福岡真之介

弁護士・ニューヨーク州弁護士(西村あさひ法律事務所) AI・データを中心にテクノロジー…

福岡真之介

弁護士・ニューヨーク州弁護士(西村あさひ法律事務所) AI・データを中心にテクノロジー関係の法律を取り扱っています。 Noteでは、Web3、メタバースに関する記事を書いていきます。 https://www.nishimura.com/ja/attorney/0097.html

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最近の記事

「AIと著作権に関する考え方について」を読む

すっかり春めいてきましたが、いかがお過ごしでしょうか。 本稿では、文化審議会著作権文化会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方」(以下「考え方」)について解説します。考え方は2024年3月15日に最終版が公開されましたが、前代未聞の2万4938件ものパブリックコメントを集めており、世間の関心の高さが窺えます。 「考え方」には、私なりの意見もあるのですが、本稿では、私の意見はともかくとして、「考え方」を素直に読んだら、「結局、何がOKで、何がNGなのか」という観点から解

    • Llama2のライセンス条件について解説する

      Llama2は、Metaが開発したtransformerベースのLLMです。パラメータ数が70億・130億・700億という3つのモデルがあり、また、事前学習済みバージョンとチャット用のファインチューニングされたものの2タイプがあります。 Llama2はオープンソースであり、誰でも無料で利用できるとされています。そのためLlama2を使いたいと思うAI開発者も多いと思います。 もっとも、Llama2についてはオープンソースではないという意見もあります。 では、実際のところは

      • Falcon 180Bのライセンス条件について解説する 

        Falcon 180Bは、UAEのテクノロジー・イノベーション研究所(TII)によって開発され、1800億のパラメータと3.5兆のトークンでトレーニングされたLLMです。OSS(Open Source Software)として、Haggingfaceで公開されています。 OSSは無償で比較的自由に利用できますが、ライセンス条件を守る必要があります。特に、商用利用する際には注意が必要です。 そこで、本記事では、Falcon 180Bのライセンス条件(FALCON 180B TI

        • AIに関するアメリカの大統領命令の解説

          2023年10月30日、米国のバイデン大統領は、AIの安全で責任ある開発に向けた連邦政府全体の協調的なアプローチを推進するため、安全、安心、信頼できる人工知能に関する大統領命令(Executive Order on Safe, Secure, and Trustworthy Artificial Intelligence)を発布しました。 この大統領命令は、安全性、セキュリティ、プライバシー、公平性、市民権などの主要な懸念に対処することを目指しており、同時にイノベーションと

        「AIと著作権に関する考え方について」を読む

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        • AI
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          「AIと著作権に関する考え方(素案)」の解説(一般向けver)

          1.はじめに2023年12月20日に文化審議会著作権分科会法制度小委員会から、「AIと著作権に関する考え方(素案)」(以下「素案」)が公開されました。 あくまでも素案であり、今後の議論やパブリックコメントにより変更される可能性がありますが、少なくとも一定の方向性は示されたといえます。 素案は、今後のAI開発・利用や著作権者に大きな影響を与える可能性があることから、その内容を知ることは重要ですし、問題点・疑問点があればパブリックコメントで意見を述べれば、回答により明確化されたり

          「AIと著作権に関する考え方(素案)」の解説(一般向けver)

          【AI】生成AIとクラウド例外

          クラウド例外とは一部関係者の間で白熱した(?)議論が交わされた生成AIにおけるクラウド例について取り上げてみたいと思います。 この問題は、生成AIに「個人データ」を入力する場合に「提供」にあたるのかという問題です。 個人データを第三者提供する場合には原則として本人同意やオプトアウト手続をとる必要があります。もっとも、例外として、「クラウド例外」に当たる場合には「第三者提供」と解されません(Q&A7-53)。その結果、本人同意やオプトアウト手続をとる必要がなくなります。

          【AI】生成AIとクラウド例外

          【AI】生成AIの社内ガイドラインのポイント

          生成AIを企業で利用するにあたって、社内ガイドラインや社内規則を作ろうという動きが活発化しています。 「ビジネス法務」2023年11月号でも「生成AIの法的ポイントと内部規約を検討する」という特集が組まれています。 私も「ユースケースにみるAIコンテンツ生成に対する内部規約の要点」というタイトルで執筆させていただきました。 また、10月5日に刊行される拙著「生成AIの法的リスクと対策」にも268頁以下でも解説しています。 社内ガイドライン作成の留意点社内ガイドライン(・社

          【AI】生成AIの社内ガイドラインのポイント

          【AI】声優と生成AIの法的論点

          先日、「コナン君に「#歌わせてみた」流行曲、実はAI偽音声」という記事に接しました。 生成AIについては、画像生成AIの脅威的な進歩により、既存のキャラクターやイラストに似たようなものが生成され、著作権が大きな問題としてクローズアップしましたが、音声生成AIも進歩しているので、問題が音声にも拡大するのは必然の流れといえるでしょう。 問題は、「声優さんの声を勝手に生成AIで使うのを声優は法的に止めることができるのか?」(利用者の観点からは勝手に使ってOKなのか?)という点で

          【AI】声優と生成AIの法的論点

          【AI】生成AIの法的リスクと対策

          本年10月5日に日経 BPから「生成AIの法的リスクと対策」という本を刊行します。 この本では、題名からわかるとおり生成AIの法的リスクを取り上げます。 生成AIにはどのような法的リスクがあるのでしょうか。 主なものとして、 ①著作権などの知的財産権の侵害・帰属 ②人格的権利・利益の侵害 ③個人情報の不適切利用 ④秘密情報の漏洩 ⑤誤情報の利用 ⑥バイアスによる差別や不公平な取り扱い ⑦フェイクニュースの流布やマルウェアの作成等の不適切利用 ⑧各種業法の違反等が挙げられます

          【AI】生成AIの法的リスクと対策

          【Web3】DAOのメリット・デメリットと課題

          DAOは「分散型自律組織」という名前が示す通り、意思決定がメンバーに分散され、経営者による中央集権的な運営がされず、メンバーによって自律的に運営される組織です。 現在、Web3の世界では、多くの組織がDAOとして運営されています。例えば、Defiでは、UniswapDAOやMakerDAOが、NFTでは、ApeCoinDAOやNounsDAOがあります。 DAOについて、イーサリアム財団のDAOについての解説サイトは、「組織を誰かと一緒に組織を立ち上げるには、資金やお金が関わ

          【Web3】DAOのメリット・デメリットと課題

          【AI】生成AIにおける秘密情報の取り扱いの注意点

          1 はじめに 2週間ほど前に生成 AIの著作権について書いたところ多くの人に読んでいただき、生成AIへの関心が高いと実感したので、生成AIと法律の第2弾をお送りします。前回、生成AIのリスクとして、①著作権侵害、②誤情報の利用、③秘密情報の漏えい、④個人情報の不適切な利用、⑤悪用などがあると書きましたが、今回はその一つ③秘密情報の漏えいについて取り上げます。  ChatGPTなどの生成AIに自社の秘密情報を入力してしまう従業員などは、いてもおかしくありません。実際にも、サムソ

          【AI】生成AIにおける秘密情報の取り扱いの注意点

          【AI】生成AIを利用する場合に気を付けなければならない著作権の知識

          はじめに最近は、テクノロジー法を主に取り扱っています。その中でもAI、Web3、メタバースは、現時点では別系統の話題の感が強く、一緒くたにNOTEに書くのはためらわれ、それゆえにNOTEに何を書くか迷っていたのですが、タイトルに【AI】【Web3】【メタバース】と入れることで全部NOTEに書くことにしました。これで問題解決しました! ということで、今回はChatGPTの登場で、最近盛り上がっているAIがテーマです。 生成AIの法的リスク生成AIの利用にはどのような法的リスク

          【AI】生成AIを利用する場合に気を付けなければならない著作権の知識

          web3は社会をどのように変えるか

          web3は社会をどのように変えるのだろうか? この点について、私としては以下の3つを挙げたい。 1. トークンエコノミーの形成  web3では、トークン(定義はCoinbaseのサイトを参照)を使って資金調達をしたり、協力してくれた人に報酬を支払うことができる。 例えば、新規事業を立ち上げるときに、イーサリアムと引き換えにトークンを発行し、集めたイーサリアムを原資としてプロダクトを開発することができる。そして、その収益をトークン保有者に配分することもできるし、トークンが

          web3は社会をどのように変えるか

          Web3の定義と何ができるかについての考察

          web3 とは何か 初のNoteの投稿ということで、何を書こうか大いに悩んだのだが、やはりweb3の概要について自分が考えていることから始めたいと思う。 仕事柄web3について話さなければならない機会があるが、web3について話すと、特に、年配の方は、そもそも知らない/聞いたことはあるくらいの方が多く、「そもそもweb3」とはということを何度も説明しなければならない。面倒だと思う反面、それだけ成長余地があるとポジティブに考えることにしている。 自分は、web3を「ブロックチ

          Web3の定義と何ができるかについての考察