【薬剤師稲田伸一の薬物乱用防止教室(小学校6年生対象)前編】

おはようございます!
今日は皆さんの2時間目を使って薬物乱用防止教室を行いたいと思います。

よろしくお願いします。

授業に入る前に簡単に僕の自己紹介をします。

名前は稲田伸一です。
職業は薬剤師で、豊中の夕日丘というところで小さな薬局をやっています。

学生の頃に好きだった教科は英語と理科。

休みの日は家でダラダラ寝ているか、家族とお出掛けしています。

好きな食べ物はカレー、パン、ケーキです。

今日は授業といっても、一方的に僕からお話しするのではなくて、
事前学習プリントにある5つの質問の答えを皆さんに聞きながら授業を進めていきたいと思います。

今日の授業ではポイントが3つあります。
ポイントの時には『ここポイントだよ!』と言うので、
安心して聞いていてください。

よろしくお願いします。


ではさっそくですが、1つ目の質問。

①なぜタバコとお酒は二十歳になるまでダメなの?

(ここから教室の後ろに貼ってある習字の紙の名前を見ながらランダムに生徒をあてていく)


「法律で決まってるから」

「成長するのに害があるから」

「依存性があるから」


皆さんが書いてくれた答えはどれも正解です。

じゃあ、僕や担任の先生や保健の先生や校長先生にとって、お酒やタバコは害がないの?

法律で禁止されてないってことは、害がないってこと?

そうじゃないね。

例えばタバコ。

この中でタバコを吸ってる人の肺と吸っていない人の肺を比較した写真を
教科書か何かで見たことがある人は手を挙げてください。

(ほとんどの生徒が挙手)

ありがとう。

タバコを吸っている人は吸っていない人と比較して、
ある疾患にかかる確率(罹患率と言います)が高いと言われています。

肺がんです。

大人の肺でもこんなに違いが出るのに、
身体が成長しきっていない子供のうちにタバコを吸えば
どれだけ身体に負担がかかるかは皆さんも想像できるはずです。


少し話が逸れます。


もし皆さんのお父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんでタバコを吸っている人がいたら、
禁煙を勧めてあげてください。


ただ、絶対に言ってはいけない言葉があります。

この時代にタバコを吸ってる大人は散々周りに禁煙しろだの煙たいだの言われて、
タバコが身体に悪いことも十分理解した上で吸っています。

そんな人に

『タバコは身体に悪いから止めよう』

これはNGワードです。

そんなこと言っても聞いてくれるわけありません。

皆さんも学校から帰ってYouTube見てて
そろそろ宿題やろうかなぁと思ってる時に、

『いつまでYouTube見てるの!?早く宿題やりなさい!』

とお父さんやお母さんに言われたら、
ムキになって逆に宿題やりたくなくなったりするでしょう?

人は正論で殴られると反発します。


タバコを吸ってる人に

『タバコは身体に悪いから止めよう』

は逆効果です。


何でタバコを吸ってるのか、
いつから吸ってるのか、
タバコを吸ってて辛いことはないか、
止めたいと思ったことはないか、
タバコを吸ってて良かったと思うのはどんな時か、
などなど、相手に寄り添って、少しずつ禁煙を提案してみてください。


アルコールも同じです。

もし家族が飲んでるお酒を見る機会があれば、
そこに書いてあるアルコール度数を確認してみてください。

最近はアルコール度数の高いものも流行しています。

12%や9%といったストロング系のお酒を何本も飲んでいるようであれば、
まずは少しずつ本数を減らす、
その次はアルコール度数を下げるなどして、
皆さんの身近な人の健康を守ってあげてください。


少し話が逸れました。

では、2問目です。


②違法薬物は一度使うと止められなくなりますが、どうしてだと思いますか?

「気持ち良くなるから」


「脳から何か物質が出てくるから」


「依存性があるから」

どれも正解です。

10月から始めたこの小学校での薬物乱用防止教室ですが、
この1ヶ月で有名な芸能人が2人逮捕されました。

そのうちの一人は、
2001年に初めて警察に捕まって、
それから何度も更生を試みて、
自分が違法薬物に手を染めた経験を元に、
全国を回って講演会をしていました。

そんな人が2019年に覚せい剤取締法違反でまた捕まりました。

何が言いたいかと言うと、
薬物はそれくらい覚悟を決めた人でも逃げられない、
抜け出すことが困難だということです。

何より一度薬物に手を染めた人は、ブラックリストに載ってしまいます。
薬を売る人のリストに載ってしまいます。

簡単に言うと、薬の売人からすればカモです。
こういった組織から逃れることは非常に困難です。

特に皆さんが有名になったり、
社会的責任がある立場になればなるほど、
薬物の組織は近付いてきます。

ただ、ここで勘違いしないでほしいのは、
一度薬物に手を染めてしまったからと言って、
人生が終わってしまうわけではないということです。

少なくとも僕はそんな救いのない社会は嫌だし、
これからの時代を担う皆さんはきっと薬物依存症を社会全体でサポートしていく仕組みを作ることになると思います。

そういった意味でも、しっかり薬物に対する知識を身に付けておいてください。


それでは3問目です。

③違法薬物はどこで手に入るの?

「お薬屋さん」

「マフィア」

「海外」

「インターネット」


皆さんは見たことがあるかはわかりませんが、
数年前までは普通にお店で売ってました。

ハーブやお香、合法ドラッグなどと言って、販売されていましたが、
そういった薬物を販売している店舗が一斉に摘発されて、今ではリアル店舗で見かけることはなくなりました。

販売場所がオフラインからオンラインに変わりました。

今はSNSのDMなどで簡単にやり取りができるようになりました。

隠語を使って、薬物を販売している人もいますが、
今はサイバーパトロールも強化されていてすぐに捕まります。

10年前では考えられないような方法で薬物の取り引きが行われます。

時代の先を行くのは僕らではなく若い皆さんで、
いくら僕や学校の先生が必死で皆さんを守ろうと思っても、
最前線にいる若い皆さんを守ってあげることはできません。

今はSNSがメインかもしれませんが、
10年後にはまた新しいテクノロジーの元で違法薬物の取り引きが行われているかもしれません。

だから皆さんには自分の身を守る方法を身に付けておいてほしいと思います。

そして、今日の3つのポイントのうちの1つ目です。

『どこから、どんな方法で違法薬物に狙われるかわからないということを認識しておく』

インターネットが普及して便利になった反面、
そういったリスクと隣り合わせにあるということを覚えておいてください。


では、4問目に移ります。

④親しい友達や先輩に違法薬物を勧められたら、何と言って断りますか?

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後編はこちら↓




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