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【匂い】

「・・・なんかいつものお前の匂いと違う」

お出掛けだからせっかく付けたのに彼から不服そうな感想が。

「それ、何??」さらに顔をしかめられる。

「デカダンスだけど・・・マークジェイコブスの。
って知らないか。きつい?」

「いつものは付けないのか?」

えっと、いつものってごめん。たぶんそれ柔軟剤だよ。
とも言えず。

「ごめん、もう付けちゃったからしばらく取れないかも。この匂い苦手?」

「何だろ、いつものがお前の匂いってインプットしてるから」

ぷぷ・・・わ、わんこっぽい・・・と、これも言えず。
必死に笑うのを隠す。

「女の人ってそんな匂い変えるの?」

「・・・どうだろ。私もそんなに変えないけど。
今日はデートだからさ。つけたかっただけ」

これジャスミンとか入ってオリエンタルな感じで好きなんだ。
まぁ官能的だから、ってのは言わないでおこう。

「・・・そっか、ごめん」

デートで特別に、というところが嬉しかったのかも。
ちょっと顔が赤い。

「じゃそろそろ出る?」

私がそう言って玄関に向かおうとしたら、
いきなり背後から腕を取られて。抱きすくめられる。

「わ。なに!?」

「・・・インプットし直すからちょっと待って」

そう言って彼は、私の首筋の髪を避けて
鼻を押し付けてくる。

「ちょっと・・・もうくすぐったい、もういいでしょ」
って言ってるのに彼はやめる気配なし。

「ん・・・もう少し。昔の仕返し」
散々擽ったの根に持ってるな・・・。というか。

このままだと私が、出掛けられなくなるんですけども・・・。

ーfin

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