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【仕事術】中古CDショップにはゲームディレクターの宝がある

その宝とは、映画・ドラマ・アニメ・ゲーム等の「サントラCD」です。

中古CDを売っているお店(ブックオフとか)に行くと、CDを1枚100円で売っているコーナーがありますよね。
そこには大抵、サントラCDがあります。しかも、大量に。

これは、サントラCDを買う人が、元の(音楽が使われていた)コンテンツを好きな人に限られるからでしょう。需要が少ないのです。

そんなサントラCDを「宝の山」と言っているのは、数万円のプレミアCDが時々混ざっているから...ではありません。
ある職業の方に、とても役立つからです。

その職業とは、ゲームディレクターです。

「ゲームディレクターを目指している人」も含めていいでしょう。

ぼくは、ゲームディレクターになり立ての頃、様々な映画のサントラCDを中古CDシップで買っては、繰り返し聴きました。
時には、観ていない映画のサントラをジャケ買いすることも。

なぜ、ゲームディレクターにとって宝の山なのか

なぜなら、サントラの知見は、コンポーザー(作曲家)とのコミュニケーションを円滑にするからです。

ゲームディレクターは、ゲーム内のどこにどんな楽曲が必要なのか、数と内容を定めてコンポーザーに発注します。

この時、欲しい楽曲のイメージを言葉だけで伝えるのは、とても難しい。

「ここは悲しいシーンだから、悲しい曲が欲しい」というリクエストだけでは、コンポーザーは困ってしまいます。悲しい表現は色々ありますから。
オーケストラを使って悲劇をスペクタクルに表現することもできますし、アコースティックギター1本で心細さを感じる悲しみを表現することもできます。

しかし、どの表現が正解なのかは、発注するディレクターにしかわかりません。
だから、コンポーザーには、多種多様な表現方法の中から楽曲の方向性を掴むための「道しるべ」が必要なのです。

この「道しるべ」を別の言葉で表現するなら「具体的なイメージ」です。

「具体的なイメージ」って、具体的なのか抽象的なのか、よくわからない言葉ですよね(笑)
この言葉が意味するところは、

・これから作る(今はない)未知の曲だから【イメージ】
・そのイメージをわかりやすく伝える「この曲のように」が【具体的】

です。
「この曲のように」と言ってもパクるわけではありません。
パクりにくくなる付加情報もあるからです。

例えば、コンポーザーに発注する時には、こんな感じになります。

(楽曲を使うシーンを簡単に解説した上で)
「このシーンでは、○○という人物の△△な悲しみを表現する曲をお願いします。近いイメージは□□という映画のサントラCDに収録されている**という曲です。この曲の%%の表現に△△と同じ悲しみを感じるからです。ただし、映画では##という人物の悲しみを表現していますが、このゲームでは○○というキャラクターの悲しみを表現しますので、○○に合うイメージでお願いします。○○の設定は別紙を参照下さい」

「○○というキャラクターに合うイメージ」も未知の曲を指しますから「イメージ」という言葉を使うことになります。
そのイメージを「具体的」に伝える資料として、キャラクター設定を渡してます。

コンポーザーは、設定に描かれているキャラクターのビジュアルや性格・生い立ち・人間関係からイメージを膨らませて、作曲します。
この付加情報とコンポーザーの個性によって、パクりから遠のいていきます。

実際に、ぼくが曲を発注した時も、映画「エレファントマン」のサントラCD、「キャラクター設定」、「曲を流すシーンの解説」で、コンポーザーの方にイメージを伝えました。
結果は、イメージ通りのものが出来上がって、ノーリテイク(一発OK)でした。

なぜ、中古CDショップなのか

前述通り、サントラCDの需要は少ないので、販売数が少ない=売り切れやすいという特徴があります。
マイナーな映画であれば、サントラCDが発売されないこともあります。

さらに、デジタル配信されているサントラCDも限られています。
(先の「エレファントマン」のサントラもデジタル配信されていません)
だから、今でも中古CD頼りになってしまうのです。

そう考えると、1枚100で売ってる中古のサントラCDが、宝の山のように見えてきませんか?

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