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米ドル100年の栄枯盛衰を正しく理解しましょう

12月17日読売新聞朝刊の一面下にゴールドマンサックスの元トレーダーが書いたという「きみのお金は誰のため」の広告がありました。読む気はまったくしませんが、「お金自体に価値はない」という一文が目を引きました。すでに10万部も売れているということです。確かに米ドル始め世界中の通貨は不換紙幣で紙切れですが、ゴールドマンサックス発のお金の話は、自分たちに都合のいいように話しを捻じ曲げていることでしょう。
代わりに「ロックフェラーの完全支配 マネートラスト(金融・詐欺)編」(ウィリアム・イングドール著、為清勝彦訳、2011年徳間書店)を推薦します。いわゆるウォール街の彼らの価値観には、モラルの微塵もなく、何よりも利益の最大化しかないことがわかります。
 

米ドルを世界の決済通貨にするのは長引く戦争


JPモルガンの共同経営者トーマス・W・ラモントはアメリカ参戦の2年前の1915年4月フィラデルフィアで「アメリカ政治・社会科学アカデミー」の徴収に重要な演説をしている。
「戦争さえ長引けば、外国政府への壮大な規模で資金の貸し手になれ、遅かれ早かれ、英ポンドではなく米ドルが世界の決済通貨になる」
 

第二次世界大戦で世界は米ドル本位制になった


ブレトンウッズ(1944年)の新ルールでは、たった一つの通貨=米ドルだけが金に裏付けられる制度をワシントンは強要した。他の全ての通貨は、ドルに対して価値が固定された。
※これが金為替本位制と言われる米ドル本位制。そこが通貨発行権を持つ他の3国英国、中国、日本と決定的に違う点です。
 

インフレを輸出し貿易相手国に吸収させる


1945年以降、貿易収支の黒字によりドルが蓄積しても、諸国の中央銀行は米国債に投資する以外に道がなく、実質的に米国の世界的な軍事拡張を資金支援することになった。米国の赤字が累積するにつれ、一定だった金備蓄に対し、ドルの流通量は激しく乖離していった。基軸通貨を握る米国は、実質的にドルの価値を切り下げることで、貿易相手国にドルのインフレを輸出し、吸収させることができた。
 

ドルショックからリーマンショックまで米ドルの位置づけ


 
第一段階 石油ドル期 1971年8月から1970年代末
第二段階 下支え期  1979年10月から1989年ベルリン壁倒壊まで
第三段階 アジア攻撃期 1997年から2002年まで
第四段階 グリーンスパン金融革命期 2002年から2007年
 

デリバティブ市場の規模が20年で231倍、新たな火種に


1987年の暴落以来、グリーンスパンの連邦準備制度が金融派生商品を規制しないように努めたことが貢献し、世界中でデリバティブ取引が爆発的に増加した。デリバティブ市場は2006年末には370兆円(1987年比で231倍)という驚異的な規模になった。取引量は把握不可能だった。(略)
(投資銀行と保険業から商業銀行を分離していた)グラス・スティーガル法が1999年に廃止され、制約が消えると、銀行は証券化した住宅ローン債務や類似の商品を、銀行の帳簿からリスクを外すために設立した全額出資のSPV(特別目的媒体)を通じて提供した。彼らは、歴史的に最大の金融詐欺(サブプライム証券化詐欺)へと発展する行為を、直接・意図的に共謀していた。
 

帳簿から負債を消すことに並々ならぬ情熱を傾ける銀行のことを私たちは余りにも知りません

金融の規制緩和で最後の貸し手は納税者に


(グリーンスパンが行った金融制度の規制緩和の)結果は、2007年以降の証券化の瓦解のように、究極の「最後の貸し手」(銀行のリスクの責任を取る者)は、納税者であるアメリカ国民になったのである。
 

金融部門は40年で経済全体の利益の20倍に


1980年代のS&L危機のときに金融監督官をしていたウィリアム・ブラックは米国が数十年で金融寡頭制に変質し、財力と権力が同一視されるようになったことを述べている。
40年前実物産業は金融部門よりも成長していたが、当時の金融部門は経済全体の利益の2%を受け取っていたが、今日は40%である。
資本市場は実体経済の資本形成を妨げている。労働力が不足する中、理系の学歴者は実物経済よりも遥かに処遇のよい金融部門を選ぶことが圧倒的に多い。
会計上の利益に病的に固執する金融部門は、米国の製造業・サービス業に雇用を海外移転させるように圧力をかけ、労働組合のある会社に資本を出すことを拒否し、海外のタックス・ヘイブンを使うことを奨励する。
少数の金融機関に権力が集中することの意味を考察したブラックは、このシステムは必然的に、常に新しく常に前よりも大きな金融バブルを作らなければ存続できず、生成されたバブルは当然ながら破裂する以外にないことを指摘している。
 

借金に支えられた経済成長


ブルッキングス研究所の報告(2009年6月)によると、2000~07年の世界消費の伸びの3分の1が米国の消費増だったという驚くべき内容になっている。この米国の消費が、まさに借金で賄われていた。
その米国経済が2008年末に急降下したため、残り全世界に衝派が走ったわけである。
※米政府の公的債務負担は急増し、ブレトンウッズ体制以降に確立した金為替本位制(米ドル本位制)から、金為替本位制離脱のドルショック以降は石油と安全保障を組み合わせて維持していた米ドルへの国際的信頼感は崩壊しつつあると言えます。
 
ゴールドマンサックスの言うお金と大半の庶民のお金の定義はまったく違うと考えた方がいいでしょう。
 

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