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ブタの臓器移植とブタの福祉

最近気になっている記事は、異種移植です。新聞記者時代の主要テーマが脳死と臓器移植だったからです。臓器不足を解消するためという謳い文句で、それ自体は結構だと思いますが、バイオテロへの悪用など高度な遺伝子改変技術の進展は手放しで喜べるものではないと考えています。
 
異種移植の大ニュースは一昨年にありました。
▽2022年1月12日読売新聞朝刊記事
「ブタの心臓 人に移植 世界初『臓器不足解消に一歩』」
記事のポイントは
<医療チームは拒絶反応や、人間の体内での過度の成長を抑えるため、関連する遺伝子を計10か所改変したブタの心臓を使った。>です。
患者は2か月後に死亡しました。CNNによると<死因は複数の要因による心不全とされ、当初検出されなかったブタのウイルスの痕跡も報告された。>
同じくCNNによると、昨年行われた2例目のブタ心臓移植では<拒絶反応の症状を示し始め、術後6週間で亡くなった。>
 
そしてつい最近の記事です。
▽2024年3月22日付読売新聞夕刊社会面記事
「ブタ腎臓 腎不全患者に移植成功 米病院 遺伝子改変し世界初」
<移植したブタの腎臓は米バイオ企業イージェネシスが提供した。患者の体内で拒絶反応やウイルス感染が起きにくいように計69か所の遺伝子を改変している。>です。
※遺伝子の改変箇所がかなり増えていますが、種の壁が最大の障壁となりますので、拒絶反応の抑制がブタ腎臓でも鍵となります。課題は克服していませんが、日本もかなり前のめりなことがわかるのが次の記事です。
 
▽2024年2月29日付読売新聞朝刊1面記事
「ブタ臓器移植 複数計画 国内サル実験年内にも」
<明治大発の新興企業「ポル・メド・テック」が今月、米バイオ企業が開発した細胞を使った遺伝子改変ブタを3頭誕生させた。>
※ポル・メド・テックのHPによると、同社の創業者の一人で代表取締役社長、三輪玄二郎氏の経歴には<世界経済フォーラム(ダボス会議)評議員>の文字がありました。
 
▽同日付解説面記事
「『異種移植』計画国内外で ブタから臓器研究加速 規制や社会の理解課題」
<米バイオ企業イージェネシスから入手したブタ細胞>と書いており、この企業の研究で日米の異種移植が臨床段階にまで進んできたことがわかります。
※イージェネシスのHPによると、遺伝子改変技術として、
CRISPR-Cas9>という技術が取り上げられていました。
この技術がとても引っかかったのです。

それは、バイオテロ防止を打ち出して全体主義政策を推し進める日米の動きを調べている際に、出合ったある論文にその技術が取り上げられていたからです。
論文は「デュアルユース・ジレンマとバイオテロ対策」(2016年9月、防衛研究所主任研究官、田中極子氏)で、バイオテロ対策の動きを米国中心に追っています。
デュアルユースとは、民生と軍事の両目的に使用できるテクノロジーのことで、例えば、インターネットや電子レンジも軍事から民生に応用されたものです。便利で留まるものならいいのですが、懸念されるのは医学の悪用です。
論文を読んでいくと、新型コロナウイルスでも話題になった「機能獲得型」研究の進展が、<いかなるウイルスや細菌も、作成されたり再生産されることが可能になっているのである。>として、
<新たな遺伝子改変技術として、ゲノム編集ツールであるCRISPR-Cas9が2013年に実用化され、これにより、DNA二本鎖を切断してゲノム配列の任意の場所を正確且つ安価で編集することができるようになった。…こうした技術発展は、親が望む能力を持つ遺伝子を持つ子供を作るなど倫理上の懸念のほか、遺伝子操作が悪用または誤用されることへの懸念を高めている。>
 
異種移植を待つ患者には悪いのですが、異種移植の根底には人と動物の健康、環境の健全性を一体に考えるというワンヘルスの概念があるように思います。
率直に言えば、うさんくさいのです。
全国初の「福岡県ワンヘルス推進基本条例」をつくった福岡県のHPによると、<平成16年(2004年)、アメリカ・ニューヨークのロックフェラー大学で開催された「ワンワールド・ワンヘルス」をテーマとするシンポジウムに集結した世界保健機関(WHO)や国際獣疫事務局(OIE)、国際連合食糧農業機関(FAO)など世界中の専門家が感染症リスクの抑制を図る戦略的枠組みとして提示した12の行動計画(マンハッタン原則)を経て、平成24年(2012年)に世界獣医師会と世界医師会が「ワンヘルス推進の覚書」を調印したことで、ワンヘルスの取組は、医学と獣医学の垣根を超えて世界に広まることになりました。>
※なぜ国境や国柄をなくそうとするロックフェラー家のワンワールドと並列されているのか。ワンヘルスが世界支配のためのツールとして使われている気がしてなりません。
 
以下は今日読んだばかりのネット記事の一部ですが、劣悪な環境で大量生産し豚インフルエンザの発生源になったこともあるグローバル企業を野放しにしていたくせに、随分矛盾に満ちた取り組みのように思います。海外のグローバル企業はいいが、自国の零細企業はだめだということかもしれません。庶民から消費税はきっちり取るが、中小に押し付けている大企業には消費税を還付するのと似ています。
 
▽「豚の福祉」に波紋 肉販売規制に生産者悲鳴 米
3/23(土) 20:21配信
【ニューヨーク時事】ストレスの少ない環境で家畜を育てる「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を巡り、米西部カリフォルニア州の法規制が畜産業界に波紋を広げている。
飼育方法の基準を満たさない豚肉製品の販売を州内で禁じることが柱で、対応には畜舎の改造費などがかさむため、生産者は悲鳴を上げている。
同州が提案した規制法は、2018年の住民投票で承認された。反発した生産者団体が訴訟を起こしたが、連邦最高裁が23年に規制法を支持する判断を下したことを受け、今年1月に完全施行された。
 
※妊娠中の母豚が自由に動き回れるような面積確保を義務付けたそうです。グローバル企業は今も海外で身動きできない妊娠ストールという柵に閉じ込めているでしょう。
動物福祉を突き詰めれば、遺伝子改変した人の臓器をブタに移植するかもしれません。ワンヘルスにはそれすら許容する何でもありの恐さがあります。

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