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なぜ元中盤選手に名監督が多いのか

はじめに

プロのサッカー監督とは、キツイ職業である。勝てば官軍負ければ賊軍を地で行く職業であり、シーズン途中に職を失うことも珍しいことではない。また、クラブとファンがプレースタイルに対して今まで以上に高い要求をしている一方で、監督の平均在任期間はこれまでで最も短くなっているというデータもあり、厳しさは増す一方である。

今回もまた、The Athleticに興味深い記事が掲載されていた為、かいつまみながら、「名監督のレシピ」たるものについて考察してみたい。

名監督の5大要素

  1. 戦術的柔軟性: 状況に応じて戦術を適応させる能力は非常に重要である。アルテタのFAカップでの成功は、戦術的に柔軟である重要性を示している。このような柔軟性は、マウリシオ・ポチェッチーノの指摘にもあるように、特定の相手に対処するためにも役立つ。

  2. ゲームの深い理解: ペップ・グアルディオラや他の多くのミッドフィールダーが指摘するように、ゲームに対する深い理解が価値を持つ。ミッドフィールダーは攻撃と守備の両方に関与するため、コーチングに移行する際には戦術のニュアンスをよく理解している。

  3. 基本哲学への忠実: ロベルト・デ・ゼルビの言葉で示されるように、戦術はその人の性格、歴史、DNAを反映している。特定の戦術は時間とともに進化するかもしれないが、長期的な成功のためには基本的な哲学が重要である。

  4. 細部への注意: アルテタが注目する「各ポジションの特殊性」など、名監督は大きな違いを生む小さな詳細に焦点を当てる。

  5. マネジメント: チームを管理するということは、戦術だけでなく人間関係においても重要である。名監督は、選手の心理的側面にも熟練している。エゴの管理や選手のモチベーション、良いチーム文化の維持などがそれに該当する。

半分近くの監督が元中盤の選手である


2022年3月のCIES Football Observatory(スイスに拠点を置くサッカーの統計分析に特化した研究団体)の報告によれば、この概念についてさらなる調査が行われた。同団体は89カ国の126リーグ、合計1,866チームを分析し、プロとしてキャリアを積んだ監督のうち42.4%が中盤選手だったと結論づけた。

なぜ元中盤選手が監督になるのか

ヨーロッパの主要リーグでは高いボール保持率と短いパスを用いるスタイルが一般的になりつつある。多くの元中盤選手が監督になり、このスタイルに影響を与えているとされる。例として、Xavi、アンドレア・ピルロ、ザビ・アロンソなどが挙げられる。アルテタは、異なるフォーメーションを試みつつも、最終的には3-4-3でFAカップ優勝に導いた。

戦術の一般化

マウリシオ・ポチェッティーノは、高い位置でプレスをかけてバックからのプレイ構築が一般的になってきたと指摘。2019-20シーズンにゴールキックのルールが変わり、バックからのプレイが容易になった。一方で、一部のチームは状況に応じて長いキックも使用している。

これらの要素が中盤選手にとって有利なのは、中盤選手が攻撃と守備の両方で重要な役割を果たし、ゲームの全体像を把握しているからだ。その経験が戦術的な洞察や選手管理に生かされることが多い。

総括

最終的に、中盤選手が監督になる際の有利な点は、単にフィールド上でボールを動かすだけでなく、フィールド外で人々を動かす力にも繋がっているようだ。試合の"中心"である経験は、指導者としてもその"中心"に立つ力を与えているのかもしれない。