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米著作権局が示した AI生成コンテンツのガイドライン - 著作権なし

 日々耳にしないことがない Generative AI に関する話題ですが、今年 3月にU.S. Copyright Office (米著作権局) が AI技術により生成された素材を含む著作物の審査および登録に関する実務を明確にするために AIで生成した画像の著作権登録についてのガイドラインを発表しました。
AIが生成したコンテンツとは、AIが学習した著作物をもとに新たな画像や文章などを出力することです。AIが生成したコンテンツは、人間の創造性や感性を必要としないため、著作権法上の著作物とは認められません 。
このガイドラインでは AIが自動生成したコンテンツは原則著作権が認められませんが、AI と人間が協働したコンテンツで人間の創造力が反映された部分には著作権の保護が及ぶとしていて、登録申請の際に「AIが自動生成した部分」と「人間が創作した部分」を分けて明記するよう求めています。米国の憲法や著作権法では「著作者は人間」と明記されており、AI が創作に関わったコンテンツの著作権登録を認めるかどうかは、「人間の創造性が含まれている」かが判断基準になります。

 このガイドラインのポイントとしては、まず AIが自動生成したコンテンツは原則、著作権が認められません。これは、米国の憲法や著作権法では、「著作者は人間」と明記されており、判例などもそれを支持しているためです。
AIと人間が協働したコンテンツに関しては人間の創造力が反映された部分には著作権の保護となります。具体的には、AIが生成した素材を人間が選んだり編集したり改変した場合はその部分だけが著作権の対象になります。
著作権登録申請では、AIが生成した素材の有無と人間の創造性がどう関わったかを明記する必要があり、AIを使って創作し既に登録した作品についても、AIによる自動生成について記載されていない場合は内容を訂正して追加登録する必要があるようです。

 米著作権局は AIが生成した素材を含む著作物にはこのガイドラインで扱われていない他の著作権問題が含まれていることも認識しており、今後も状況に応じた方針を発表していくとのことです。
余談になりますが、米国では著作権侵害訴訟を起こすには著作権局への登録が必要であることも留意する必要があります。

 ちなみに日本と米国の著作権法の主な違いには著作権の効力が有効となるタイミングの違いがあります。日本では著作物が創作された時点で自動的に著作権が発生しますが、米国では著作権局への登録が必要です。
また、AIが学習するために使用する著作物についても、著作権の問題が生じる可能性があります。日本には著作権者の許諾なしに著作物を AIに学習させることができる「情報解析」の規定があるようですが、この規定は AI開発にとって有利なものではあるものの、クリエーターの利益を不当に害することとなる場合は適用されないようです。また学習と生成を切り分ける必要があり、AIが学習した著作物に似たコンテンツを生成した場合は著作権侵害に当たる可能性があります 。

 今回のガイドラインのように米国では AI生成コンテンツに関するガイドラインや判例が存在しますが、AI技術の進化に伴って新たな創造性や価値を生み出す一方で、既存のクリエーターや企業の権利や利益を侵害しないようにするためには、法的な考え方や対応策を見直す必要がありそうです。

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