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ESGとファイナンスの動向

本記事は、ESG/SDGs/CSVに関しての個人的な学びのアウトプットです。

2021年5月13日に行われた「日経SDGsフォーラム」での一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤邦雄氏の「見破られるESGと深化するESG経営」という講演がとても面白かったので、学びを共有いたします。

ESG経営を進化させる変革要素

伊藤氏はESG経営を強靭化し、深化させる全体像をESGを取り巻く、6つの要素「資本生産性」「パーパス」「気候変動/TCFD」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」、「人材戦略」「ファイナンス」からなるヘキサゴン・モデルで表現します。これらの要素をうまく連動させていくことが、重要だとし、組み合わせの事例を紹介します。

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ESGとファイナンス

本記事では、ESGとファイナンスについての部分を紹介します。

EU(環境)タクソノミーの衝撃

EUでは、EU(環境)タクソノミーといって、ある条件を満たせばクリーン、満たさなければブラックという二分法の考え方があり、環境慣例の経済活動でグリーンセクターに入るために満たさなければいけない条件が決められています。これは2020年6月からすでに官報公表、つまり施行されているそうです。

EU(環境)タクソノミーでは、以下の6つの環境保護目的のうち1つ以上に対して多大な貢献をし、かつ他の環境保護目的を著しく阻害しないこと、というのがグリーンセクターに選ばれる条件となっています。

EU(環境)タクソノミーの6つの環境保護目的
1. 気候変動の緩和
2. 気候変動への適応
3. 水・海洋資源の持続可能な利用と保護
4. 廃棄物発生の予防と再生資源の利用促進など、循環型経済への移行
5. 汚染の予防と管理
6. 生物多様性および生態系の保全と回復

EUでのサステナブルファイナンス規制の加速化:SFDR

タクソノミーと合わせて、2021年3月10日から適用となったEUの金融機関等を対象としたサステナビリティ関連の開示規制であるSFDR(Sustainability-related Disclosure in the Financial services sector)を取り上げます。

タクソノミーが企業側であるのに対して、SFDRは資金を投じる投資家側へEUタクソノミーに対応した開示規制になっていることが特徴です。開示内容は事業体レベルと金融商品レベルとあり、32項目の開示が求められているといいます。

こういった厳しいスタンダードが世界標準になっているのか、日本はどうするのか、ということが問われているのだと語気を強めます。

ちなみに、2年おきに公開されている世界のESG投資動向をまとめたレポートの欧州の大きな動向としてSFDRが取り上げられており、それによって欧州のESG投資額が減少に転じていました。詳細は以下の記事をご参照ください。

Greeniumによる資本コストの低減

次に、Greenium(グリーニアム)という新しく出てきた造語をが取り上げられました。これは、J.P.Morganの資料を投影しておりましたが、グリーン債やサステナビリティ債は企業にとって有利な金利条件をとれるようになってきている傾向がみられており、これが今後もっと広がってくる可能性があると指摘します。

クライメート・トランジション・ファイナンス

最後に、伊藤氏が座長としてかかわった日本でのクライメート・イノベーション・ファイナンス戦略2020について取り上げ、TGIF:トランジション・グリーン・イノベーションを同時に推進することの重要があり、政府は気候変動対策へのコミットメント、企業への積極的な情報開示、資金の出し手によるエンゲージメントの三つ基盤整備をしていく方針であると説明します。

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出典:経産省のこちら(URL)より

そして、「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本方針」についても触れ、下図のようにトランジション・ファイナンスにもいくつかの類型があるとした上で、日本でも事例が出てきていると説明します。

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出典:クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本方針

トランジション・ファイナンスの事例:川崎汽船

2021年3月12日の川崎汽船社のニュースレター(こちら)には「国内初のトランジション・ローン(脱炭素に向けた移行ファイナンス)による資金調達」とあります。トランジション・ローンについて以下のように説明されています。

トランジション・ローンとは、企業の脱炭素に向けた移行の取り組み(クライメート・トランジション)に対して、効率的に資金供給を促進し、もって2050年のカーボンニュートラルな社会の実現に寄与するための融資枠組みです。

ローン組成にあたって、株式会社日本格付研究所(JCR)によって、適格かどうか認証を取得し最上位評価のGreen1(T)を受けているとしています。

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59億円をローンで調達できた、ということですが、トランジション・ローンにの説明にある「効率的に資金供給を促進」というのがよくわからなかったので、メディアの記事を参照してみると、以下の記載が見つかりました。

金融機関が、投融資先の活動が該当するかどうかを判断しやすくするため、経済産業省や環境省、金融庁は「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」を5月までに示す見通しだ。また、トランジションのための資金調達を検討する企業を募り、モデル事業を実施する。金融機関に対する利子補給制度を創設し、野心的な削減に取り組む事例に0.1%の利下げをする方針も示している。

59億円の0.1%というと、年間5900万円なので小さくないですね(注:川崎汽船の事例で0.1%の利下げが適用された、という記載はありません)。

おわりに

日本のESG投資の動向については、以前に以下のnoteでまとめましたので、良かったらご参照ください

このほか、当方のESG/SDGs/CSV関連の記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie


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