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【言葉】「奇跡のバックホーム」横田慎太郎さんのストーリーから感じたこと

先日訃報が発表された元阪神タイガースの横田慎太郎選手について書いていきたいと思います。先日の報道で横田選手について知った程度の人間ではありますが、賢明に生き抜いた28年間についてのニュース報道を見るたびになんとも言えない悔しさ、悲しさ、と共に横田選手の強さや輝きなどを感じ、拙い文章ではありますが、私なりに綴っていきたいと思います。(ちなみに以下の情報についてはウィキペディアを中心にまとめております。予めご了承ください。)


プロ野球選手時代の横田選手

すでにご存じの方も多いかと思いますが、簡単にご紹介させてください

「1995年6月鹿児島県生まれ。お父様もプロ野球選手で、本人も子どものころから野球に親しむ。名門鹿児島実業高校からドラフトで阪神タイガースに入団。入団3年目には1軍スタメンに大抜擢。これからが期待された翌年のキャンプ中に原因不明の頭痛を発症し、精密検査により脳腫瘍と判明。半年間の入院生活の後、復帰を果たすが後遺症により実戦への復帰叶わず2019年に引退を決意。引退試合の8回表でセンターで途中出場。本塁へのノーバンドの送球でタッチアウトという伝説のファインプレーで現役最後のプレーを飾った。」

ウィキペディアより

YouTube等には横田選手が出演されている動画が多数あるのですが、真面目で実直、飾らないご様子が本当に好感ある方のようにお見受けしました。念願のプロ野球選手になって3年目。この年から新しくチームを率いることになった金本監督によって大抜擢されて、これからが嘱望された矢先に・・・。本当にやるせない。

懸命に半年間の治療とリハビリに耐え、不撓不屈の精神力でカムバックを果たす。しかし病魔(後遺症)は潜んでおり・・・。・・・ってどこまで運命の神様は意地悪なんだ、とつくづく人生の不公平を呪わずにはいられません。プロ野球選手にとって「目」が見えないということは致命的。認めたくないし、言えないし、という葛藤もあったことと思います。まだまだ若い20代前半でこのような過酷な運命を背負うことになるとは・・・。それでもくじけず、できることをしていこうと奮闘する横田選手に涙せずにはいられません。

奇跡のバックホーム

そして有名な引退試合のラストプレーです。ウィキペディアから引用させていただいております。

現役生活でのラストプレーは、「練習でもできなかった」という引退試合でのノーバウンド送球で、「魂のバックホーム」「奇跡のラストプレー」と形容されるほどの賞賛を受けた。横田自身も、引退セレモニーでの挨拶で、このプレーに言及。「最後にまさかこんなに素晴らしい思いが出来るとは夢にも思いませんでした。今まで辛い思いをしてきたこともありましたが、自分に負けず、自分を信じて、自分なりに練習してきたので、『神様は(そのような自分の姿を)本当に見ている』と思いました」と述べた。引退後最初の著書にも、このプレーにちなんで『奇跡のバックホーム』というタイトルが付けられている。

ウィキペディアより

TVドラマにもなっているほどの有名なエピソードですが、これもまたYouTubeで観ることが出来ます。私のような素人が見ても惚れ惚れするような見事なファインプレーです。横田選手も謙遜しながら「現役時代にもできなかったプレーです」と仰っていましたが、これは今まで野球を始めてからずーっと培ってきた「経験」や「勘」の賜物なのではないでしょうか。

ほとんどボールは見えていなかった、とも語っていますので、ほとんど「感覚」でボールを捕球。またバックホームに関しても、精一杯力強くホームめがけてまるでイチロー選手のレーザービームのような素晴らしい返球でタッチアウトを飾っています。ある動画内では「普段であれば後ろに下がってしまったのだが、今回は何かによって「前へ、前へ」と押された気がしました」とも話されていました。野球の神様はきっとその場にいたんだと思います。

さらには裏話として当時の二軍監督であった平田監督のエピソードも素晴らしいので引用させていただきます。

横田自身は、脳腫瘍から復帰してから「ライトポールが一番見えやすい」との理由でライトの守備しか練習していなかったため、引退試合でもライトを守ることを希望していた。しかし、試合の3日前に二軍監督の平田へ引退を報告したところ、平田から「お前が3年目(2016年)に一軍開幕スタメンを取ったのはセンターだろう。エラーしたっていいから、センターを守れ!」と激励。この激励を受けて、試合までの2日間はセンターの守備練習に明け暮れていた。横田が引退後に聞いた話によれば、平田がイニングの途中(8回表2死)から横田をセンターの守備に就かせたのは、「横田が外野の守備へ必ずダッシュで向かう姿に好感を持っていたので、その姿を最後にファンへ見せたかった」とされる。

ウィキペディアより

平田監督!かっこよすぎです!こういうボスに就いていきたい。と、同時に横田選手がそれだけ皆から愛される素晴らしい選手だったということが伝わってきます。大病をしても腐ることなく、ひたむきに努力し、「今できること」を精一杯取り組む姿に誰もが胸を打たれていたのでしょう。その証拠にこの二軍戦には一軍チームのメンバーも大勢観戦に来ていたそうです。

引退後の横田選手

引退後も阪神タイガースの球団職員としてのオファーもあったそうですが、それらを断り、講演業などで活躍。以下にご本人の言葉を紹介したいと思います。

引退を機に、講演や著述など、現役時代の経験を言葉で伝える活動を主に展開していた。「自分が経験したことを言葉で伝えていきたい。誰かを励ましたり、苦しんでいる人を助けたりしたい。『僕みたいに何か1つでも小さな目標を持っていけば、あのバックホームのような良いことがある』ということを、自分の口で伝えていきたい」

ウィキペディアより

こんなに強く生きることができるのでしょうか。自分も大変な思いをしたが、それだけに同じような人たちを助けたい、勇気づけたいという一心で全国各地へ講演活動で回られたそうです。また、阪神OBの川藤さんのお誘いでYouTuberとしても活躍されるなど、先輩方からも愛される可愛い後輩だったことが伝わってきます。

しかし、病魔は迫ってきており、腫瘍の再発などで入退院をされるなど、徐々に体の自由が失われていきます。片目は失明されてしまったそうですが、「もう片方は見えているんだ」と言って、講演活動は続けられたということですので、どこからその精神力が沸いてくるのか、本当に人はどこまで強くなれるのでしょうか。

「ヨコのために」~追悼試合と仲間からのメッセージ

2023年7月18日に帰らぬ人となった横田選手。阪神球団は7月25日の一軍・二軍の試合を「追悼試合」としてセレモニーを実施。1軍の対巨人戦は横田選手の同年代選手たちの活躍もあって4対2で見事勝利。ウィニングボールはご家族に寄贈されたそうです。特に試合終了直後にマウンドに集まり、皆が手を空にかざすシーンは写真だけを見ても泣けてきます。本当に横田選手が誰からも愛されていた素晴らしい方であったことが伝わります。

『ヨコ(横田)が(打球を)スタンドまで運んでくれたんじゃないか』と思います」(大山選手)
「僕が投げる直前に(チームが)逆転したことで、『何かあるのか』という気がした。いつもとは全く違う気持ちというか、抑えられてよかったというか…。ヨコ(横田)の気持ちを背負って投げられました」(岩貞選手)
「今日は本当に勝てて良かったが、これから先も、彼(横田)の思いも背負ってやっていかないと」(岩崎選手)

ウィキペディアより

仲間として横田選手と接してきた選手たちの言葉だけに重みが違いますね。あれだけ野球を愛し、とことん野球に打ち込んできた横田選手が本人の意とは異なり、突然続けることができなくなる。そんな悔しさを本人だけでなく周りの仲間も痛いほど感じていたことと思います。こうなると今年はなんとしても「ヨコのために」優勝してほしいですね。もちろんファンの方においては、当然毎年だ!ということだと思いますが・・・(笑)

矢野元監督の追悼メッセージ

少し長くなりますが、矢野元監督のメッセージを紹介します。

「横田の引退試合でバックホームを見た時には『野球の神様って、本当におるんやな』と思ったものだが、こんなに早く逝ってしまうとは・・・。神様は不公平やな」との表現で複雑な心境を明かしながらも、「野球人として、人として、横田ほど真っすぐな人間はいない。『今できることをやり切る』という意識を持ち続けながら、弱い部分を他人に絶対に見せなかったところが『プロとして凄い』と思った」「短い時間だったけど、横田と一緒に野球をやれたことは心に残っていく。俺も残された選手も、横田から教えられたことを思えば、弱音なんて吐いていられない」(’矢野燿大)

ウィキペディアより

こうした書かれた言葉を改めて読むだけでも涙が出てくるような感覚になります。本当に誰からも好かれる素晴らしい横田選手がなぜこんなに早くこの世を去らなければならないのか。矢野さんの言葉ではないですが「不公平」を感じてしまいます。


自分は今を懸命に生き抜いているのだろうか?

と、同時にこれは野球選手だけでなく、私のような市井の人間でも考えさせることがたくさんあります。「今を懸命に生き抜いているのだろうか?」なんだかんだと緩く、易しい道を選んでいないだろうか?横田選手ほど強く生きれる自信はありませんが、それでもこうして訃報を耳にしてから、これだけ考える機会を作ってくれた横田選手のご冥福をお祈りすると共に感謝したいと思います。

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