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最初からグローバル(2/2)

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「最初からグローバル」が成長に不可欠なことは、多くのデータが示すところです。

輸出で飯を食ってきたと自負している多くの日本人にとって、特に衝撃的なデータがあります。

日本の1人当たりの輸出額は世界44位(4914ドル、2015年)に過ぎず、シンガポールや香港の14分の1、台湾や韓国の半分にも満たない、という事実です。(「新・所得倍増論」デービッド・アトキンソン

急激に人口が減っているとはいえまだ国内市場がそれなり大きいこと、EU諸国のような自由貿易圏に加盟していないことは勘案する必要はありますが、それでも台湾や韓国の半分未満という事実は衝撃的です。

ただ、ここまで順位が低いと、逆に言うとものすごいアップサイドがある、とも言えます。

くじらキャピタルは、日本企業、特に業績不振の中堅中小企業に足りないのは外需の取り込みと考え、顧客体験軸で「最初からグローバル」の事業再設計をすることで、圧倒的な成長を実現しようと考えています。

既存事業を多言語化するだけ、あるいは既存事業の流れの先に海外展開があるのではなく、「どう事業転換すれば、グローバル市場で勝てるのか」から逆算して、かつデジタルの力をフルに活用し、組織の変革をDay1から始める、という考えです。

場合によっては、国内の顧客を大胆に切り捨てることもあり得ると思っています。

日本酒の例でいうならば:

■最大の輸出市場であるアメリカを狙うのか、第2の市場である香港・中国を狙うのかを最初から明確にする。

■仮にアメリカとするならば、単に「日系輸入業者を経由して現地の日本食レストランに卸してもらう」という従来型の構図を打破するため、自身の流通・販売網を確立する方法を考える。

■そのためには明確なブランド戦略と(顧客価値のある)差別化が必須なので、自社の歴史やユニークさをnarrative(物語)化し、ラベルで視覚化し、ふさわしいプライスポイントを決め、これらを分かりやすくデジタルで打ち出す。

■アメリカのどのような属性の顧客が、どのようなタッチポイントを通じて商品を知り、どのように比較検討して購入し、どのようにSNSで共有するのか、一連のジャーニーを仮説設計・言語化し、その仮説が正しいか絶え間なく検証を続ける。

■SNSを含むweb広告のプランニングやコネクション、ランディングページの設計、即時購買可能な導線整備など、ジャーニーを自然かつ楽しいものにする投資を、たとえば醸造工程への投資よりも優先して行う。

高速かつ定量的な効果測定と微調整はまさにデジタルが一番威力を発揮するところなので、必要なツールを導入してこれらの戦略の効果を常時把握し、改善を図る。

■そのための組織改編を断行する。すなわち、デジタルにより効率化・省力化されたバックオフィス業務から、アメリカ市場での顧客獲得・売上獲得業務に大胆に人員をシフトするなどして、デジタル x グローバルに最適化した組織構造に改める。

■チーム構成についても、サーブすべき市場に相応しいメンバーを揃える。Narrativeの構築や伝達は、絶対にネイティブ・スピーカーかつターゲット顧客の属性・嗜好に近いメンバーにやらせる。

■必然的にアメリカ人もしくはその他の外国人のメンバーが増えるので、彼ら・彼女らが働き続けたいという仕組みづくり・組織づくりも必須。

■商品設計についても、ターゲットとする顧客の好みを把握し、味や香りを調整する。杜氏のこだわりは、ターゲット顧客にとって意味のある限度でしか認めない。結果、国内消費者、もしくは他の地域(もしくはアメリカ国内の別の顧客)から不評を買うリスクもあえて甘受する。

■本物であることを最優先するため、たとえば純米酒以外のアルコール添加酒はラインナップから外す。

■この過程で、多くの杜氏や社員が離脱する可能性が大きいが、それでもぶれない。自分たちの信念に賛同してくれる仲間を集め続けるとともに、属人性の高い作業の形式知化・言語化・マニュアル化・仕組み化を進める。

■カスタマージャーニーと整合的でない顧客タッチポイント(たとえば、ローエンドの日本食レストランや、そこに卸す日経輸入商社)は、あえて捨てる。

■国内流通網についても同様。この過程で、今度は営業部のメンバーの離脱が想定されるが、それでもぶれない。


決断とは「断つことを決める」と書きます。「我々は、何をしないのか」を決め、短期的なハレーションがあろうとも、捨てるものを捨てて、勝てる分野に資源を集中投下する。

ここまでやり抜けば、偶然ではないトップライン成長が必ず果たせると確信しています。

もちろん上記はあくまで例え話で、くじらキャピタルが携わった実際の例ではありません。実際の再建方法はケースによって多少異なるでしょう。

ただし、グローバルxマーケティング思想(あるいは「マーケットイン」)で事業をゼロから見直し、組織を改め、デジタルで加速させることだけは、変わりません。

これが、我々のいう「最初からグローバル」の意味です。


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