お父さんとお母さんは、どんな人ですか。

先日、「よくある質問」というエントリを書いた。要約すると、個人のプロフィール欄には、一方的な経歴紹介だけじゃなく、商品サイトのようなFAQ形式での自己紹介があってもいいんじゃないか。という内容だ。早速、質問があったので、実験的に答えてみたい。

「お父さんとお母さんは、どんな人ですか」


2人とも本が好きだった。オヤジは歴史小説で、おかんはミステリー派だった。毎晩6時半に家でごはんを食べて、その後は決まって読書タイム。本棚の中身は季節が変わるごとに総入れ替えしていた。小中の頃の価値観なんて“動いてなんぼ”だったから、毎日同じような姿勢で本を読み続ける2人を「なんて退屈な人たちなんだろう」と軽蔑していた。

2人はメガネをかけていた。僕はその姿を見て、恥ずかしさを感じていて、見た目よりも機能を重視する大人にはなりたくないと思っていた。おかんは通販生活ばかりで買い物してたし、オヤジに限っては自分で服を選んでなかった。そのせいで、僕のパンツを間違って履かれるという事案が幾度となく発生した。

2人とも教師だった。オヤジは高校で日本史を教えていた。僕が高校2年のときに事件を起こして停学食らったが、担任がまさかオヤジの教え子だったらしく、オヤジが教え子に怒られてるという謎な光景が生まれた。おかんは、養護学校の先生だった。僕は公園で危険の遊び方をしがちな少年で、二次災害を被った人の家に、母はよく菓子箱を持って謝りにいった。今ではさすがに、悪いことしたなと思っている。

オヤジは、日本史マニアだった。旅行と称して、僕をよく奈良や京都に連れていき、ウンチクを語った。曼荼羅の絵画が好きで、そのせいか、気がつけば立山博物館というところで館長をしていた。一方でおかんは、人に合わせる人だった。意識せずとも多様性にどっぷり浸かっている人で、他人の文句を言ってるのが見たことなかった。オヤジは歴史上の変人たちを研究し、おかんはどんな扱いづらい人たちも受け容れた。

教師というと堅いイメージだが、両親とも教師の子どもは、実は変な奴が多い。原因は3つあると思う。1つは、仕事で散々子どもに教えているから。家帰ってまでしたくない。2つ目は、経験から、本人がやる気にならなければ何言っても仕方ないことを分かっているから。だから放任になる。3つ目は、いわゆる社会経験ないから。意外と押し付ける「普通」がない。むしろ古い大企業出身者のほうが、窮屈な子育てをしやすいのではないか、というのが僕の仮説だ。

気がつけば、僕も父親になった。いつの間にか本を読むのが好きになっていて、いつの間にかメガネをかけていた。地方の文化財を歩き回る面白さを知り、いろんな価値観を受け入れる多様性の大切さを知った。少し腹も出てきたし、通販生活のようにほぼ日を見てしまう。あんなに似たくないと思っていた、オヤジとおかんと同じようなことをしている。その事実に気づいたとき、あぁ血筋は争えないんだなぁと思った。

作家の高橋源一郎さんは言う。自己紹介は自分の話をするよりも、地元や両親など自分の周辺の話をしたほうが、個性が伝わると。その人の輪郭がはっきりすると。残念ながら、僕にも当てはまるようだ。

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高木新平

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