
昔から工場の風景にひかれる。
工場の風景が好きなのは無駄がないからだと思う。
装飾がなく、必要な機能しかそこにはない。
そういうところにひかれるんじゃないかと思いながら歩いた。

いくつかポッドキャストを流し聴きしながら歩いていると、ちょうど読んだばかりの本を話題にあげている番組に。この日の朝、感想をXに投稿した本だ。すごく面白く読んだ本だったけど、番組では少し厳しい評価をしていた。次週は、わたしがデザインした本が取り上げられるらしい。たまたま聴いた番組だったけど、不思議な縁を感じた。

1時間半くらい歩いていたら、となり駅にたどり着いた。

磯子駅。
ここも初めて来る駅だ。

なんでもない風景の駅前。

ちょうど電車が来たので飛び乗った。
本当はトイレに行きたかったけど我慢した。
電車は大船駅行きとある。
大船というところも行ったことがない。
終点まで乗ることにした。

本を読みながら終点へ向かう。
もってきた本は「お守りのことば」(松浦弥太郎)という本。
1ページに言葉ひとつと短い文。
こういう日に読むのにちょうどいい本だ。

大船駅に着く。
1時間以上歩いたせいで右足が痛くなる。
今年に入ってから右の足の裏が歩くと痛くなる。
先日病院にいったら何やら症状名を言われ定期的にリハビリが必要になった。
歩くのが好きなのでこれはけっこうな痛手だけど、気にしないことにした。
実際、2、3時間も歩くと痛いのはどうでもよくなってくる。

磯子よりははるかに賑わった駅前。

大きめの商店街がある。
ランチを食べる店を探す。

キーマカレー、おにぎり屋、ここでなければ食べられないものを探して…
結局ここにした。

立食い(風)そばの「大船そば」
これはここでしか食べられないものだ。

コロッケそばに卵とちくわ天のトッピング。
これで540円。
信じられない値段だ。

そしてこの店、かなり美味しい。
疲れて空腹だったのもあるかもしれないけど、だしはあっさりしてるのに、しっかり味に深みがある。コロッケにまぶしたコショウがいいアクセントになっていたり、ちゃんとした立食いそばだった。座って食べたけど。
店内は祝日だけど満席。
地元民に愛されている店なんだろう。

その後大船を歩く。
特別なものがなにもないのがいい。

駅の向こうに団地がありそうだったので行ってみることにした。

団地は見失ったけど大船観音なる巨大建造物があった。

途中、道に迷いながら…

たどりついた。
入館料300円。

観音像の胎内には、小さなお坊さん象がたくさんいた。

隣でお祈りしていた人が
「戦争が早く終わりますように」
と言っていた。
本当にその通りだ。

駅に戻って再び電車に乗る。
となり駅が藤沢だという。

もう何十年も行ってない。
20年以上前によく映画を観に行った。

藤沢駅で降りた。

なんとなく知ってる場所と知らない風景が混在する場所になっていた。

昔よく行ったオデヲンという映画館を探したけど、もうなくなっていた。
たしかこのマンションが建っている場所あたりにあった。
調べたら2007年に閉館したらしい。

ただ映画館に向かう途中にあったおもちゃ屋がそのまま残ってた。

店先には色褪せたプラモデルの箱。
あの頃は少し色あせた「ガンダムMk-Ⅱ」(←これ)の玩具がずっとおいてあった。
なんだか、それをよく覚えている。

この本屋も当時のままだと思うけどおもちゃ屋ほど覚えてない。

藤沢のダイエーによる。見たことない納豆を探す。
あまり見ない納豆、ひとつだけあるにはあった。
ただ、この後暑い中を持ち歩くリスクを考えて見送った。

代わりに古本屋で3冊、古い本を買った。
古い東京の地下鉄の本と、古い横浜の観光本と、なぜかレヴォリューションNo.0。

買った本ではなく、持ってきた本の続きを読みながら、駅前の広場でやってる路上ライブを聴く。
エリポンという人が弾き語りで歌っている。

カレーライスの歌を歌ってる。
CDだと最後に「うっ!」って言ってないんだけど、
ライブだと「うっ!」って言ってて、
ここが好きだからCDにも「うっ!」を入れればよかったとMCで言っていた。

ビックカメラでモバイル充電バッテリーを買った。
カメラのバッテリーがちょっと心もとなくなってきた。
カメラを充電器につないで、江ノ電に乗ってみることにした。

そういえばまだ人生で一度も江ノ電に乗ったことがない。

さすがゴールデンウィーク。
やたら混んでいる。

藤沢が始発なので座れた。
横に旅行者と思われる家族連れが座った。
何世代なんだろう10人くらいの家族。
みんなもれなく体格がいい。ふくよかだ。
ジーパンと何のおつまみが美味しいかという話をしている。
「昔この子が小さかった頃、江ノ電を4往復くらい乗ったのよ」
と言われている茶髪の高校生くらいのやんちゃそうなアロハを着た少年が、照れくさそうに笑いながら、何か言っていたけど聞こえなかった。

江ノ電の移動中にカメラを出したらモバイルバッテリーが切れていた。
どうやら買った状態ではあまりバッテリーが充電されてなかったらしい。
4000円近くしたのに役立たずだ。
それでも少しだけ電池復活。
これで撮れるところまで撮る。

鎌倉高校前で降りようかと思ったけど、あまりの人の多さに降りるのをやめた。
スラムダンク効果。とにかく人がすごい。
少し先まで乗り、長谷駅で降りた。
ここも人は多いが、さっきの駅ほどじゃない。

あまり人のいない方へ歩く。

海岸に出た。

自撮りするカップルの横でカラスがウツボを奪い合ってた。

波もある。

住宅街を歩く。

小学生くらいの女の子が3人。
マントヒヒと言いながら歩いていた。

鎌倉駅に近づくにつれ町並みがオシャレになってくる。

駅の近くにスーパーを探す。もちろん納豆を買うため。

2軒ほど食料品店を見たけど納豆は見つからず。

駅前の東急ストアに入る。

鎌倉なので鎌倉山納豆が豊富だ。
ほとんど食べたことある。
極小粒がある。
これはあまり見たことない。
それを買った。

帰りの鎌倉駅のホームでカメラの電池が切れた。

グリーン車の券を買った。
座って帰る。
グリーン車はガラガラだ。
そういえばまだ小さかった頃、母がゴールデンウィークになると毎年友達と鎌倉に行っていたのを思い出した。わたしはついて行ったことはなかった。なぜゴールデンウィークは毎年鎌倉に行くんだろうって思った。その理由はわからなかったけど、偶然わたしも今年のゴールデンウィークは鎌倉だった。

車窓から陽が落ちかけているのが見えた。
最後の力を振りしぼって撮ったラスト1枚。

小さな旅。
いい1日だった。

おしまい。


+++++++++

たぶん、似たような事を話してる
続いてるラジオです

+++おまけ+++

その日の朝に書いたnote。

それから毎日の習慣、「どうぶつのもり」でのララミーとのプレゼント交換。
ためにくれるスペシャルプレゼントの「ララミーのしゃしん」をもらう。
これで46枚目。
旅に出るに日に写真とは何とも縁起がいい。

散歩に行く前に映画館に観に行った映画。
「リンダはチキンがたべたい!」フランスのアニメ。
これからの1日が、最高の日になる予感がしてくるような素晴らしい映画だった。

旅のお供に持っていって読んだ本。


散歩から帰って、夜は疲れ果てながらも、久々に野毛飲みを敢行して、クラフトビール2杯に、赤ワインを5杯ほど飲んだあと、気がついたら家のソファで寝てた。4時から24時まで、20時間。仕事もして、noteも書いて、ララミーに写真をもらって、気持ちよく踊って、映画を観て、歩いて、写真を撮って、本を読んで、食べて、飲んで。パーフェクトな1日だったな。ゴールデンだ!

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