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デジタルバレンタイン【毎週ショートショートnote】

「ねぇ、キスして」

「え、でも……まわりに人がいるよ」

「いいじゃない。今日はバレンタインなのよ」

「じゃあ、いいよ。こっちきて」

背の低い彼女は小さい体をこちらに向けた。彼女の顔が近づいてきて、長い睫毛が僕に当たりそうになりながら、僕らのくちびるは重なった。

「ふう」照れた顔の彼女は、僕を見つめている。

「満足した?」

「満足したわよ」

「あっ、流れ星だ!」

「ほんとだ。あっちにも流れ星!今日はすごいね。そして、満天の星空よね」

彼女が星空を見上げ、目を輝かせている。

「こんなに満天の星空が見れるなんてだね」

「ずっとここにいたいわ」

「そうだね」

そのとき、急に星空から、国生さゆりの『バレンタインデーキッス』が流れてきた。

「バレンタインデーキッス~リボンをかけて~シャララ~」

彼女をふと見ると、それに合わせてフロスダンスを踊っている。

「あ、もうログアウトするよ」

仮想空間で行われたデジタルバレンタインイベント。

僕はVRゴーグルを外した。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※現実と変わらない、むしろ現実よりも美しい仮想空間。映画マトリックスのようなものが将来的に現れるのでしょうか。



*この記事は、以下の企画に参加しております。


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