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ブログセレクション

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ブログ「KHAKI DAYS」から選んだエントリを載せています。加筆・修正あり。
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#物語

おばあさんが座っている私に背中を向けて立っている!!

会社からの帰り道というか帰り電車というか、丸ノ内線も中野坂上を過ぎた頃。なんかあのへんは地名があやふやでナントカ中野とかナントカ高円寺とか、ナントカ阿佐ヶ谷とかあるわけですがその中のどれかと言えばどれかの駅で、小さいおばあさんだかおじいさんだかが乗ってきたわけですよおばあさんですが。 その頃私は本を読みながら新宿三丁目で得た空席に座ったり立ったりしたというか席に立つわけはないので無論座っていたわけですがおばあさんが来たのですよ。おばあさんは席を探す様子もなくて入ってきてすぐ

イナ・バウアー

イナ・バウアーが地球上にいられる時間はあとわずかだった。イナ・バウアーはついさっき自らが倒した怪獣の長い尻尾を両腕でしっかりつかむと、2度3度、その場でぐるぐると回転してから中空めがけて思いっきり放り投げた。怪獣はみるみる小さくなり、間違いなく大気圏外まで飛んでいっただろうと思われた。放り投げられた怪獣はもう地球に戻ってくることはあるまい。痛い目にあった動物がもうその場所に寄りつかなくなるように、怪獣も学習するのだ。イナ・バウアーは長い怪獣退治の経験からそのことをよく知ってい

アカシックレコード

「アカシックレコード」は永福町の路地裏にある小さなレコード屋だ。客はほとんどいない。少なくとも客の出入りしているのを見たことがない。日々の売り上げがきちんとあるのかも怪しいところだ。時々ノラ猫が退屈そうに「どれ、たまには顔でも出してやるか」といった風情で、のっそりとドアの隙間から入って行くのが確認できる程度である。いたずらに年季だけは費やしたらしい看板は西日に照らされ、刻まれているはずの屋号はほとんど判読することがかなわない。本当は何を売っている店なのかもわからない。だが「ア