夜を焼いた日(ポエム編)

夜を焼いた日(ポエム編)

ある夜、僕は夜を焼いた
夜は僕の真上に重く、黒くのしかかっていて、
僕は夢の中で何人もの死んでしまった人と会った
彼らはいう、夜にやられてしまった、黒にやられてしまったんだ。

悪か善かなんてわからないよ どうでもいいよ 
そんなことはどうでもいいんだ
ただ、どうにもできず、やられてしまった 悲しくて 悔しくて
ただ夜に飲まれてしまったんだよ
 
マッチをシャッとすったら
湿気ててなかなかつかない火
昔よくマッチをすってたなぁ
マッチをすってたばこに火をつける友達がいてかっこよかったから
シャッとこすると小さな火があらわれて、ゆらゆらしていた
真っ黒の空に向かって火をなげだした
あの空の、奥底の一番つめたいところに 一番かなしいところに
炎 あの時みたいに広がって 炎は強いから
夜をやいてくれればいい

そうやって、じっと空をみていても 
小さな赤い光はひゅぅと黒にのまれて そのままだった
黒は僕の小さな炎なんかじゃ、一つも動かなかった
空も、空気も、世の中も、何一つかわらなかった

こんなに思ったのに こんなになんども投げたのに

変えられないことが多すぎるんだ、と僕は夢に向かってつぶやいた
 
目がさめたら、それはふつうに朝で、なんの変哲もない春の朝で
テレビをつけたらやっぱり、色はそのままで
どこかのだれかが、だれかを殺して
どこかのだれかが事故で死んで
どこかのだれかが火事でしんで
近くの保護施設の犬が虐待されてて
明日は春の、嵐らしい

机に置いたマッチの箱をのぞいたら、一本も減っていない
僕は僕の夜を責めて、
おはようと恋人にラインして
おにぎりを握って、アトリエにいく。
チャリをこぎながら、
僕は泣いた
変えられない物事を、僕の炎の小ささを、ふがいなさを
なにも助けられず
それでも幸せな自分を
もっと勇気があればいいの?もっと大人だったらいいの?もっとお金があればいいの?
頭よければ?力があれば?男だったら? 
僕はなにものにもなれず、ただ絵を描いて
夜を焼いて、朝をまてない僕は 楽しい絵も 悲しい絵も 笑える絵も
切ない絵も
口をつぐんで
僕の
くだらない顔をみつめているのだった


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