見出し画像

HHCについて思うこと

2021年の最後に日本のマーケットに突如姿を現した新しいカンナビノイドHHC。日本に住んでいるカンナビス好きにとってはありがたい存在になっている様に見えるが、この取扱についてオンライン上では様々な意見が飛び交っている。
今のところ大きな問題はないように見えるが、果たしてこのままの状態で問題はないのだろうか?
販売している業者と販売していない業者の間には一体どんな考え方の違いがあるのだろうか?
HHCの取り扱い方、またこの先どうあるべきか?などについてカナダという合法国に住んでいる者としての視点で話してみたいと思う。

色んな合法大麻

北米やヨーロッパを中心に凄い勢いで世界中で広がっている大麻の有用利用。
実際にその中身を詳しくみてみると、嗜好目的での使用、医療目的での使用、販売方法や、販売が許可されているものなど国や地域によりその内容は様々で、それらを一概に「合法大麻」と括ることは非常に難しい状況となっている。
それらの規制の違いが地域ごとに違うイシューを作り出しており、その中で生まれた物の一つがHHC製品と言えるだろう。
ではなぜ規制によりHHC製品が誕生することなり、それが日本で人気を集めているのだろうか?
一つ一つその背景を見ていけば、アメリカと日本に共通する問題点、取り組むべき課題が見えてくるだろう。

HHCは現在はアメリカの一部地域で販売されているもので、THCやCBDなどのカンナビノイド製品と比べるとどうやらその拡がり方が違うようだ。
またHHCが使用、販売されている地域を見てみるとそれは限定的で、HHCを製造している企業も実は数社しかなく、ほとんど存在していというのが現状なようだ。日本では人気を博しているこのカンナビノイドだが、これは一体どういうことなんだろう?

HHC製品が作られた背景

HHCというカンナビノイドが発見されたのは最近の事ではない。その発見の諸説は色々あるようだが、アメリカの有機学学者ロージャー・アダムスが1940年代に発見したとするのが最も有力なようだ。
それでは何故この約80年の時を経て、今またアメリカの一部地域や日本でHHCの人気が高まってきているのだろう?
その理由はアメリカや日本にある大麻取締法と、ますます高まるカンナビス製品の人気が密接に関係していると考えられる。

2014年のコロラドやカリフォルニアでの嗜好大麻の合法化をきっかけに大麻や大麻製品に注目が集まり出し、さらに2018年トランプ大統領の時代にアメリカ合衆国が連邦法でヘンプを合法化させると、そこから口火を切ったかのように世界中でカンナビノイドビジネスが加速していった。
この記事を読んでくださっている日本在住の方も日本のCBDを取り巻く環境を見ていればそれは実感できるだろうし、またそれはアメリカ国内でも例外ではなく、各州でそれぞれの盛り上がりを見せていった。
ウェルネス目的で使用されるCBD製品はアメリカのどこの州でもニーズがあり、私が住んでいる大麻が合法化されているカナダでも状況は同じだ。
日本と同じ様に、ディスペンサリーにいけばCBNは眠りのカンナビノイドとして販売されているのをよく見かける。

それではHHCはどうだろうか?
HHCはTHCの代用品として使われることからカナダでは見かける事がない。
カナダのカンナビス企業に勤める人に聞いてもHHCの存在すら認識していない。
全く需要がない訳ではないがアメリカの大麻が合法化されている州でも状況は似ており、 そういった州では職業上大麻(THC )を使う事ができない人が代用品としてHHC製品を使う事が多い様だ。
言い換えればTHCが合法的に入手できるところではHHCの需要は極めて低く、それがCBDやCBNなどにまだ比べ研究が進んでいない理由の一つであると考えられる。

HHCの安全性

HHCの使用の危険性は低い考えられているが、それに関するエビデンスはまだ殆ど存在せず、THCやCBDといったカンナビノイドに比べ、まだ分かっていない事が多いのが現状である。
大麻にはカンナビノイドの他にもフラボノイドなど様々な成分が含まれているが、それぞれの成分の使用法についてもまだまだこれから研究が必要だ。

例えばカナダのMcGill大学で発見された大麻に含まれる成分カンフラビンは約30年前に発見されており、アスピリンの30倍の鎮痛効果があると考えられている事から将来その有用性が期待されているが、その研究も近年のカナダでの大麻合法化によって再開が可能になったところであるである。

僕は誰かに「HHCは安全ですか?」と聞かれたら、いまは「分かりません」と答えるしかないというのが僕の判断。
それではHHCは規制されるべきなのだろうか?

規制

「規制」と言ってもその言葉から想像する内容は人それぞれではないかと思うので、ここはその「規制」とは何かについて考えてみようと思う。
このHHCブームを見ていて、15年程前に日本で起きた脱法ハーブブームを思い出す人も少なくないのではないだろうか?
あの頃は第1世代、第2世代と法律の規制がかかる度、製造者は新たな合成カンナビノイドを探し、新たな製品を作り出していった。
その法律と脱法ハーブ販売業者のいたちごっこは長期化し、それは結果的にさらに危険な製品を世に送り出す事となり、次第に報告される事故の数も増えていった。
最後には「包括規制」という構造式の似ている物質群を包括的に指定する規制により、1000種類近くもの薬物が一気に規制される事となった。
それでもビジネスを続けようとする業者と、ドラッグを求めるユーザーという存在が品質管理の概念もないような、カンナビスとは似ても似つかぬようなものを生み出す事となったしまった。

これを今回のHHCのケースに当てはめて考えてみるとどうだろうか?
例えば日本が脱法ハーブの時の様にHHCを禁止し始めた場合、今度は何が起こるだろう?
アメリカのカンナビス事情に詳しい人なら予想はつくと思うが、THCPなどまだ法律が追いついていない別のカンナビノイドが次々と出てきており、これから法律に引っかからないものが日本に入ってくるだろうというのは誰にも予想がつくのではないだろうか?
その流れの中で、再包括規制により今度はCBDやCBN、後の大麻の合法化にまで悪い影響が出てくるのではないだろうか?と考える事業者、大麻合法化活動家、カンナビノイドに期待を寄せる医療関係者の気持ちも想像に難しくないだろう。
また反対にTHCを必要としている人の元へ代用品でも届けたいと考える人の気持ちも分かるのではないだろうか?
しかしこのカンナビスに対するニーズの高まりと、それに対する法律や規制が殆どない日本でこのままの状態が続くと事故が起こるのは時間の問題ではないだろうか?
僕はどうしても2019年ごろにアメリカで起きたベイプ関連の死亡事故を思い出してしまう。
あれは品質基準のないマーケットだからこそ発生した悲惨な事件だと思う。
しかしその点についてよく考えれば、実はそれはHHCだけではなく、CBDやCBN商品にも言えることではないだろうか?

これから必要なこと

カナダで大麻が合法化されたのは2018年のことだが、それ以前と以後でのカナダの大麻製品の大きな違いは、何と言っても「品質管理」という点に尽きる。
合法化前、まだそれに関する規制がない時には、商品の品質は全て生産者の尺度に委ねられていた。
満たさなければいけない基準も何も無い中でも、多くの販売業者は自ら高い品質基準を設けたり、GMPなどの国際基準を製造工場に取り入れるなどし、プロとして最新の注意を払っていた。
しかし施設へのGMP導入は多額の資金が必要であること、また全ての業者が良心に従ってビジネスを行なっている訳ではないことなどから、たびたび品質の悪い商品も報告されていた。
僕も個人的な経験として、製造段階で使われた溶剤が抜け切れていなかったせいか、購入したシャターを高温で熱したら火花を出した事もあった。

この様な理由から、僕はHHC自体の安全性を語るのは現段階ではあまり意味がなく、ましてそれを理由に禁止するのかどうかというのは全く別の問題だと考えている。
それより今の日本に必要な事は、食品として輸入されているカンナビノイドがどのように加工され販売されているかを国が把握し、それに対し事故が起こらないような品質基準を設けることではないだろうか?
そしてそれに対し私たち販売する側も何か働きかけるべきでは無いだろうか?
自分達のヘンプが何処から来て、誰の手によってどの様に加工されているかを確かめて、可能な限り公開するような努力が必要なのではないだろうか?

重複になるが僕も日本でもCBDビジネスに携わらせていただいている。
カンナビノイド原料の卸売なども行なっており、品質には何よりも気を遣っているつもりだが、今回のHHCブームやそれに対する多くの人の意見を見ていて、日本のCBD事業者としてやるべき事がたくさんあると実感した。
アメリカでも様々な業者が日本にカンナビノイドの輸出をする様になり、その中には実体の分かりにくい不透明な業者も少なくない。
今は海外の業者に頼るしかない日本のカンナビノイドマーケットに携わる者として、そういった観点からも成分分析表以外の何かで安全性を示していく事もCBD事業者としての責任であり、またそれがマーケットの前進に繋がると思う様になった。

まとめ

今もまだ継続中のHHCブームだが、販売していない者としても色々と考えさせられる事があった。
そしてHHCに限らず今の日本に必要な事は、どんなカンナビノイドが良いか悪いかという議論ではなく、自社で販売しているカンナビノイド製品の品質を現行の法律内でどの様に守っていくのかという事では無いだろうか?
その為には今の日本のCBDマーケットの様に、仕入先を知っている知っていないという様なレベルの低い話ではなく、これからは農家や抽出業者など必要に応じて過程を追跡できるようなトレーサビリティも重要になってくるだろう。
あと日本国内でも誰でもカンナビノイド製品を持ち込んで検査が簡単に出来て、顔の見える人から成分分析表が発行されるサービスが日本にあればきっと良いのにな。

よし。またチル兄に電話しよう笑


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?