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人生を変える「ひとこと」

僕はこれまで、人生や人を変える「ひとこと」に救われ、目標を決めることができ、勇気づけられました。
とても著名な方の有名な言葉や、もったいぶって名言かのように言われたような言葉ではなく、何気なく、普段の言葉使いで言われた「ひとこと」こそ、自分に深く刺さると思っています。
 
 
「人生を変えるひとこと」について、僕は次のように考えています。
・ぼんやりとしか見えていなかった将来の夢や、自分のやりたいこと/なりたい姿がだんだん輪郭を帯びて見えてきたり、少し近づいてきたりする言葉
・これから自分の進む道の角度を少しだけ変えてくれる言葉
・自分の価値や存在を認めて、勇気や自身を与えてくれる言葉
 
多分、そのひとことを発した方は覚えていないかもしれません。でも、もらった方はいつまでもいつまでも、そのひとことをくれた人のことのみならず、もらった状況やその時の心情まで色鮮やかに覚えています。
 
そんな「ひとこと」には、2種類あると思います。


【1】本当にその人のことを思って言った「ひとこと」
このひとことは、勇気や自信、立ち直るきっかけをくれます。
自身の体験も踏まえ、いくつか紹介しますね。
 
1)高校時代のバドミントンのコーチがくれたひとこと
 
「お前は試合中に怒りさえしなければとてもいい選手になる。それで勝ちを潰しているのは本当にもったいない。今後同じことをするともうお前に教えるのはやめる」
 
幼い頃から高校の途中まで、僕はとても短気で気に入らないことやうまくいかないことがあると自分に腹を立て、八つ当たりばかりしていました。
怒りに任せてばかりだと、バドミントンはもちろん、勉強や人間付き合いにも大きな影響が出てしまうこと、取り返しのつかない大きな失敗をしてしまうこと気づかせてくれ、自分がいかに子どもだったかを痛感しました。
高校2年生でそんな当たり前のことに気付かされるなんて少し情けない気もしますが、怒りに身を任せる人や自分の感情をコントロールできない人を見かけるたびに、あの時、コーチが正面から叱ってくれたことが、今でも自分の大きな財産になっています。
 
 
2)社会人1年目に部長がくれたひとこと
 
「君には、1年目には3年目の仕事を、2年目には5年目の仕事をしてもらう」
 
メーカーの営業マンとして配属初日に当時の部長からこう言われました。僕のことを戦力として期待していること、昨年までの学生気分では困るぞ、という思いがとても上手く言葉に乗っていて、かつ、入社してすぐの右も左もわからない、営業マンとしてのモチベーションもない僕にやる気を出させる、とても思いやりに満ちた一言でした。
実際、上の言葉のとおりに1年目からとても重要な仕事を任されました。当然、嫌なことややる気がなくなることは何度もありましたが、「僕は新卒よりすごい仕事を任されているんだ」と誇らしく感じたことを今でも鮮明に覚えています。
 
そんな状況で必死に働いていました。
営業マンといえば、お客様と必死に価格や納期調整し、見積を出し、トラブルの際には謝罪するイメージを多く持たれているかと思います。
でも、メーカーの営業マンが一番大変なのは、社内(特に工場)との調整です。製造部門と生産スケジュールの調整をし、品質保証部門や技術部門と顧客への報告内容をすり合わせ、初めてお客さんへアウトプットできます。
「メーカー」の工場に勤務され、自社製品の生産に携わっている方々は歴戦の勇者たちです。高品質の製品を安定して製造し続けること、何かトラブルがあった際は自社ブランドの看板を背負ってたくさんのリスクを考慮して対応することなど、将来の会社の存続のため必死に働いています。ちょっと前まで学生で、工場研修もロクにしていない新卒の営業マンがするお願いや指示なんて、まともに聞いてくれません。
顧客対応のストレスと報われない社内対応が嫌になり少し腐っていたとき、部署の飲み会で部長からこんな言葉を言われました。
 
「工場のメンバーは、みんな君を評価している。よくやっていると言っている」
 
正直、自分ではそんなことは全く思っていませんでした。今思うと、僕が腐らないために部長が言っただけなのかもしれません。でも、不器用ながらも必死にやってきた頑張りや、少しでも課題を解決しようとする姿勢を誰かが見ていてくれたことの喜びと、自分の行動は無駄ではなかったことを評価してくれた安堵感で、とても報われた気がしたことを覚えています。
 
その会社には8年程度在籍した後にいろんな事情があって退職してしまったのですが、退職する頃には「辞めるのか、寂しいな」「工場目線で考えて、顧客にも対応してくれたから嬉しかった」等の言葉を様々な方からいただくことができたことが今でも僕の誇りです。
 
この部長と一緒に働けた期間は2年程度しかありませんでしたが、社会人になりたての僕のモチベーションをうまくキープしてくれて、今でもメーカーの営業マンとしてなんととかやれているのは、当時のこれらの言葉のおかげだったなと、しみじみと思います。
 

もう1つは、
【2】何気なく言われたけど、自身にとっては思いがけず重要だったひとこと です。
 
そのひとことは、自分の中に浮かんでいたそれぞれのピースを繋いでくれる大事なピースであったり、これまでに打ってきたいろんな点と点を繋いでくれる線になったりします。

※フレーズを紹介する前に、僕が感銘を受けた本やスピーチを参考までに紹介しておきます。


◆ピースを繋げること
「賢者の書」喜多川 泰・ディスカヴァー・トゥエンティワン社


◆点と点を繋げること“Connecting the dots”
スティーブ・ジョブズ 米スタンフォード大卒業式(2005年6月)にて
※気になる方はネットで調べてみてください。和訳で全文読むことができます。
 



では続きを、

「幅広い仕事をしていろんな人に関わりたいなら、メーカーに就職してみたら?」
 
公務員試験勉強をする金も公務員への憧れもなく、「就活どうしようかな」と考えていた大学3回生のころ、何か始めなきゃと半ば投げやりな気持ちでとある自動車ディーラーにインターンシップへ行ったときに、このひとことをいただきました。
 
そのひとことをもらうまで、メーカーに行こうという気は全くありませんでした。そもそも、たくさんある業種の中で、「メーカー」というカテゴリーすら正確に認識していたかも疑問です。
でも、そのひとことを聞いて、自分はすごい機能と独自性を持った製品や素材にとても感動すること、それを製造・販売し社会に貢献することで自身および自社への誇りを感じることが、最も腹落ちする社会人像だったことなどをビビッと感じられました。
それ以降は、メーカーに就職するためにはどういったステップが必要で、どの分野を志望しようかなどを考え行動するようになりました。
とても些細だけど、自身のやるべきこと、やりたいことが明確になるきっかけをくれるひとことでした。
 

次は自身の体験ではないのですが、とても好きなシーンなので紹介を
 
僕が最も好きなマンガである
「それでも町は廻っている(石黒正数・少年画報社)」
の14巻106話「図書館の回し者」にて


それまで、漠然と本が好き、作家(探偵)になりたい、でも具体的には何をしてどういうルートでなるかわからない。という主人公の歩鳥が、先輩と一緒に図書館へ行ったとき、先輩から何気なく次のように言われます。

「お前そんなに本がすきなら 図書館の人になりゃいいじゃん」
 
この何気ないひとことで、今までの興味や好きなこと/やりたいことと、将来進むべき道が繋がって、やることが具体化してくる。ワクワクドキドキしてなにか一歩始めたい。と歩鳥は考えるようになります(推測含む)。
具体的には、図書館司書になれれば大好きな本に囲まれながら、作家への道も目指すことができる。図書館司書になることができる大学・学部を把握することで、勉強すべき教科や必要な学力がわかってくる。という感じで、輪郭を帯びた将来の目標と、それを実現するためにやるべきことが順序立てて目の前に現れてきます。
・・そして、最終巻のエピローグに繋がっていきます。
(未読の方はぜひ読んでみてくださいね)
 
 
 
上記以外にも「ひとこと」をいろんな方からいただいてきましたが、つい最近、僕も地元の友人に与えることができました。
 
彼は、大学を卒業してからというもの、危機感を持ちながらも特に行動を起こさず先延ばしにしていましたが、僕の「ひとこと」で決心がつき、無事転職に成功したというものです。
正直、僕は一緒に酒を飲んで彼の背中を押しただけ。どんな「ひとこと」を伝えたかも、ビールのアルコール分と共に僕の頭からは飛んでいってしまっています。でも彼にとっては、人生を変えるきっかけとなる、忘れられない「ひとこと」になったようで、とても感謝されました。
 
 
夢なんかなかった子ども時代にこんな言葉を与えてくれる人がいたらな、と若干の寂しさは感じますが、そんな「ひとこと」をこれからは自分の子ども、友人、後輩たちに少しでも多く与えていくことができれば、と思います。
 
おわり





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