【薬剤師稲田伸一の薬物乱用防止教室(小学校6年生対象)後編】

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前編はこちら↓
https://note.com/shinichi_inada/n/n5271947957b6
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では、4問目に移ります。

④親しい友達や先輩に違法薬物を勧められたら、何と言って断りますか?

「違法なものだからやらない」

「警察に捕まるからやらない」

「依存性があるからやらない」


皆さん、非常に優等生で、素晴らしいと思います。

突然ですが、今から僕は皆さんの心の中を読みます。


「あー、薬物乱用とか関係ないし、早く終わらないかなぁ」

「薬物とか使うわけないやん」

「テストに出るわけじゃないし、とりあえずこの2時間目だけ我慢すればいいわ」


みんなそう思ってるでしょ?
僕にはわかります。


『0.5%=1/200』(黒板に書く)


中学生の200人に1人は違法薬物の使用経験があると答えています。


そして、違法薬物に手を染めた理由で一番多いのは、

精神的なストレス、
痩せたい、
きれいになりたい、
楽になりたい、
現実から逃げ出したい、

そういった理由ではなく、


「友達がやってたから(大丈夫だと思った)」


200人に1人は大きな数字だと思いませんか?

他人事ではありません。

先輩とのやりとりを抜粋します。

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先輩「部活どう?タイムが速くなる飲み物あるんだけど」

私「えー、なんですか?」

先輩「でも誰にも言うなよ?」

私「それってヤバイやつじゃないです?」

先輩「みんなやってるよ!とりあえず明日絶対1000円持って来いよ!」

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サングラスをかけて、金色のネックレスをかけたいかにも恐そうな人に薬物を勧められたら、
皆さんはきっと断れるでしょう。


でも昨日まで仲の良かった先輩や親友からの誘いを、
本当にそんなにアッサリ断れますか?

200人に1人が、親友、先輩、恋人かもしれません。


無視されるかもしれないし、
嫌われるかもしれない。
恋が終わってしまうかもしれない。


そんな関係の人からの誘いを本当に断れますか?

何と言って断りますか?


それが今日の授業の3つのポイントのうちの2つ目です。


『薬物に誘われた時の断り文句を持っておく』


どんな断り方でもいいです。


「今日はお父さんとお風呂に入る約束があるから!」

「今からYouTubeの編集があるから!」

「明日病院で検査するから!」


支離滅裂でもどんな断り方でもいいので、
自分なりの断り方の定型文を持っておいてください。


そしてこの授業のあとに考えたその定型文を友達に教えてあげてください。


面と向かって薬物に誘われたら、その断り文句を相手にぶつけて走って逃げてください。

メールやLINEで誘われたら無視する、ブロックする。


とにかく薬物に巻き込まれそうになったらその場からエスケープ(離脱)する。


これが大切です。


そうはいっても、どんなに気を付けていても、違法薬物に巻き込まれることはあります。


最後の質問です。


⑤気付かないうちに違法薬物を使っていたら(売っていたら)どうしますか?


「二度とやらないと誓う」

「警察に行く」

「病院に行って、治療してもらう」


素晴らしい答えです。

この小学校の皆さんは非常に真面目な人が多い。

僕が小学生や中学生で、気付かないうちにもし違法薬物を使ってしまっていたとしても、
恐くて警察や病院には行けなかったと思います。

違法だから。

捕まってしまうから。

ダメなことだから。


皆さんの中には違法薬物のキャッチフレーズにこんなものを見たことがある人がいるかもしれません。


「ダメ。ゼッタイ。」


このフレーズはわかりやすいけど、
皆さんが違法薬物を使ってしまった時には何の役にも立ちません。


皆さんが違法薬物に手を出してしまった時にこの「ダメ。ゼッタイ。」というフレーズは
問題を一人で抱え込むことを助長してしまいます。

皆さんをより一層追い詰めてしまう危険をはらんでいます。


そこで、本日最後のポイントです。


『気付かないうちに違法薬物に巻き込まれていたら、
すぐに近くの大人(先生、お父さんお母さん、薬局の薬剤師)に相談する。
一人で抱え込まない』


これが3つ目のポイントです。


確かに違法薬物は「ダメ。ゼッタイ。」な存在です。


でも「ダメ。ゼッタイ。」だからといって誰にも相談しないでいると状況は悪化する一方です。


校長先生でも担任の先生でも薬局の薬剤師でも僕でも良いです。


一人で抱え込まずにすぐに相談して、解決の糸口を見つけましょう。


「ダメ。ゼッタイ。」は使い方を間違えると皆さんの思考を停止させてしまう恐れがあるので、
十分注意してください。

今日は3つのポイントをお話ししました。


ポイント①
『薬物に誘われた時の断り文句を持っておく』


ポイント②
『どこから、どんな方法で違法薬物に狙われるかわからないということを認識しておく』


ポイント③
『気付かないうちに違法薬物に巻き込まれていたら、
すぐに近くの大人(先生、お父さんお母さん、薬局の薬剤師)に相談する。一人で抱え込まない』


今日、僕は皆さんにニコチンがどうとか副流煙がどうとか
危険ドラッグの構造とか
医療用大麻はどうなんだとか
違法薬物の分類とか
細かい話はしませんでした。

そして、合法なものと違法なものとをごちゃ混ぜにお話ししました。


細かな分類や学術的なことはネットを見ればだいたいのことはわかります。

今日お配りしている冊子にも教科書にも書いてあります。


薬物乱用を取り上げる時、
合法か違法かに分けて話をするとどこかで必ず矛盾が生じてしまうからです。


生じた矛盾を解消するためには結局、

「ダメ。ゼッタイ。」

「法律で禁止されてるから」

という言葉を皆さんに使わざるをえなくなります。


自分が小学生だったら、
そんな理由ではきっと納得していなかったと思います。


そして、ここにいる皆さんもそんな理由では理解はできても納得はしてくれないでしょう。


なぜ違法薬物に手を出してはいけないのか、
僕なりに出した答えは


『人生の選択肢がなくなるから』


皆さんにもきっと将来の夢があるでしょう?

「YouTuberになりたい」

「サッカー選手になりたい」

「お医者さんになりたい」

その夢は全て叶わないものになります。


今日、学校から帰ったらやりたいこともあるでしょう?

「たまごっちやりたい」

「ポケモンやりたい」

「ケーキが食べたい」

「オニギリが食べたい」

「算数がやりたい」

「塾に行きたい」


それさえもできなくなってしまいます。


違法薬物に手を出してしまうと頭の中の選択肢は全て『薬物』に置き換わります。


そんな人生、望みますか?

そんな人生、歩みたいですか?


この授業の目的は知識の習得ではなく、
いかに薬物に巻き込まれないかです。


小学校を卒業して薬物に巻き込まれそうになった時、
今日の授業のことを思い出してくれたら解決の糸口になるかもしれません。


今日はほんの少ししかお話できませんでしたが、
何か困ったことがあればいつでも呼んでください。
相談にきてください。


今日はありがとうございました!


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以上、薬物乱用防止教室でした。

何でこんなスタイルの授業にしたのかは、またの機会に…

ということで、こいつ頑張ってるなぁと思ってくれた方はスキ、サポートをお願いいたします(^^)

お読みいただき、ありがとうございます! 継続できるよう努めますので、ご支援よろしくお願いします(^^)