差し替え職人
曲を作ったりアレンジの仕事をしていると、管楽器や弦楽器などの自分では弾けない楽器や、生演奏のドラムやパーカッションなどをそれぞれの楽器のプレイヤーにお願いしてスタジオでレコーディングさせてもらうことが多々ある。これは「差し替え」などと呼ばれたりする。
僕はこの「差し替え」レコーディングがとても好きだ。レコーディング日の前までに楽曲制作ソフトで打ち込みをしてアレンジを詰めておき、楽譜などを用意して各プレイヤーに渡し、本番にのぞんでもらう。
もちろん同じドラムでも、叩く人によってまったく音色もグルーブ感も異なるので、その曲に合った人を適切に選ぶことがとても重要だ。人事。
皆んなプロフェッショナルなのである程度どんな方向の演奏もできるのだが、それでも尚、一番ぴったりくる人(それは往々にして最初にぱっと頭に思い浮かぶ)に声をかけることが、この差し替えの「肝」になってくる。
当日は僕(アレンジャー)の役割はそんなにない。世間話をしながらリラックスして各プレイヤーに気持ちよく演奏してもらう。
コーヒーもすすめる。(自分が飲みたいので)
ファーストテイクを演奏してもらって、お互い話し合いながら細かな調整をする。ちょっとした弾き方、ニュアンス、リズム、盛り上げ方...
だいたい数テイクで「これだ」という演奏が聴こえてくる。
僕が好きなのは、この時の演奏しているプレイヤーたちの職人的な姿だ。音の細部にまで集中力が張り詰められていて、それでいて音楽的で、感動せずにはいられないエモーションが溢れている。彼ら彼女らの長年の蓄積が技となって楽曲に注がれていく時、本当にこの仕事をやっていて良かったと幸福に思うのだ。
良いテイクが録れたら、それを一緒に聴きながら最終調整をする。
皆んなが帰ってからエンジニアと二人でゆっくり聴きかえす時間もとても好きだなぁ。
もちろん自分がギタリストとしてレコーディングに出向くこともあるんだけれど、その時はわりと「一丁あがり」で終わったらそそくさと帰ったりして、だいぶ心持ちが違うものだなと思う。
目指せ書籍化📓✨ いつかライブ会場のグッズ売り場にエッセイ集を平積みにしたいと思います。