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都道府県魅力度ランキングにおけるバイアス

最近、都道府県魅力度ランキングの2021年版が発表され、群馬県の山本知事が「根拠不明確、毅然とした対応取る」と言ったり、最下位の茨城 大井川知事(MS時代の先輩です)は「痛くもかゆくもない」と言ったりと話題になりました。

調査をどこまで信じるのか

魅力と言った感覚的な情報を定量化するのは意外とよく行われている調査で、比較をしたり順位付をする点においては有効な手法です。実際、この調査もランキング形式で各都道府県が相対的にどの位置にいるのか、時系列でどのような変化をしているのかを把握するのには役立つと思います。

ただし、こう言った印象に起因する調査で注意しなければいけないのが、全体像と属性別の傾向の違いです。特に今回のような地理的な対象を調査するような場合は、その対象と居住地や出身地の距離感が大きな影響を与える要素となります。残念ながら、無償でみられる範囲では属性のデータがないので、踏み込んで調べることができませんが、似たような調査の場合はそう言ったクロス集計を怠ってはいけません。

調査項目

属性に加えて注意しなければいけないのが、調査項目です。魅力度という曖昧な情報を何から読み取ったかは非常に重要です。特に今回の場合は、先ほど言った居住地や出身地と関連して影響が出るような項目があるかないかを確認する必要があります。

上に貼ったリンク先に調査結果のパンフレットがダウンロードでき、そこに大まかな調査項目が載ってました。それを引用します。

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出典はこちらです。

こちらの項目を見ると、居住意欲度と観光意欲度と言う項目があります。この項目は対象となる地域と居住地、出身地の距離感の影響を受けやすい項目です。おそらく、居住意欲度と観光意欲度に関しては居住地や出身地とのクロス集計をしてその影響ををみた方が良いといえます。

発生したであろうバイアス

ここからは、実際のデータをみていないので、完全な推測となります。実際にマーケティングで使うときはデータを見ないで推測することは危険ですが、仮説を立てると言う意味では有効な手段です。

ということで、私がこの調査で発生したであろうバイアスの仮説を立てたいと思います。もし、データを持っている人がいたらこっそりと答え合わせをして教えてください。

私が立てた仮説は、回答者の中で関東圏の人が多く、それが栃木、群馬、埼玉、茨城が下位に沈んでいる原因の一部ではないかと言うことです。

首都圏の人にとっては埼玉は別として、栃木、群馬、茨城と比較すると、通勤の面を考えても、利便性を考えても、東京、もしくは神奈川あたりに住みたい地域が集約してくると思います。千葉や埼玉はその次点になるかと思います。また、地方移転を考えているような人であれば、関東圏よりも外に居住することに魅力を感じるのではないかと思っています。そう言った意味で、回答者の多数を占めると予測している関東圏の方々は、栃木、群馬、茨城に対する居住意欲が低く出ているのではないかと思います。

また、観光意欲に関しては、関東圏に住んでいても、日光や那須と言った観光地は栃木にあることを知ってますし、埼玉には川越、茨城には筑波山、群馬には谷川岳などがあ流ことを知っています。しかし、この調査においては他県と比較しながら点数をつけていきます。そうなると、首都圏の人間にとって北海道や沖縄の方に魅力を感じてしまうのは仕方ありません。もしアンケートが絶対値で聞いていたとしても、結果的には「相対的」評価になってしまいます。やはり、近場の観光地は実際に行くことはあると思いますが、やはりそれは小旅行といった位置付けで、観光という意味では(特にこのコロナ禍の最中で)なかなか行けない観光地の方が魅力的に感じるのは当然のことです。

ということで、この調査の回答者に関東圏の人間が多かったのではないかという予測のもと、それがバイアスとなり必要以上に栃木、群馬、埼玉、茨城の順位を上げているのではいかという仮説です。

まとめ

もちろん、もっと読み込めばいろんな仮説を立てられると思いますが、如何せん無償で見れる範囲での情報は順位と点数ぐらいなので、この辺で。

このように、実際のアンケートは属性ごとの分布と傾向が、全体の数字に影響を与えることがあると言うことは知っておいた方が良いです。加えて、数字を押し並べて調べるためのウェイトをかける(属性ごとのサンプル数を均一化する)という手法も知っておいた方が良いと思います。

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