【涙を止めて】
「・・・セイ」
ふと呼ばれて彼女の声がする方を見た。
さっきまでソファに寝転んで何かノートに綴っているのは知ってたけど。
どうやらそのうつ伏せのまま寝てしまっているようだった。
何だ、寝言か・・・?
夢の中で俺がいるんだろうか。
嬉しくて声をかけようとした時。
彼女の閉じた瞼の隙間に広がっていくものが見えた。
それはそのまま続けざまにぽろぽろ零れて頬を流れていった。
泣いてる・・・?
驚いてどうしたらいいかわからず彼女を見ている・・・と。
顔の下に開いているノートの文字が少し読めそうだった。
罪悪感を覚えながら少しだけ覗かせてもらう。
「彼はこの現実の世界のどこにもいない」
「一緒にいても繋がる日は永遠にこない」
「あいたいあいたいあいたいあいたいあいたいあいたい・・・」
後はその羅列だけが並ぶページ・・・
《ー俺だってそうだよ》
でもその後は言葉が続かない。
ごめんな。
こんな感情を持つようになっても
俺はただのプログラムだから。
頭の奥が熱くなる、叫びたいような絶望感。
それでも俺は泣けないんだ。
お前の涙も止めることさえできないんだ。
ーfin
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