長年、拝み屋の仕事で使ってきた水晶をお譲りいたします。 ガラス玉ではなく、本物の水晶になります。 仕事場の祭壇に祀って、20年ほど使ってきました。 20年間、大事に使ってきたという意味で、20万円を最低価格として、大事にお使いいただける方を優先にお譲りしたいと思います。 ご自宅や職場の魔除、御守りとしてお使いいただくように拝ませていただくこともできますし、ご同業の方はそのまま仕事用にお使いいただくこともできると思います。 大きさは10センチほど。重量はお
相変わらず苦しい情勢が続いておりますが、なんとか踏ん張りながら生きています。 皆様のご支援もありまして、2月末までに工面しなければならない件の30万円は、今日までにおよそ3分の1、10万円ほどを貯えることができました。ありがとうございます。 とはいえ、まだまだゴールが見えない状況に苦心する日々が続いています。近日中に、以前からお問い合わせの多かった御札の取り扱いを開始するとともに、私財を処分するなどして、どうにか期日までに賄おうと考えております。 noteのほう
■さくら流し 我が家に市松人形が届いて、10日余りが過ぎた。 4日ほど前から人形は、仕事場の祭壇のどまんなかに、でんと構えて座っている。 極めて異様な光景なのだが、これには深いわけがある。 あの後も毎晩、箱の中で人形は動き続けた。魔祓いをかけると一時的に治まるのだが、翌日になれば再び動きだすか、さもなくば魚のボトルキャップに乗り移って暴れた。 本来ならば、一刻も早くどうにかしなければならないことは分かっていた。 けれども昼間の仕事に加え、ゲラの修正作業も忙し
■忌み人形 「なんとか処分をお願いできないでしょうか――?」 2017年3月初め。南方ではそろそろ桜が蕾を開きかける、春到来の時節である。 寿子さんという女性客から、メールで人形処分の依頼を受けた。 彼女が暮らす実家には、古びた人形がたくさんある。市松人形やフランス人形を始め、尾山人形に博多人形など、種類は雑多で様々らしいのだが、そのうち何体かの人形から“霊的な冷たい念”を感じるのだという。 圧迫されるような“冷たい念”を感じる以外、これといった実害が生じたこと
本日で45歳になりました。 気持ちを新たにさらに前へと進んで参りたく。 けれども斯様な気概に対して、目の前に散在する障害は一筋縄ではいかず、毎日頭を悩ませながら、日々自分にできうることをやり続けているという感じです。 昨年ふたつに増えてしまった持病に関しては、どうにか騙し騙し付き合っている感じ。 どちらの病気も今後、悪くなることはあっても良くなることはないと言われているものなので、せめて悪くなるまでの時間が少しでも延びてくれるよう、あれこれ工夫をしながら生きるよう
■痺れを切らす お盆のさなか、年配の篠江さんが夜中に自室の布団で寝入っていた時のこと。 突然「おい」と声をかけられ、はっとなって目が覚めた。 枕元には、顔色を灰色に染まった亡き夫が、憮然とした表情で篠江さんの顔を覗きこんでいる。 思わず「ひゃっ!」と悲鳴をあげて飛び起きるなり、夫の顔はぱたりと仰向けになって倒れた。 見るとそれは、仏間の長押に掛けている夫の遺影写真である。 篠江さんは独り暮らしのため、枕元に写真を運んで来る者などいない。写真が勝手に長押から飛び
■お車で 厚木さんは市街の住宅地に立つ一軒家に暮らしている。 彼が高校時代に体験したという話である。8月の遅れ盆、迎え火の日のことだった。 夕暮れ時、2階にある自室でくつろいでいると、母が階下から「迎え火の準備を手伝って」と声をかけてきた。窓ガラスの向こうは、暗みを帯びた藍色に染まりかけている。 窓を開けて何気なく外の様子を見ると、家の前に延びる狭い道路に長い車の列ができていた。 いずれも黒いボディの車である。 車は路上の片側車線に間隔を詰めて一列に並び、家の
■ドアスコープ 都内で飲食関係の仕事をしている篠子さんは、五年ほど前の一時期、豊島区にある2階建ての古アパートに暮らしていた。真冬のひどく寒い晩のことだったという。 深夜1時過ぎ、寝床に入って微睡み始めていると、突然ドアのチャイムが鳴った。 こんな時間に誰だろう……。訝みながら起きあがり、足音を忍ばせながらドアスコープを覗く。 ドアの外には、蛍光灯が投げ落とす仄かな明かりに照らされた無数の小さな首が浮かんでいた。 大きさはピンポン玉と同じくらい。男も女もいたし
■魔法のケーキ屋さん 恵菜さんという、現在30代半ばになる女性が体験した話である。 小学3年生の時だという。学習発表会で彼女のクラスは、合唱をすることになった。 誰もが知っている童謡や当時流行っていたテレビアニメの主題歌など、全部で3曲を唄うのだけれど、恵菜さんは合唱には加わらず、ピアノの伴奏をすることになった。 当時、彼女は母親の教育方針でピアノ教室に通わせられていた。 だから他のクラスの子たちに比べれば、上手にピアノを弾くことができた。 けれども極度の緊張
■光りし者 兼業農家の加納さんは、こんなものを見たことがあるという。 ある年の秋口、地元の寄合いに出掛けた、帰り道のことだった。 自宅へ向かってまっすぐ延びる田んぼ道を歩いていると、田んぼの中にちらりと人影が見えた。 視線を向けたところ、漆黒に染まった田んぼのはるか遠くにセーラー服を着た少女が突っ立ち、こちらをじっと見つめている。 加納さんは即座にその場を駆けだし、家へと全速力で逃げ帰った。 まずいと感じたからである。 少女は路上から50メートル近くも
■映りしは 勝田さんという、現在四十代の男性が20代の頃に体験した話である。 当時、勝田さんは仕事の関係で関西地方のとある街に暮らしていた。 真夏の深夜、仕事絡みで親しくなった友人たちと国道沿いのファミレスで時間を潰していると、そのうち暇を持て余した友人のひとりが、「肝試しに行かないか?」と言いだした。 ファミレスから二十分ほど車を走らせた街外れに、廃墟になったラブホテルがあるのだという。地元ではそこそこ名前の知れた心霊スポットだったが、自分は一度も中に入ったこ
■吹雪の跡 秋田県出身の有田さんが、高校時代に体験した話だという。 新たな年を迎えてまもない時季のこと。日暮れ時から近隣一帯が、激しい暴風雪に見舞われた。勢いは夜が更けていくにつれていや増し、戸外には横殴りの風が吹き荒ぶ、鋭い叫びが木霊する。地元はそれなりに降雪量の多い土地柄だったが、これほどまでに風が猛るのは珍しいことだった。 夜半過ぎ、有田さんが自室のベッドに潜りこんでしばらく経った頃である。 出し抜けに「ばあーーーん!」と響いたけたたましい轟音に、びくりとな
いやはや。凄まじい勢いで行く手を阻む事態が続いています。 まずは病気の件。 2018年に判明したグルーヴ膵炎に続き、もうひとつ厄介な持病が増えてしまいました。 今のところ詳細は伏せますが、グルーヴ膵炎と同じく、完治が困難で、継続的な治療と薬の使用が必要な病気とだけ記しておきます。 膵炎の治療費だけでもばかにならないというのに、また余計な出費が、おそらくは死ぬまでずっと続くのかと思うと、やりきれない気持ちになってしまいます。 こうした身体的な不運だけでも十分だと
2014年4月にMF文庫ダ・ヴィンチから発売された『拝み屋郷内 怪談始末』は、実質的に私のデビュー作となります。 企画が持ちあがったのは、前年の10月。 第5回『幽』怪談実話コンテストで大賞を受賞したとの連絡を編集部からいただいてまもなくのことでした。渋谷のメディアファクトリーで当時の担当編集者と初めて顔を合わせた際に、大雑把な話が決まりました。
■ぼん、ぼん、ぼん 都内で会社勤めをしている小山内さんの話である。 8月の月遅れ盆に、彼は群馬県の田舎町にある実家へ帰省した。 帰省2日目の昼下がり、両親は親類宅へ出掛け、小山内さんは茶の間で昼寝をすることにした。 茶の間と隣接する仏間を隔てる襖は開け放たれ、座敷の奥に設えられた精霊棚が見える。 縁側の窓ガラスも開放され、時折吹きつける微風が、軒先に吊るされた風鈴を涼やかに鳴らす。外では庭木に留まったミンミンゼミが盛んに声をあげていた。 ふたつに折った座布団を
■ずんどごキャット 「嘘みたいな話だけんど、この目でしっかり見たんだから仕方ねえ。本当に本当の話なんです」 宮城の片田舎に暮らす80代の寺守さんが、躊躇いがちにも語ってくれた話である。 今から60年ほど前、昭和四十年代の終わり頃で、寺守さんが二十代だった時分のこと。 ある晩、寺守さんは、近所に暮らす従兄の家に将棋を指しに出掛けた。 帰途に就いたのは、時刻がそろそろ深夜を跨ぐ頃。懐中電灯を片手に暗い夜道を歩いていると、ふとどこからか「ずんどごずんどご」と、景気のい