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MILGRAM 第一審/カズイ「half」考察

こんにちは。桜小路いをりです。

今回は、「MILGRAM」第一審MV、カズイの「half」について考察していきます。

こちらがカズイの第一審MVです。核心に触れずに流れていくMVに、心なしか大人の余裕を感じます。

なお、今回の考察では、「自殺」について触れることになります。予めご了承ください。

カズイについて

大人は常に本音を隠してでも、笑顔でいる必要があんのよ。
きみたち若者に失望されないようにね。

カズイこと椋原一威は、ミルグラムの面々の中で最年長。
飄々としており、柔和で、冗談を口にすることもあります。なにかしらの格闘技の経験があるらしく、長身で筋肉質な男性です。
しかし、個別の面会では何かを観察するように睨みつけてくることもあり、得体の知れなさもあります。

カズイの誕生日は8月5日、誕生花はエリカで、花言葉は「孤独」や「寂しさ」です。

今回は、シドウのときと同様、MVから考察していきますのでご了承ください。

MVについて

まず、カズイのMVは、演劇もしくはドラマ仕立てになっています。
スーツを着てバーにいるカズイ、奥さんらしき人と家にいるカズイ、軍服のような衣装や、仮面を着けているカズイ。それらは、全て「演技をしている姿」であると思われます。

そして、シンプルなカーディガンを着て客席に座っているカズイ。髪もセットしていないので、恐らくこの観客席のカズイが「素」の状態なのだと思います。

台詞に「本音を隠す」という言葉もありましたが、カズイは常に、嘘を吐き、本音を隠しながら生きてきたのではないかと考えました。

演劇は虚構、すなわち「フェイク」です。
カズイは、常に衣装を纏い、本音を隠して生きていた。
「素」のカズイは、嘘を吐いて本音を隠して生きる自分を、どこか他人事のように感じていたのではないかと思います。まるで、誰かが書いた脚本をなぞって生きているような。

そう考えると、奥さんとも、恋愛結婚ではなかったのかなと思います。恐らく、断れない縁談だったのではないでしょうか。(しかし、奥さんのほうは献身的で、カズイに愛情を抱いているような感じもしますが……)

そして、バーでカズイが出会ったであろう若い女性。華やかな身なりをしているので、もしかしたら夜の世界で働いている人なのかもしれません。

MVの中で随所に出てくるリンゴですが、サイトによって、ジャンルによって非常に色んな意味があり、悩みどころです。いくつかこのMVに当てはまりそうなものを抜粋します。

まず、アダムとイブの神話から「タブー」の意味。これは、主に恋愛的な意味で、「浮気」を指します。この意味を取るとしたら、若い女性と浮気をしていた、ということになりそうです。

もうひとつは、「カオス」の意味。それを2つに切って(分けて)、それが何かを理解する(分かる)という物でもあるそうです。この意味を取るのであれば、色々な「役目」を演じるカズイの心の中が、混沌としている、という意味になるでしょうか。あるいは、奥さんと若い女性への気持ちがごちゃごちゃになっているのかもしれません。

最後に、リンゴの実の花言葉「誘惑」や「後悔」です。

ちなみに、リンゴは他にも、生命力や愛、感情、死などを象徴することもあります。(矛盾している言葉もありますね……。)

MVの随所で出てくるのは、青いリンゴです。私は、これはまだ熟れていない若いリンゴだと思います。なので、このリンゴが何を意味していたとしても、それはまだ「成熟していない」のではないでしょうか。

そして、最後、青いリンゴが載っていたテーブルの上には、割れた赤い破片が散らばっています。恐らく、青いリンゴが熟れて赤くなり、でも何かの理由で割れてしまったのではないかと思います。(「割れた」という時点で、それはイミテーションのリンゴであると推測できます。)

私が考察した一連の出来事は、こうです。
まず、カズイは愛情のない結婚生活をおくっていました。仕事でもプライベートでも本音を隠し、安らげる場所はなかったのだと思います。そんな中で出会ったのが、バーでお酒を飲んでいた女性。青いリンゴは「誘惑」あるいは「タブー」の意味だと思います。
そして、そんな「誘惑」のリンゴは、舞台上にいるカズイ(流され、周囲が求める自分を演じる自分)のもとから、徐々に客席にいるカズイ(素のカズイ)に近づきます。1:03と2:15の部分です。
これは、若い女性の前では自分を偽らずに済む、という希望にも似た「誘惑」なのではないかと思います。
もしかしたら、奥さんもカズイの気持ちが他の人に移っていることに、もしくは端から自分にその気持ちが向けられていないことに、気づいていたのかもしれません。

問題は、リンゴが熟して、「割れて」いること。
私は、リンゴと聞くと「リンゴをかじること」を連想します。
もしかしたら、カズイは、どんどん熟して魅力的な甘い香りを放つリンゴ(=誘惑)をかじった(=誘惑にのった)のではないかと思います。
しかし、そのリンゴは本物ではなかった。
脆くて、ひょっとしたら手に持っただけで崩れてしまったのではないでしょうか。

「きみたち若者に失望されないようにね。」という台詞の「きみたち」には、あの若い女性も入っているのではないかと思います。
結局、カズイはその人を失望させないように、嘘を吐き、本音を隠すことになったのではないでしょうか。安らぎを求めたはずなのに、そこでも息苦しい演技をしなければならない。
カズイにしみついた嘘は、簡単には取り除けないところにまで入り込んでいたのだと思います。

そんな状況は、カズイを追い詰めていったのではないでしょうか。

MVのラストは、「素」の状態で一人舞台に佇むカズイの姿です。
セットも衣装もないその状態で、カズイは頭を抱えます。
深く濃くしみついた孤独感、寂しさが漂っているように思いました。

歌詞について

正しさを教えてよ 
嘘に染まった想いは浮かんで消える

私は、ここの歌詞が、この曲の核心なのではないかと思いました。

「正しさ」は「MILGRAM」の中でもキーワードになっていると思うのですが、カズイの「正しさ」は、どこまでも他人軸のような気がしてなりません。
だからこそ、MVの中の若い女性との一件が、初めて自分の心に忠実に起こした行動だったのかな、と思ってみたり……(単純に酔いつぶれている女性を放っておけないと思ったのか、押しに弱かったのかもしれませんが……。)

今までの時間が傷を付けて 
気持ちの秤は揺れることを選んだ
隠し続けるのを不幸と呼ぶなら 
言葉ひとつもあなたには届かない

また、この歌詞を見ると、カズイは根っこの部分で、常に人を疑い続けてきたのかなとも思いました。
エスへの態度ももちろんですが、慎重で疑り深く、常に人との間に一線を引いているような、絶対に自分の心を許さないような印象も受けます。(この印象は、MVの衣装の中にもあった軍服に通じる部分があるなと思っています。)

流されて、自分を偽って、演じて、「ミスリード」だと分かっているのにその幸せを静かに見つめ続ける。

もしかしたら、これもカズイの過去に何かきっかけがあるのかな、と思っています。

また、曲名の「half」ですが、半分、2分の1の意味です。これも謎が多く、今のところ、奥さんへの気持ちと若い女性への気持ちが半々になり、戸惑っている心の状態なのかなと推測しています。(「half」は「大雑把に分けた約半分」という意味もあり、そうだとしたら、均等な半分ではないので「気持ちの秤は揺れる」のかなとも思います。)

まとめ

ここまでの考察でも分かる通り、カズイのMVはびっくりするほど穏やかでゆったりしています。
「罪を歌う」はずなのに、ひたすら自分の内側に向き合っているような感じです。

このことからも、ずばり、カズイは「自殺」なのではないかと思います。

演技をしている自分とそれを傍観している自分に分かれたMVになっている時点で、どこか「生きること」へのあきらめも見えている気がします。

考察に難航したため、今回は、カズイのボイスドラマも聴きました。
カズイは、自分が「人殺し」かということを「否定しない」、そして、「反省のしようがない」、「俺以外に俺を人殺しと認識している人はいない」と言っています。
この発言からも、自殺と捉えられるのではないかと思います。

MVでも深い動機に触れられておらず、エスも、ボイスドラマで「嘘が貼り付いている」と言っています。
自分を偽ること、嘘を吐くことに慣れているようにも思えますが、ではそれは何故? と謎は深まるばかりです……。

ジャッカロープの「様子見の赦す」という言葉も、的を射ているなと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

次の「MILGRAM」シリーズはアマネです。
アマネは正直、「赦さない」になっているのが意外だった囚人なので、そこも含めて考察したいなと思っています。

今回お借りした見出し画像は、じんわりと水が広がっていくような幻想的な画像です。不穏さや謎、疑問がじわりじわりと心に広がっていくような、不思議なMVにぴったりだと思い、選ばせていただきました。カズイに関しては、また何か気づいたことがあれば記事にしたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。