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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う490

三 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之三下
3-b16


琵琶湖
作曲 モリス氏
作歌者 未詳


逢坂山(あふさかやま)をこえ来(く)れば
木(こ)の間(ま)に見(み)ゆる鳰(にほ)の湖(うみ)
見渡(みわた)す限(かぎり)はしらねども
先(まづ)こそうかべわがこゝろ

さゞ波(なみ)ひろきみぎ左(ひだ)り
から﨑粟津瀬田片田(さきあはづせたかたた)
はなれてたてる竹生嶋(ちくぶしま)
いづこか名(な)のなき所(ところ)なる

昔(むかし)は志賀(しが)のおほわだに
懐古乃袂(くわいこのたもと)やしぼりけん
開(ひら)くる今(いま)の大御代(おほみよ)は
進(すす)みてはやし馬(うま)くるま

琵琶湖
・此曲の調號の種類-數、及び音位、如何。
・變(b)二個にして、「ロ」と「ホ」とに置かれたり。
・然らば、此曲は、何調か。
・變「ロ」調なり。
・何を以て、變「ロ」調なるを知れりや。
・最末の記號、即ち變「ホ」より下へ、四度數ふれば、變「ロ」なるを以てなり。
・然り。汝等は、如何にして、此規則を知り得しや。
・上編第五曲「秋景」の場合に於て、學びたる規則に准じて、之を知れり。
・此曲の拍子は。
・二拍子なり。
教師、是に於て、本曲を授く。音階練習には、變「/ロ」(1)より、變「//ホ」(4)まで、又、變「/ロ」(1)
より、「/ヘ」(5.)までを、上下に練習すべし。而して、本歌に關する史話、及び歌詞に就き
講話すること、例の如し。
[注意]本曲、各段、第三小節の六度音程は、初學の徒、少しく困難を感ずべければ、加成
的注意して、美麗に超唱することを習はしむべし。
・「にほのうみ」は、鸊鷉(にほ)の湖(うみ)、また鳰(にほ)の湖(うみ)など、字には書きて、近江の湖水にて、即ち琵琶湖
のことなり

第一歌は、京都より、近江國に行くに、逢坂山を超ゆるとき、始めて琵琶湖の、木の間よ
りみゆる氣色のよきに、心もうきたつほどである」と云ふを、水には、物の浮ぶものな
るゆえ、「まづこそうかべわがこゝろ」ととぢめたるなり。
第二歌は、琵琶湖の、處々方々の名所を擧げ手、云ふに云はれぬ氣色のよきを賞美し
たるなり。「さゞ波」は、滋賀と云ふの枕詞なれど、こゝにては、何となく湖のことに云へ
り。
第三の歌は、志賀の都は、昔、天智天皇の皇都なりしにより、萬葉集には、柿本人麿朝臣
の懐古の長歌あり。其反歌に、「さゞなみや、志賀の大わだよどむとも、昔の人に、またも
あはめやも」また、千載集には、「よみ人しらず」の歌にて、名高き、「さゞなみや、志賀のみやこ
はあれにしを、むかしながらの山櫻かな」といふ歌を載せたり。いづれも舊都となり
て、荒れゆくを嘆きたるさまなるが、此歌は、人麿の、「志賀のおほわだ」云々とよまれつ
るによりて、「懐古の袂やしぼりけん」と、千載の昔を想像し、さて、明治維新の後は、滋賀
県廳を置かれて、物貨、常に此所に輻輳して、いと賑はしく、大御世の進む狀を、車馬の
すゝむと云ふにかけてよめるなり。大津は、天智天皇の皇居のありし所なり。

五 広島大学教科書ライブラリー 發兌 大日本圖書株式會社
(M.26.8.15印刷M26.8.18発行)M27.1.22訂
巻之五下
5-b15


[3巻と歌詞の齟齬あり]


逢坂山(あふさかやま)をこえ来(く)れば
木(こ)の間(ま)に見(み)ゆる鳰(にほ)の湖(うみ)
見渡(みわた)す限(かぎり)はしらねども
先(まづ)こそうかべわがこゝろ

あふみの海(うみ)のみぎ左(ひだ)り
から﨑粟津瀬田片田(さきあはづせたかたた)
はなれてたてる竹生嶋(ちくぶしま)
いづこか名(な)のなき所(ところ)なる

昔(むかし)は志賀(しが)のおほわだに
懐古乃袂(くわいこのたもと)やしぼりけん
開(ひら)くる今(いま)の大御代(おほみよ)は
進(すす)みてはやし馬(うま)くるま

(略)
・然り。汝等は、如何にして、此規則を知り得しや。
・上編第六曲「秋景」の場合に於て、學びたる規則に准じて、之を知れり。
(略)

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