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静寂の局地点

夜中にWeb漫画サイトをパトロールしていたら、好きな漫画家さんが鬱病を患っていた事を知り、ちょっとショックを受けた。

町田洋氏の作品は、シンプルで幾何学的な描線の中に、日常では言葉にできない感覚や感情がこれでもかというほど叩き込まれている。

「夜とコンクリート」も色んな人に薦めてきた漫画だった。同作品集では、心を病んだり、傷ついたりしている人達が、未知の出来事に遭遇し、再生したり、成長していくまでが描かれている。

夜とコンクリート

不眠症の建築士が、建物と喋れる不思議な青年との出会いを通して回復していく様が描いている。夜の都市空間とか、ふとした静寂が好きな人にたまらない。

夏休みの街

夏休み、三人の大学生はバーベキューの最中、大昔の戦闘機を見つける。さらにそこで、「この戦闘機は私の友人のもので、私は別の世界から彼を連れ戻しにきた」という謎の老人が現れる。ネタばれになるので多くは語らないが、これは仕事に疲れた人の心にグサリと刺さる話しだと思う。

青いサイダー

主人公は母子家庭で団地住まいの少女。いつも苛立っている母親との生活は辛かったが、女の子には常に寄り添ってくれる「特別な存在」がいた。
キャラクター同士の繊細な心の交流が丁寧に紡がれていて、オッサンの僕はもはや泣きっぱなしだった。

発泡酒

十九才の時、夜の公園で発泡酒を飲みながら「音楽を作る事がオレの全てだ」と語る友人の言葉に主人公は深く感動する。そして月日が経ち、久しぶりに同窓会で再会した同じ友人に音楽の話を聞くと、、

あぁこんな経験、誰しも一度くらいはあるのではないだろうか。

以上の作品達は、それぞれの作品に持ち味があって、人に勧めると、みんな心に刺さるストーリーが全然違う。

こんなすごい作品集を作れるのだから、次の作品に対する周囲の期待も大変大きかったと思う。うつ病の原因は語られていないが、もしかしたらそういったことも一因だったかもしれない。

尚、同氏はトーチwebにて復帰し、エッセイ漫画を新しく掲載している。

新しいエッセイも、相変わらずシンプルでスッキリしつつ、読者に考える余白を与えるような仕上がりだった。

ゆっくりとしたペースを保ちながら、少しずつ回復してほしいと思う。

真実の感動を描き出す稀有な作家さんを、これからも応援していきたい。

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