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ごはん杖【毎週ショートショートnote】

「ばあちゃんの杖は、上部にこぶし大のコブがついていて、まるでゲームの中の魔法使いが持つような杖でした。ばあちゃんは、お米と水を入れたボウルにコブの部分を入れてぐるぐる回し、ごりごりとお米を研いでいました。僕は心の中でその杖のことを『ごはん杖』と呼んでいました。ばあちゃんが土鍋で炊いたごはんはとても美味しかったです」

「良いコブ出汁が出るんだろう」僕の父が言ってきた。

「あなた!」

「失敬!」

「そして、僕はばあちゃんのその杖を折ってしまいました。もちろんばあちゃんに謝って、そのあと新しいアルミの杖と炊飯器を買ってあげました。だけど、その時から、ばあちゃんの体はどんどん小さくなっていきました。ごめんなさい……」

「あなたのせいじゃないのよ。90歳まで生きれば大往生よ」

「だけど、僕は悲しくて」

「作家の誰かが『悲しみは愛の絆』っていうことを言っていたわ。その悲しみはばあちゃんとの愛の絆なのよ。今は悲しみに寄り添っていなさい」


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※あまりエモくはなってないですね。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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