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『サムピック大全 : 音色・特性徹底比較』

この記事では、約30種類のサムピックを徹底的に比較し、それぞれの特長や使い勝手について掘り下げていきます。

ソロギター、バンド、歌手のサポート、そしてレコーディングやPAエンジニアとしての幅広い経験を活かし、リアルな視点からのレビューをお届けします。



- レビューの説明 -

この二つのグラフを使ってレビューしていきます。

【上のグラフ:音色の特性

横軸 : 音の明るさ
暗い←→明るい

縦軸 : アタックの質
↑ 鋭い
↓ 柔らかい

青い円 : 音響特性と倍音感
位置 ⇒ サムピックの特性
面積の大きさ ⇒ 倍音の豊かさ

【下のグラフ:各ジャンルにおける適正
バーの長さ = 適性の高さ


💭このレビューは個人的な見解に基づくレビューです。異なる意見もあると思いますが、一つの視点としてお楽しみください!

また、詳細な採点基準については記事の最後に記載しています。お時間のある方は、そちらもどうぞ!


【JIM DUNLOP / White Plastic Thumbpick】

ー 総評 ー

市場でも特に人気が高く、有名なサムピックです。

少し低音が強いですが、全体としては非常にバランスの良いウォームな音色が魅力です。アタックが柔らかいので、細かいコントロールに気を配る必要がなく、快適に演奏できます。

低音寄りのバランスが高音域を過剰にせず、メロディを邪魔しにくいので、特にソロギターを弾く方にはおすすめです。

ただ、少し低音が強いので、歌伴奏などはあまり適してないかもしれません。特にアンサンブルでは、その低音の膨らみが目立つことがあります。

音質だけではなく、サイズやしなり具合のバランスも良く、インスト系では非常に幅広く活躍してくれるサムピックです。



【JIM DUNLOP / 9206 Heavies Ivoroid Thumbpick Medium】

ー 総評 ー

低音特化で、力強くガッツのある音が特徴です。

特にソロギターでの使用に適しており、低音弦をしっかりと鳴らすことができます。これにより、重厚なバラードなどに非常にマッチします。

一方で、ストローク演奏では音が飽和しやすいため、軽やかな曲や歌伴奏には向いていない傾向にあります。また、高音域や倍音感が薄いため、単音弾きやアンサンブルでの使用もあまりオススメできません。

非常にピーキーな特性のため、万能とは言えませんが、特定の曲ではその魅力を発揮します。



【JIM DUNLOP / Clear "D" Plastic Thumbpick】

ー 総評 ー

先端が細く尖っており、クリアで雑味が少ない音が魅力です。
この形状のおかげで、弦に浅く当てるだけでも音の粒が立ちます。

低音よりのバランスですが、アタック感が鋭いので、意外にも音抜けがいいです。中低音域が厚みを持ちながらも、アタックのおかげで音が埋もれず、単音弾きでは力強さがあります。

ただ、ストロークは音が団子になり、かつ分離しすぎるので、歌ノリがあまり良くありません。
また、倍音感が控えめなため、曲によっては少し素朴すぎる印象を与えることもあります。

リードギターには最適ですが、ソロギターやバンド演奏にも使える幅広い用途があります。ただし、器用貧乏的な面もあるので、その点は考慮したいところです。



【Zookies / M-10, 20, 30】

ー 総評 ー

先端の角度が10度、20度、30度に捻じれています。(写真のM-20は20度)
この捻りにより、先端が弦に垂直に当たりやすくなるため、クリアで芯のある音を出しやすくなっています。

ただ弊害もあり、ブリッジミュートしながら低音弦を弾くのは少し難しくなります。また、ストロークやオルタネイトピッキングも、通常のサムピックとは演奏感が違うため、慣れが必要です。

私自身、シンプルなバラードなどに使用しており、独特な弾き心地にハマっています。
特殊な形状なので、ほぼソロギターにしか出番はありませんが、ハマれば強力な武器になります。



【FRED KELLY / Slick Pick Light】

ー 総評 ー

先端が丸い形状で、音が主張し過ぎないのが魅力のサムピックです。
また、弦への引っかかりが少なく、とても快適な弾き心地です。

特にストローク演奏でその真価を発揮し、歌物伴奏においては抜群の相性の良さを見せます。
低音が抑えられ、適度な倍音感やコンプ感があるため、歌ノリがとてもいいです。

アンサンブルでの演奏も、アコースティックギターのキラっとした音域が自然に抜けてきます。

厚みが薄いため、重厚感や深みのある音は出にくいですが、トラビスピッキングやウォーキングベースで、軽やかさを演出したい時は、あえてこれを使うのも悪くありません。

ソロギター用というよりは、弾き語りやアンサンブルで活躍する、名脇役的なサムピックです。



【FRED KELLY / Slick Pick Medium】

ー 総評 ー

Slick Pickシリーズのミディアム厚です。
基本的な演奏感はライトと同じですが、厚みがある分音の深みが増し、全体的にトーンのバランスが良くなっています。

ストローク演奏でも、ライトほどではないですが、音が綺麗にまとまります。
丸い先端のおかげか、弦に引っかかる感覚が少なく、滑らかに演奏できるので、プレイアビリティが高いです。

また、弦に深く当てても音が暴れにくく、浅く当てて小音量で弾いた場合でも、スッと音が抜けるため、ニュアンスを付けやすくなっています。

ただ、単音演奏では音の粒立ちが少し弱く、芯もやや細めです。
そのため、一音一音をクッキリと聴かせたい場合には最適ではないかもしれません。

弱点が少なく、様々なジャンルで高水準に使える、万能なサムピックです。



【FRED KELLY / Slick Pick Heavy】

ー 総評 ー

Slick Pickシリーズのヘビー厚です。
厚さが増したおかげで、さらに重心が低くなり、メローなサウンドが特徴です。

丸い先端と厚さにより、巻き弦のジャリジャリとした音がかなり緩和され、柔らかくウォームな、ボワっと広がるような低音が鳴ります。

また、サムピックの中でも最も弦に引っ掛かりがなく、スムーズな演奏が可能なので、プレイアビリティの面でも好む方が多いかもしれません。
ただし、弦を浅く当てると、粒立ちが悪く音が抜けてこないため、小音量での演奏やフルピッキングは苦手です。

メローなサウンドが好みの方や、サムピックに慣れていきたい方におすすめです。



【FRED KELLY / Speed Pick Light】

ー 総評 ー

高音域特化+凄くしなるサムピックです。

Speed Pickシリーズの共通点として、コンプ感があり、音量が自然に揃う感覚があります。これはサムピック初心者にとっては、音量のコントロールという最初の難関をある程度カバーしてくれます。

ただ、しなりが原因で、弦を弾く際にタイムラグが生じ、感触的なレスポンスが遅く感じられます。特に速いオルタネイトピッキングでは、しなりが速さに追いつかないため、使いこなすには慣れが必要です。

低音がかなり薄く、インスト演奏では安っぽさが目立ちます。
粒立ちはトップレベルですが、しなりが大きいため、フルピッキングでの速弾きは難しく、非常に惜しい性能をしています。

使い道は限定的ですが、歌モノバンドの中でアルペジオをした時は悪くない印象でした。
アンサンブルでアコギの音を目立たせたい人には、選択肢の一つになるかもしれません。



【FRED KELLY / Speed Pick Medium】

ー 総評 ー

Speed Pickシリーズのミディアム厚です。

Slick Pick Lightと比較すると、まとまりや歌ノリの良さはやや劣るものの、アンサンブル演奏では十分その役割を果たします。

ストローク演奏や単音弾きにおいても、パリッと音が抜けてきて、扱いやすいサウンドです。
バンドの中で、音が少し前に出て欲しい場合や、はっきりとした粒立ちを求める際には、良い選択となるでしょう。

インスト用途では低音不足が目立ちます。特にソロギターでは重要な要素なので、出番が限られるかもしれません。
ブリッジミュートをすれば、この低音の弱さはある程度は改善できますが、全体としてインストへの対応力は低めです。

独特な演奏感や対応範囲を持つため、全てのプレイヤーにお勧めできるわけではありませんが、アンサンブルでは使えるサムピックです。



【FRED KELLY / Speed Pick Heavy】

ー 総評 ー

Speed Pickシリーズのヘビー厚です。

シリーズ共通の粒立ちの良さとコンプ感を持ちながら、重心がさらに低くなっています。
厚みが増したことで、音にはっきりと芯が出て、派手で華やかな印象です。

しかし、音が前面に出すぎる傾向があるので、主に低音弦を担当するサムピックとしては、少し扱いにくいと感じることもあるかもしれません。
低音弦は通常、メロディーよりも控えめになることが多いので、他の指とのバランスを取るのが少し難しいんですね。

余計な低音がなく、音がこれでもかというくらい前に飛んでいくので、アンサンブルでのリードギター等に使うのがオススメです!



【FRED KELLY / Delrin Bumblebee Teardrop Medium】

ー 総評 ー

フラットピックを親指に固定するというユニークなコンセプトのサムピック。
単音弾きが非常にやりやすく、普通のサムピックに比べると、はるかにフラットピックのような感覚でプレイできる点が魅力です。

しかし、従来のサムピックのように使おうとすると、安定性に欠け、ピックが動いてしまうことがあります。特に、トラビスピッキングやウォーキングベースなどを演奏する際には、その不安定さが気になり、あまり好印象ではありませんでした。

ソロギター的な奏法には全体的に向いていないと感じましたが、フラットピックに近い演奏感覚をお求めの方には、一度試してみる価値はあるかもしれません。



【YAMAHA / THUMB PICK】

ー 総評 ー

低音寄りのバランスで、アタックが柔らかいウォームな音です。

どんな曲を弾いても嫌味がなく、様々なジャンルにマッチする素晴らしいポテンシャルがあります。

落ち着いた音質な一方で、シャキッとしない印象を与えることもあり、軽快な曲や明るい曲、ロックなどには他のサムピックが適しているかもしれません。
また、粒立ちが少し弱いため、速弾きとの相性はそれほど良くありません。

柔らかい素材のため、長時間使用しても指への負担が少ないのが好印象です。

幅広く使えて、かつウォームな音質を求める人にとっては、非常にオススメです。



【TAKAMINE / TPN】

ー 総評 ー

厚さが1mmと薄く、明るくパキッとした音のサムピックです。
音の粒立ちが良く、特に速弾きに相性がいいです。
滑り止め加工が施されているので、滑りにくく、また柔らかい素材で作られているため、装着感もとても快適です。

ただ、低音域が少し弱いので、重厚な曲や力強い音を出すのには向いていません。時にソロギターで使うと、軽い印象を受けることもありますね。
また、弾き語りでは、歌の帯域と被ってしまい、特にストローク時には歌とぶつかり合ってしまうかもしれません。

粒立ちと音が抜けが非常に良いので、アンサンブルで輝くサムピックです。



【TAKAMINE / TPT, TPW】

ー 総評 ー

こちらも滑り止め付きで、厚さが1.5mmになったモデルです。

周波数バランスが良く、素直な音と高いコスパを兼ね備えています。
クリアでスッキリした音は、アンサンブルでも他の楽器の邪魔をすることが少なく、多くのスタイルに適しています。

しかし、深みやゴージャスさを求める方には物足りないと感じられることもあります。
また、ストローク時には音が少し硬めになりやすく、歌伴奏などの音を少し後ろに下げたい場面には不向きかもしれません。

器用貧乏気味な特性ですが、万能さと高いコスパは魅力的です。



【PICKBOY / TP-TG/RE】

ー 総評 ー

1.0mmの厚さで、明るくクリアな音質、さらに高いコスパが特徴です。
先端が若干短めで、さらにしなりが強いので、弦に深くかかり過ぎることがありません。

低音がスッキリしているので、主にアンサンブルでの演奏に適しています。
また、ドライブ感があるストロークができるので、ロックな弾き語りにも最適です。

しかし、しなりが大きいため、フルピッキングは苦手な面があります。
また、低音が弱いため、ソロギターでは安っぽい音になることもあります。

サイズが若干大きめで、柔らかい素材なため、演奏中にずれることがあり、人によっては不便を感じるかもしれません。

万能とは言えないサムピックですが、活躍の場面がはっきりとある、唯一無二のサムピックです。



【PICKBOY / TP-TG BLACK】

ー 総評 ー

セルロイドのツルツル感とウルテムのざらつき感を程よく兼ね備えたサムピックです。

サラッとした倍音感があり、アタックが柔らかめなので、どんな曲でも合わせやすいです。
しなりも適度にあり、さらに高いコスパを誇ります。

ストロークでは他のサムピックに劣ることもありますが、苦手というほどではありません。

サイズは「Large」と印刷されていますが、実際は普通サイズ感で、JIM DUNLOPのWhite Plastic ThumbPickとほぼ同じ大きさです。

大きな欠点がなく、どんな演奏にも高いパフォーマンスを発揮する、まさに優等生的なサムピックです。



【PICKBOY / TP-PEI/M】

ー 総評 ー

非常にブライトで透明感のある音のサムピックです。

単音を弾く時の、芯のあるクリアな音が魅力的で、ギラっとした倍音が程よくあり、カッコいい音です。
音に硬さがあるので、特にアンサンブルでのリードギターに最適ではないでしょうか。

ただし、低音には限界があり、ソロギターでの使用は少し難しい面があります。
また、弾き語りとの相性は最悪で、声と強くぶつかり合ってしまいます。

巻き弦を弾く際にウルテムピックのようなジャリッとした感触があり、これも好みが分かれる点です。

パリッとした音なので、リードギターを弾く人には選択肢の一つになるでしょう。



【JIM DUNLOP / ULTEX THUMBPICK】

ー 総評 ー

ウルテム素材のサムピックで、ザラっとしたエッジの効いた音が特徴的です。
特に巻弦を弾く際に、その特性が顕著に現れます。角度によっては「ガリッ」とした音が出ることもあるため、演奏時の角度には注意が必要です。

倍音が豊かに出るため、音質はカラッとしながらも煌びやかです。
明るくエッジの効いた音色が欲しい時や、ロックな曲を演奏する際には非常に適しています。

フィット感は非常に優れており、指に吸い付くような心地よさがあります。
ただし、ザラザラとした感触が弦に引っ掛かりやすいので、演奏性については好みが分かれるかもしれません。

オールラウンドに使えるとまではいきませんが、巻き弦を弾く際の注意点を押さえれば、それなりに対応力のあるサムピックです。



【IBANEZ / UL22M】

ー 総評 ー

こちらもウルテム素材のサムピックです。
JIM DUNLOP / ULTEX THUMBPICKと同様の傾向を持ちつつも、少し角が取れて落ち着いた印象を与え、よりバランスの良い音です。

ウルテム素材らしいドライで煌びやかな音質が特徴的ですが、巻弦を弾いた時には独特のジャリッとした感触があります。

ブライトで倍音感のある音質のため、明るい曲調やエッジが欲しい時に最適ですが、中低域がやや欠けているため、ボディー鳴りが少し薄いのが少し気になります。

フィット感は非常に良く、指に吸い付くような感覚があります。
巻弦のジャリッとする点に気をつければ、幅広いジャンルに対応可能で、割と汎用性の高いサムピックです。



【MASTER 8 JAPAN / INFINIX Hardpolish THUMB M】

ー 総評 ー

INFINIX素材のサムピックです。
柔軟性、形状記憶性、対磨耗性に優れた素材らしく、ウルテムに近い感触です。

鮮やかな倍音感があり、高音域がフワッと広がるような、音楽的なサウンドが特徴です。
特にバンドでのストロークやアルペジオ演奏には非常に良い選択肢となるでしょう。

しかし、単音弾きの時は中低域の薄さが目立ち、ややコシがない音になる傾向があります。
また、ソロギター用途では低音がやや物足りず、音が前面に出過ぎる傾向があり、扱いが少し難しい面もあります。

今回Mサイズを購入したのですが、サイズが結構大きめなので注意が必要です。

万能タイプではないものの、ストローク時の音の広がりや芳醇な倍音は特筆すべき点です。



【NATIONAL PICKS by Daddario / NP7W】

ー 総評 ー

周波数バランスが非常に優れていて、アルペジオ、ストローク、ソロギター、単音弾きなど、何をやらせても素晴らしい、超万能なサムピックです。

また、先端が短く設計されているため、弦に深く当たりすぎる心配がなく、滑らかな弾き心地が特徴です。

しかし、サイズ感がかなり大きい点がネックです。
今回の比較レビューで購入した全てのMサイズのサムピックの中で、このサムピックがダントツで大きく、さらにお値段も¥450(税込)とセルロイドサムピックとしてはお高めです。

もしサイズが合っていれば、メインで使いたかったのですが、残念ながらサイズが合わず見送ることになりました。
しかし、サイズが合う方には是非オススメしたいサムピックです。



【名城商会 / 本鼈甲ピック サムМ 1.2mm】

ー 総評 ー

ベッコウ製のサムピックです。
ブライトながらも重心が高すぎず、艶やかな倍音を持つ音が特徴です。

アタックが鋭く、音がよく抜け、派手さの中にも上品さを感じられます。
アタックが鋭いサムピックは、重心が高く安っぽい音になりがちですが、このサムピックは音のコシがしっかりとしており、高級感のある音です。

ただ、中音域がはっきり出すぎて、粒立ちが良すぎるため、歌モノのストロークには向いていません。

最大のデメリットは価格です。1,760円(2024年1月現在)という価格は、ピックとしてはかなり高いです。
また、私がこれまで何度もベッコウのサムピックを購入してきた経験上、製品のばらつきが大きく、自分に合ったものを見つけるのが一苦労です。

音質は良いですが、高価格と品質のばらつきという二つの大きなデメリットがあり、全ての人におすすめできるサムピックではありません。



【井草聖二 / オリジナルサムピック 1.2mm】

ー 総評 ー

井草聖二さんのオフィシャルグッズとして販売されているサムピックです。

1.2mmという厚みが絶妙で、クリアで抜けの良い高音域と、それを支える中低域のバランスが素晴らしいです。
特に単音弾きにおいては、上品な音の抜けで素晴らしいパフォーマンスを発揮します。
さらに、先端の処理が丁寧にされているため、弾き心地が滑らかです。

周波数バランスはやや高音寄りで、低音の量感は少し控えめなので、重厚な低音を出すことは難しいですが、概ね万能に使用できる音質です。

サイズが少しだけ大きめで、その点だけ注意が必要ですが、おすすめできるサムピックです。



【井草聖二 / オリジナルサムピック 1.5mm】

ー 総評 ー

こちらも井草聖二さんのオフィシャルグッズとして販売されているサムピックです。
JIM DUNLOP / White Plastic Thumbpickに近い音ですが、先端の処理が丁寧なのか、音に滑らかさがあります。

アタックが柔らかく、倍音感や粒立ちがちょうど良いため、ソロギターにおいて万能に使うことができます。

ただし、オフィシャルグッズであることから価格が少し高めに設定されています。
同じ系統の音を求めるなら、JIM DUNLOPのWhite Plastic ThumbpickやYAMAHAのTHUMB PICKで代用することも可能です。

基本性能は優れており、購入してガッカリすることはないと思いますが、価格にはやや割高感があります。
そのため、井草聖二さんのファンやデザインが気に入った方に特におすすめします。



【K.YAIRI / POPピック Heavy Black】

ー 総評 ー

トライアングルのフラットピックのような感覚で演奏できるサムピックです。

低音が控えめで、中音域もさりげなく、クリアでサラッとした高音域が特徴です。
ピックの厚みは薄く、穴が4つ空いているため、適度にしなります。
このしなりがコンプ感を生み出し、歌モノのストロークにぴったりです。
特にバンドでの演奏にこそ真価を発揮するでしょう。

ソロギター用としては、残念ながら低音が足りなかったり、特殊な形状のため、最適とは言えません。
音の迫力に欠けることや、演奏しにくさが目立つため、ソロギターでは別のサムピックを選んだ方が良いでしょう。

演奏中にピックを落としたくないギターボーカルには、非常におすすめの商品です。



【Black Mountain / BM-TPK02 Medium Gauge】

ー 総評 ー

こちらもフラットピックのような感覚で演奏できるサムピックです。

親指を支える部分がスプリング式になっており、非常に快適なフィット感を実現しています。
また、先端に向かって薄くなる設計により、見た目以上の滑らかな弾き心地を実現しています。

ドンシャリな周波数バランスが特徴で、弾き語りに最適です。
中音域が主張しすぎず、歌をしっかり支えてくれます。また、美しい倍音が生まれるため、女性ボーカルにツヤが加わる点もいいですね。
コンプ感もあり、力強く弾いても音が暴れないため、弾き語りには特に嬉しい特性です。

例によって、ソロギター用途には向いていません。
低音の不足や特殊な形状のため、ソロギター演奏では別のサムピックをお勧めします。

価格は高めですが、弾き語りやアコースティックな編成の歌モノには最高のサムピックです。



【TAB / TAB Special 2 Hard】

ー 総評 ー

打田十紀夫氏監修による新発想のサムピックです。

親指にラバーバンドで固定するサムピックで、その装着感は今回試した中でも群を抜いて最高です。
ピック自体もよくしなり、強く弾いても音が暴れる心配が少ないです。

かまぼこ型の周波数バランスで、中音域がしっかりと出ます。さらにコンプ感が少しあるので、特にリードギターにはおすすめです。

気になる点もあり、素材やエッジの処理によるかもしれませんが、ジャリっとした音が少し目立つことがあります。

安定性に関しては、ラバーのせいでガッチリとしたホールド感がなく、操作感に慣れる必要があるでしょう。

ソロギター界の巨匠が監修したサムピックなのですが、ソロギターよりは単音弾きの方が輝く印象でした。



【PROPIK / METAL-PLASTIC THUMB PICK MEDIUM】

ー 総評 ー

親指を固定する部分がメタル製のサムピックです。
このメタル部分を自分の指の形に合わせて曲げることで、オリジナルのフィット感を作り出すことがコンセプトのようです。

しかし、硬さがあるため、指の形に合わせるのは非常に困難です。
さらに形を合わせることができたとしても、柔軟性がなく、弾いていると指が痛くなります。

加えて、メタルが温まると柔らかくなり、徐々に開いてしまうため、せっかくのフィット感も台無しになるという問題があります。

音質に関しては、低音寄りでありながら、単音弾きではアタックが鋭くなるという興味深い特性があります。
使いどころは正直分かりませんが、面白い特徴ですね。

しかし、指に負担が大きい上に、生産終了しているようなので、わざわざ手に入れる必要はないでしょう。



- 音質と特性の評価基準 -

ここからは読み飛ばしてもらって結構ですが、興味のある方はどうぞ!


【上のグラフ : 横軸の評価基準】

  • 低音域(250Hz以下)
    「ボンボン」「ズシン」という音域で、弦の振動がボディーを通じて生み出す深く響く帯域。

  • 中低音域(250Hz〜700Hz)
    「モワモワ」「ボワボワ」という音域で、暖かみと厚みがある帯域。

  • 中音域(700Hz - 1.5kHz)
    「ポーン」「コツコツ」という音域で、音の芯やコシがある帯域。

  • 中高音域(1.5kHz〜6kHz)
    「キンキン」「ジャリジャリ」という音域で、ギターの明瞭さやピッキングのディテールを担っている帯域。

  • 高音域(6kHz以上)
    「シャラシャラ」「キラキラ」という音域で、空気感のような細かい音の粒子を感じるような帯域。弦の微妙な振動など、細やかな音のディテールが含まれる。

これら5つの項目を10段階で評価し、その総合点を周波数バランスとして横軸に表示しました。

【上のグラフ : 縦軸の評価基準】

  • 鋭さ
    弦を弾いた時の音の鋭さ。点数が高いほど鋭いアタック。

  • 粒立ち
    速弾きの時に一つ一つの音が明瞭に聞き取れるか。点数が高いほど、音の輪郭がクッキリしている。

これら2つの項目を10段階で評価し、その合計点をアタックとして縦軸に表示しました。

【上のグラフ : 青い円の評価基準】

  • 倍音感
    倍音の豊かさと複雑性。点数が高いほど倍音が豊かになる。

10段階で評価し、倍音感として円の面積に表示しました。


【下のグラフの評価基準】

  • ソロギター
    ・低音の質 : 主に低音弦を担当するため、深い低音が出ること
    ・バランス : メロディーの邪魔をせず、バランスが取れていること
    ・安定性 : 親指にしっかり固定され、安定した演奏ができること
    ・単音弾き : 音にコシと艶があること

  • 弾き語り
    ・中音域 : 歌の帯域を邪魔しないこと
    ・コンプ感 : 適度に音が整うこと
    ・レンジの広さ : 低音から高音までバランス良く出ること
    ・倍音 : 適度な倍音があり、音色に豊かさを加えること

  • バンド(歌モノ)
    ・中音域 : 歌の帯域を邪魔しないこと
    ・コンプ感 : 適度に音が整うこと
    ・クリアさ : 団子を回避するため、低域がすっきりしていること
    ・コシとアタック : 他の楽器に埋もれないよう、適度なコシとアタックがあること

  • リードプレイ(アンサンブルでの単音ソロを想定)
    ・中域、中高域 : 音がしっかりと前に出ること
    ・音質 : 適度なコシや艶があること
    ・低音域 : 低音が出過ぎないこと
    ・アタック : 鋭く、かつ音の粒が揃っていること


なお、点数が高い=良いではありません。単なるキャラクターの違いです。


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