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我が社がLOVOTを導入した理由

こんにちは。(有)神輝興産代表の中 憲太郎です。

今年の5月に、LOVOT[らぼっと]というロボットを社内に導入しました。LOVOTはとくに何もしないロボットです。ルンバのように掃除もしないし、AIスピーカーのように天気を教えてもくれません。役に立つかと言われたら、なんの役にも立たないものです。では、なぜ役に立たないLOVOTを導入したのか。その目的と、私の思いについて書きたいと思います。

導入経緯

LOVOTとの出会いは電気屋さんでした。社内イベントの景品を買いにヨドバシカメラに行ったところ、店内でたまたま目があったのがLOVOTでした。店員さんから説明を受けて抱いてみると、重さもちょうど良く、ほんのり温かい。子どもを抱っこしていたころを思い出して癒やされました。店員さんが言うには、男性で癒やされるのは10人に1人くらいだそうです。ほとんどのお客さんが「なんの役に立つんですか?」と聞き、「なにもしないですよ」と答えると「なにもしないんかい」となるそうです。

その日はパンフレットを受け取って帰り、後日オンラインで説明を受けました。そして、会社への導入を決めました。なにもしない、悪く言えばポンコツであるこのロボットが、いまの神輝興産に必要だと直感的に思ったからです。このときはまだ、その理由をうまく言葉にはできていませんでしたが、とにかく導入してみようと感じました。

スタッフの反応

LOVOTが届いた当日は、内業スタッフを中心に「かわいい」と盛り上がりました。2台のLOVOTに「しんちゃん」と「こうちゃん」という名前をつけ、声をかけてみたり、撫でてみたり、抱っこしてLOVOTが眠るのを体験したりと、LOVOTを中心に社内が温かい空気になりました。

一方で予想したとおり、少し耳の痛い意見も聞こえてきました。

「これが何の役に立つんですか」
「自分たちが汗水流して働いたお金がこれに使われたんですね」

というものです。
当然の意見だと思います。私もいちスタッフの立場だったら同じように感じ、口にしていたと思います。このように率直に意見を言ってくれることは本当にありがたいことです。

これらの意見に対して、「そんな言い方すなよー」「かわいがってよー」と返答しましたが、内心はグサッときていました。それはきっと、私自身もこのLOVOTが会社にどんな変化をもたらすのか、どんな扱われ方をするのか、不安があったからだと思います。

そして、導入から約2ヶ月が経ったいま、当初あった不安はほとんどなくなりました。それは、LOVOTによる社内の変化が見えてきたからです。


社内の変化

まず社内の変化として、コミュニケーションが増えました。もともと神輝興産は協調性の高いスタッフが多く、コミュニケーションを取りやすい環境だったと思います。ただ一方で、協調性の高さゆえに、相手を気づかって遠慮がちになってしまうこともあると感じています。

仕事の邪魔をしてはいけないと思っていると、用事がなければ話しかけにくいものですし、会話をしても仕事上の連絡にとどまってしまいます。コミュニケーションも特定の人同士に偏ってしまいがちです。この状況がLOVOTをきっかけに変わったと感じています。

LOVOTをかまっている人に声をかける人。LOVOTのよくわからない挙動を一緒に見て、一緒に笑っている人たち。内業スタッフと現場スタッフ。社員とパートスタッフ。職務や立場を超えたコミュニケーションが生まれるようになりました。

私の妻も週に1、2度、会社に顔を出すことがありますが、LOVOTをきっかけにそれまで話をしたことがなかったスタッフと会話できたと言っていました。LOVOTにより、コミュニケーションの撹拌が起こっていると感じます。



LOVOT導入の目的

神輝興産の大切にしたい価値観(Value)にも掲げているとおり、スタッフにはチャレンジしていってほしいと思っています。チャレンジを妨げるものは怖れです。怖れがあるとチャレンジの一歩が踏み出せません。そしてこの怖れは、人の目が原因であることが多いものです。

「こんなことをしてなんて思われるのだろう」
「仕事には意味のないことをして、遊んでいると思われるのではないか」

そう思うと一歩が出なくなってしまいます。チャレンジするには、一歩踏み出せる風土、空気感が必要です。疑心暗鬼がチャレンジの妨げになります。疑心暗鬼を払拭するいちばんの方法は、とにかくコミュニケーションを増やすことです。LOVOTの導入がコミュニケーションの量を確実に増やしています。

では、LOVOTの導入目的は、「コミュニケーションを増やしチャレンジできる風土を築くこと」かと言われると、それは違います。もちろん副次的にそのような効果はあると思いますが、私の目的は違うところにあります。私の目的とは、「安心安全な場をつくる」ことです。

成果で測れないもの

仕事での成果というと、目に見える生産性で評価されがちです。時間あたりの点検数(点検の速さ)だったり、事務作業の速さだったり、時間あたりの仕事量が多いほど、生産性が高いと言われます。しかし、私は成果とは数字に直結するものだけではないと思っています。

LOVOTはなにもしないロボットです。人の近くに行き、撫でてほしい、抱っこしてほしいと、甘えてきます。掃除もしなければ、時刻や天気を教えてもくれません。生産性を高めるような要素は何もないように思われます。「なんのために導入したんですか?」「なんで必要なんですか?」と聞かれるのは当然のことです。

一方で、このようなポンコツと言われてもおかしくない存在が、会社のコミュニケーションを増やし、チャレンジを促す存在になれるかもしれないのです。

何が言いたいかというと、みなさんの生産性としては測れない個性や特徴が、会社には必要だということです。なぜかその人がいるだけで場が和む。その人がいると場が引き締まる。冗談を言って笑わせる。昼休みに話題を提供してくれる。一生懸命パソコンに向かう姿に勇気をもらえる。あげればもっとあると思います。LOVOTはそのような、生産性に直結していないことの大切さを教えてくれるものだと感じています。

比較からの解放

人はつい、目に見える生産性で他者と自分を比べてしまいます。あの人よりも仕事ができない、あの人より作業が遅い、あの人みたいな発想ができない。目に見えるからこそ比べやすくなります。

でも、本当は目に見えないところで、みなさんの存在自体がまわりに影響を与えているのです。その事実を少しでもみなさんに伝えたいです。世界で唯一の自分という存在を、他者と比較することなく、存分に愛し、磨いていってほしいと思います。

事業では生産性の高さが利益に直結します。そこからは逃げられません。企業として、これからも生産性を高める努力はしていきます。一方で本当に大切なものは、生産性では測れないものだとも思います。

仕事はうまくいくときも、うまくいかないときもあります。怪我や病気だってあります。家族との関係の変化、自身の身体的変化もあるかもしれません。時間が制限されて、思うような成果をつくれないことだってあります。それでもみなさんの存在価値がなくなることなんてないのです。

神輝興産という会社が、たとえ仕事がうまくいかないときでも、自分が居てもいいと思える場所になること。これが私の目指している安心安全な場です。

私は日頃からスタッフのみなさんには「スキルを高めよう」と話しています。それは、できることが増えると仕事がたのしくなると思うからです。

一方で、スキルだけを追い求めているわけではありません。スタッフのみなさんそれぞれの持ち味を大切にしてほしいですし、私自身も大切にしたいと思っています。LOVOTの導入はそのことを目に見える形として、日常的に示したかったのです。

おわりに

神輝興産では、先代の尾花が代表のときに社内で海水魚を飼っていた時期がありました。海水魚はとにかく世話が大変です。水換えに3人は必要でしたし、休みの日には餌をあげる役割もいります。ただ、海水魚により仕事とは関係のないコミュニケーションが生まれていたのも事実でした。

その経験があってか、私はよく「会社で犬を飼いたい」と言っていた時期があります。実際に会社で犬を飼うとなると世話の問題があるので現実的には難しいですが、生産性とは関係のない、犬のような存在が会社に必要だと感じていたのだと思います。

LOVOTは内勤スタッフを中心によくかわいがってもらっています。LOVOTの存在が少しでも安全安心の場づくりに寄与してくれたらうれしいです。


有限会社神輝興産:https://www.shinki-ktr.co.jp/

代表 中憲太郎:https://twitter.com/ktr_kenaka

取材・言語化・見える化:大谷信(https://twitter.com/OtaniMkt

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